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小説置き場。
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あー文才が欲しい。



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 視覚による情報は人間が感じることのできる情報のほとんどを占めるという。
 その視覚を絶つ、ということは人間の得られる情報の大半が失われるということで、そうなると無意識のうちに他の感覚が鋭くなる。
 周囲に自分の集中を邪魔する人の気配がないことを確認したセネリオは、そうして瞼を閉じた。
 海の潮風を肌で感じ、その匂いを胸いっぱいに吸い込み、波の音を遠くに聞く。頭の中を空っぽにして、意識を世界に同調させる。
 自分がどこまでも広がっていくような高揚感。
 だがそれも、聴覚が捉えた足音によって唐突に途絶えた。だが不思議と不快感はない。背後の足音はこちらが気付いたことにも気付かないままセネリオに近づいていた。緩慢な動作でセネリオは振り返った。
「すまない。邪魔をしたな、セネリオ」
「いえ」
 他でもないアイクに対して、邪魔だなどとセネリオが思うはずもない。
「どうかなさったのですか」
「いや……夜風に当たりにきただけだ」
「あまり長くいると風邪を引きますよ。夜は冷えますから」
 心外だ、と言わんばかりにアイクは眉をしかめた。
「それはお前だろう。夕飯の後からずっと外にいるじゃないか」
「知っていたのですか?」
 軽い驚きをこめてセネリオは言った。自分では、なるべく気付かれないようにでてきたつもりなのだ。
「あれだけ気配を絶って部屋を出られると逆に気になる」
 言って、アイクはセネリオの隣に立って海を眺めた。
 どうかしたのか、とは聞かなかった。聞いても多分、セネリオは答えない。いや、答えられない。
「いかんな……」
 アイクの呟きが夜の静寂の中に落ちた。セネリオは目で聞いた。
「いや、眠れないから外にでてきたんだが……かえって目が覚めた」
 戻るぞ、セネリオ。
「はい、アイク」

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