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小説置き場。
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001~006
001 特パロ 金銀
002 特パロ 紅翠
003 HGSS ライコト
004 スペ シルイエ?
005 マスカイ
006 金銀 パロ


001.雪の果て(特パロ/金銀) とけてねぇよ

 とすん、と掌に乗った雪の結晶を見て、ゴールドは固まっていた。
「なんだ、これ」
 空を見上げる。葉を落としきった枝の間から、今にも降り出しそうな鈍色の空が広がっている。
「雪だろう」
「これが?」
 納得いかなさそうにゴールドが手袋の上の透明な粒を覗いているが、どこからどう見ても、雪だ。現に視界にはちらちらと白い影がうろついている。
「雪、見たことはないのか?」
「オレの町は降らねぇところだったし。これ積もんの?」
 さぁ? と白い息を吐き出しながら答える。雪は偶に降るが、積もっているところなど見たことがない。
「早く戻るぞ。寒い」
 ゴールドが首を横に振った。
「シルバーは先に帰ってろよ。オレは見てる」
「風邪引くぞ」
「大丈夫だろ、なんとかは風邪引かないって言うし」
「自分で言ってどうする」
「引いたら引いたでお前が面倒見てくれるんだろ? クリスにやらせるわけにもいかねぇもんな?」
 堂々とそんなことを言うゴールドにはぁ、と溜め息を一つ落とした。
「一人で寝てろ」
 雪がよっぽど珍しいらしい。仕方がない。先に戻って温かい飲み物でも用意しておくか。気が済むまで雪を眺めたゴールドの体は、きっと冷え切ってしまっているだろうから。

002.無邪気(特パロ/紅翠)
「うくく……あっはははは!」
「……そんなに笑う?」
「だってさ、あんた、それ、っはははは!あーお腹痛い」
「君がそこまで笑うの初めて見た」
「そう?」
「そうだよ。そうやって笑ってれば、無邪気で可愛い子供に見えるんじゃない?」
「実際は無邪気さなんて疾うの昔に忘れてるけどね」
「違いないや」

003.花笑 HGSSライコト

 学年主任でもある担任の先生から頼まれたのは、クラス毎の配布箱に学年便りを入れてくること。荷物は教室に置いたまま、配布箱までの最短ルートの中庭を通っていると、それに、気付いた。
「わ、もう咲いてるんだ」
  中庭の大きな木の下、周りよりも少し高くて日当たりもいい場所に、一輪だけ白い花が笑っている。季節はまだ冬だけれど、少しずつ寒さは緩んできてる。もう 少しで、春がやってくるよー、とわたしに教えてくれているみたい。思わず屈んで眺めていると、隣にぬっ、と影が伸びた。
「まだいたのかよ」
「あ、カナデ。どうしたの?」
 唐突に隣に立ったカナデを見上げる。足音にも気付かなかったんだけどどういう歩き方をしてるんだろう。
「窓から見えた」
「そうなんだ」
 制服のブレザーまで着て鞄も持って、カナデはもう帰るつもりみたい。私が中庭にいるのに気付いてちょっと寄り道したのかな。
 はぁ、と溜め息が聞こえる。ばさっ、と肩に暖かい物が掛けられた。カナデのブレザーだ。
「まだ寒いだろ、風邪引く」
 そうぶっきらぼうにカナデは言うんだけど、やってる事はお母さんみたいだって、気付いてるのかな。おかしくなってくすくす笑っちゃう。
「大丈夫よ、そんなに寒くないし……くしゅん!」
「本当か?」
「……多分」
 半目になったカナデの視線が痛い。えへへ、とごまかし笑いを浮かべるけどあんまり意味はなさそうだ。すくっ、と立ち上がる。
「さーって、わたしもそろそろ行かないとね! カナデ、ブレザーありがとう」
 肩に掛けてくれたブレザーを押し付ける様に返すと、カナデが不思議そうに尋ねてきた。
「……お前、ここで何してたんだ?」
「あれ? 気付かなかった? ほらここ、お花が咲いてるんだよ」
「ああ……」
 殺風景な冬の中庭で、健気に咲いている一輪だけの花にカナデの顔も一瞬綻ぶ。それからカナデはわたしの方をしげしげと眺めて、とっても失礼な一言を言ってくれた。

「お前の頭にも咲いてそうだな」



 こんのアホっ! 絶対に許さないんだから!!

004.夢見鳥 イエローとシルバーのつもりだけどぶっちゃけ誰でもいいよね


――こんにちは。
 ポニーテールを揺らして女子が笑っている。誰だ、こいつ。
――ボクはしがない夢先案内人ですよ。
 何だ、それは。
――皆さんの夢にお邪魔して、幸せな夢を見てもらうお手伝いをしてるんです。
 これは、夢、なのか?
――はい。でも起きた頃には、すっかり忘れちゃってると思いますよ。
 夢先案内人はやっぱり笑ったまま。でもその表情が少しだけ堅いと思ったのは、どうしてだろう。

