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小説置き場。
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引き続き。

上から、
TOD夢?・冒頭っぽいの・彩雲国夢1・ポケモンセトーチ編・オリジ(花梨が浮遊諸島)・デュラ夢?・彩雲国夢2・オリジ・彩雲国夢3


「剣は扱えないのか?」
「はい。幼い頃に腕の腱を切りまして、まだ手が痺れるんですよ」
 幸いにして右手だけなんで、左手で訓練すれば扱えると思うんですけどね。私は武器を手に取らなければならない事態には陥らなかったので。
 不思議そうにしているスタンに軽く説明する。最も、護身用に始めた体術の方は今ではリオンには引けをとらないほどではあるが、それは言わない。どうせ武器を取っては戦わないことに変わりはないのだ。
 自分が戦うのは、頭を使う戦いのみだ。


「あれ……お前、ネヴァじゃん」
「よそ者に売る物なんかな……アレク!? アレクか!?」
「ひっさしぶりだなぁー。んと、アップルグミ5個とライフボトル3本頼む」
「1700ガルドだ。じゃなくて! 今まで何してたんだ何の音沙汰もなく!」
「何って……父さんの仕事の関係で外に出て、今はオベロン社総帥の息子の副官をしてる」
「どういう出世の仕方だよ」
「父さんのツテでね」

*****

 街と街を結ぶ街道の途中の休憩所に小さな店がある。団子や饅頭などを主とした軽食屋である。

*****

「龍蓮~。お前こんなところにいたわけ?そりゃ見つからないわけだ」
「何の用だ橙稀英」
「サボるのは構わないんだけどさ、田坂の授業はサボるなよなー」
「捜索に出されてそのままお前も授業を抜けてきたわけか」
「ご名答♪だーってつまんないんだもん」
「我は稀英がこんなところにいることが間違ってると思う」
「そりゃお前のことだろ、龍蓮」
「我は愚兄達にとりあえず行けと言われただけだ」
「ふーん。んじゃ、お前はここに来て正解だったな。秀麗と影月と珀明は?」
「我が心の友たちは授業中だ」
「流石。真面目だなぁ」
「それが彼らの善きところなり」
「だったらお前も少しは真似しろよ」

*****

 別段と体が弱いわけでもなく、人付合いが苦手というわけでもない。カイトはごく普通のどこにでもいるような少年だった。
 ――ある一点を除いては。
 だが小さな小さなナナシタウンではその違いは大きく見え、だからカイトは「変わった子」と村人達に言われるようになった。
 カイトはそんなことはどうでもよかった。彼が変わっていると評される理由――それは、『旅に出たがらない』、ただ、それだけだった。
 ナナシではほぼ全ての子供が12歳頃になるとポケモンを連れて旅に出る。そして将来の職業をポケモントレーナーと決めた人間はそのまま旅を続け、そうでない者は帰ってくる。最後の子供時代を旅をして過ごすのだ。帰ってきたら最後、大人の仲間入りをするのだということは誰もが知っていた。



開きっぱなしだった窓からトン、と黒い影が飛び込んで来た。小型ポケモンと思われるその影は、部屋に入るなりみるみる形を変えて、一人の人間の姿をとる。
カイトはそのようすを眺めつつも服を着替える手は止めない。彼にとってそれは当たり前の事で、普通は異常事態なんだということはきれいさっぱり忘れられていた。
そしてこのあとにカイトが言うべき台詞もまたいつもと同じだった。
「おはよう、サン」
まだ夜が明けてはいなかったが、カイトの朝はこの時間から始まる。


*****


「あれ、ここどこ?」
 辺りを見回して花梨は言った。確か近くの街に転移するはずだったが、どう見ても街など影も形もない。眼前に広がるのはやたらと島が浮かんだ海原だ。花梨の後方には防風林なのか、潮風を受けてからからになった木が列をなして立っていた。そして幹と幹の隙間から、また海の碧が広がる。
「ってか、…島?」
「しまった!」
 突然大声を出した相方、未来を花梨は半眼で見遣る。転移魔法を使ったのも彼だ。
「何つまらないシャレ言ってんの、未来」
「転移先の座標の西と東を逆にしてしまった…」
 未来ががくりと肩を落とす。何が起こったのか全くわからない花梨は何が起きたの、と端的に聞いた。わかることは未来の転移魔法が失敗したということだ。
「俺の魔法が失敗した」
「わかってるわよそんなこと」
「それで『浮遊諸島』に転移した」
「『浮遊諸島』?」
 聞いたことのない言葉だ。未来に目で説明を促すと、未来は一つ頷いた。
「五大陸がある側のことを何と言う?」
「表半球」
「じゃあその裏側」
「裏半球」
「裏半球には何がある?」
「何も無い」
 そこまで言うと未来はまた軽く頷いた。
「ここはその裏半球だ」
「……へ?島あるじゃん」
「そう、裏半球には浮遊諸島という島々があるのでした。終わり」「説明になってない」
「説明も何も無いんだよ。実は裏半球には誰も知らない動く島々があるという事実があるだけだ」
「あー、質問はOK?」

*****

「静ちゃんのバカっ!」
 そしてパァン、と乾いた音。
 周囲の人間の時は止まった。
「バカバカバカッ!」
 周囲の人間の心は一つ。

 よりにもよって平和島静雄を殴る奴がいるか!?

 いや、いはしない。

 だが梓はそんなことは気にしなかった。
 そもそも気にしていたら平和島静雄の幼馴染などやってはいられまい。
 梓は非常に傷心だったのだ。それこそ臨也のもとに駆け込んだっていいくらいに。
「静ちゃんなんてずっとイザヤンと喧嘩してればいいんだっ!」
 そう捨て台詞を残して教室を駆けていった。
 残されたのは呆然としている平和島静雄と、戦々恐々としているクラスメイト達。
 一般人にとっては永遠とも感じられるほどの時が一瞬の間に流れ、 平和島静雄は駆け出した。
「おい梓!待てよ!」
 彼が珍しくドアから教室をでていったお陰で、クラスメイト達はようやく彼の恐怖からは解放されたのだった。

*****

 当代には三人の天つ才を与えられた者がいると言う。
 一人は紅家。紅黎深。
 一人は藍家。藍龍蓮。
 そしてもう一人は、橙稀英。
 いずれ歴史の闇に埋もれるその三人目を、ここでは見ていくことにしよう。

*****

 面倒なことになった。あいつとは絶対に係わり合いにならない方がいいとわかっていたのに――気付くのが遅すぎた。否、もっと遅かったらよかったのかもしれない。まだ間に合うと知った瞬間、選択肢が無くなった。
 ――まさか、惚れてしまうとは。
 それも、これまでにないほど強烈に。まぁそれは毎度のことなのだが。

*****

「全く王というのも難儀な仕事だな」
 劉輝の仕事を手伝うわけでもなく、ただ眺めていた稀英はぽつりと言った。
「仕事をサボれば昏君と切り捨てられ、いくら頑張れども臣下は王だから当然としかみなさない」
 俺は絶対なりたくないね、と最後に付け足して稀英は窓を開け放った。

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