――さぁ、それでは、良い夢を。

 すとん、と吸い込まれるように意識が遠くなって、

005.意地悪 マスカイ

  カイトの目の前でアイスを買って、家に帰ったらカイトの目の前でその蓋を開ける。物欲しそうな視線には気付かないふりをして、一口、口に含む。つめたい。 目を閉じて、舌の上でアイスをとろけさせる。刺すような冷たさが緩んで、口の中いっぱいに濃厚なバニラの香りとあまさが広がる。ああ、美味い。
「アイス、最高やわ……」
 ちょっと奮発して高いやつ買ってよかった。普通のやつよりも三倍くらい値段高いけど。アイスを堪能している俺を、カイトがジト目で見ている。
「マスター、嫌がらせですかそれ」
「どうせお前食われへんやん」
  人工声帯を使って、人間と同じ方法で発声できるのがウリのアンドロイド、通称ボーカロイドのカイトは冷却水として水は飲むが、食物は御法度だ。それなのに ただの音声合成ソフトウェアだった時に設定された嗜好がまだ生きている。食えないのに好きって、お前は氷菓メーカーの回し者か、カイトよ。
「でもおれがアイス好きだって知っててわざと見せ付けてますよね!? しかもそれあの高級アイスじゃないですか!!」
「そんなにアイス食いたいなら冷凍庫の氷食うときぃや」
「氷とアイスが一緒だって言うんですか貴方は!」
「一緒なわけないやろ」
「じゃあおれが氷食べても何の解決にもなってないじゃないですか!」
 流石はアイス絡みになると性格が変わるカイト。テンション高い。
「じゃあどないせぇって言うん?」
 カイトがアイスを食べれないのは事実だ。さっきとは打って変わってカイトが黙り込む。
「……そうやって、見せ付けるように食べないでもらえたら、それでいいです。どうしようもない事なのは、分かってます」
 食事の必要の無いカイトには味覚が無い。カイトが知っているアイスの味というのはつまるところただの情報だ。少し意地悪をしすぎたかもしれない。
「ちょっと遊びすぎたな、ごめん」
「いえ。マスターが美味しい物を食べること自体は、おれにとって嬉しい事なんですよ」
 でも好きなのに自分は食べられない物を目の前で分かってて食べられる、というのは気分のいいもんじゃあないだろう。
「俺が食い終わったら歌の練習な」
「ホントに、気にしてないんですよ?」
「嬉しいんか嬉しくないんかはっきりしぃ」
 どうにも俺の謝罪を受け入れるつもりのないカイトを軽く睨みつける。ようやく、カイトが笑った。
「とっても嬉しいです。ありがとうございます、マスター」


005.一掬の涙 ゲーム銀(ゲーム開始前)
 力尽き、動けなくなった最後の一匹をモンスターボールに収める。遅れて最後まで立っていた相手のポケモンがボールに消えていった。
「まだ、勝てませんか」
 うるさい、うるさい、うるさい!
「――貴方は優しすぎる。ですが、我々と共に来てくだされば貴方はもっと強くなれる」
 失望を隠さずに、でも優しく語りかけてくるこいつが何を求めているのかをオレは知っている。けれど誰が、誰が自分の妻と子を見捨てた男の身代わりなどになるものか!!
「帰ってくれ。お前達のところになんか行かない!」
「いつまでお逃げになるのです」
「逃げてるのはお前達だろう! サカキは負けた、ロケット団なんかもう存在しない!」
 相手が、ふわりと微笑った。
「いいえ。ボスのお志を継ぐ我々がいます。そして我々には、貴方が必要なのですよ、シルバー様」
「サカキの代わりとして、な。……帰ってくれ。お前達の所になど、オレは行かない!」
 睨みつけると漸く相手が一つため息をついた。
「今のシルバー様のお気持ちは分かりました。今日はここまでに致しますね」
「二度と来ないでくれ」
「それは出来かねます。シルバー様のお心が変わった時にお困りになるではありませんか。それでは」
 にこり、と顔だけは笑って頭を下げる。それから鳥ポケモンに捕まって飛んでいくのを、オレはずっと眺めていた。

006.春日遅々 金銀 パロっぽい

 それは、ある晴れた、ポカポカ陽気の日の、事でした。

  辺り一面なんにもない草っ原の中、男の子が、組み敷いた別の男の子の首に短剣をつきつけています。組み敷かれた男の子の髪は錆色で、まるで酸化された血の ようにその髪は地面の上に広がっていました。瞳の色は、銀色。自分の状況が分かっているのかいないのか、ひどく落ち着いた様子で、自分の上に跨がる男の子 を見上げています。
「……なんで、抵抗しねぇんだよ」
 男の子が閉じていた瞼をあげ、錆色の男の子を睨みつけます。太陽を背負った男の子の瞳は金色で、綺麗だな、と銀色の瞳の男の子は思いました。
「意味も無いからな」
 金色の男の子には、銀色が、いつもと変わらず、真っ直ぐに自分を見つめてくる理由がわかりません。何の意味が無いのかも、よくわかりませんでした。金色は銀色に死んでほしくない、生きていてほしいと思っているのに、銀色はそうは思っていないのでしょうか。
 銀色が、自分に短剣を突き付けている金色の手を握ります。
「何すんだよ」
「だがお前に、俺は殺せない」
 淡々と言う銀色に、金色はわけがわからなくなりました。銀色がうっすらと笑います。表情の変化に乏しい銀色の中でも、金色にしかわからないくらいの微かな笑顔が、金色は大好きでした。
「お前は俺の死を望むか?」
 ああそうか、と唐突に金色は理解します。世界で一番、誰よりも、銀色が好きだなぁと金色は思いました。
 金色が何と答えたのかは、内緒の話。

 それは、ある晴れた、ポカポカ陽気の日の、事でした。

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