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小説置き場。
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幻水ネタというか4主が多い感じ。

 


 あれ?シアンは部屋に入ってから違和感を覚えた。知ってる人の声がする。自分がこのよくわからないところに来る前に一緒にいた人物――テッドだ。
「だから俺だって何がどうなってるか聞きたいくらいだっての!」
「まだ白を切るつもりか?さっさとどこのファミリーの連中に頼まれたか話せ!」
「ついでにどーやって入ったかもなー」
 2対1で尋問されていてなかなか頭に来ているようだった。でもここがどこだかもわからない状態であんまり敵を増やさないで欲しいなぁ、などとシアンが考えていると、ドアが開いて声が一段と大きくなった。テッドの顔が見える、と思った瞬間にテッドがシアンを見つけた。
「シアン!」
「ボス!」
「ツナじゃん」
 同時に尋問していた二人もシアンをここまで連れてきた人物に気付いたらしく、声をあげていた。…ってちょっと待て、ボスって言わなかったか一名。

*****

「はじめまして、アルシュタート女王陛下。この度女王騎士に、と推薦されたシアンと申します」
「あなたの話はフェリドから伺っております。そう堅くならずに、普段通りで構いません」

*****

「いや、こんなに群島がもつとは思ってなかった」
 そもそも各島ごとに独自の仕組みを持っていた群島が、一つに纏まるのは難しいだろう。人数・規模が大きくなるとそれだけ纏まるのにも苦労する。少数派は切り捨てられ、いずれ制度は瓦解する。それでも群島開放戦争で群島が纏まれたのは、ひとえに共通の敵の存在によるものが大きいとシアンは思っていた。
 あの戦争からもう、三百年ほどたった。群島諸国連合は完全に一つの国家と見なされ、周辺諸国とは比べ物にならない海軍と世界でも有数の造船技術を持つようになった。今の所戦争も起こっておらず、北の大陸と南の大陸を結ぶ中継点として交易も盛んだ。

*****



「笑え」
「はぁ?」
「笑えよテッド!
 お前そんな顔して人生楽しいか!?」
「お前には関係ない」
「ある」
「何がだよ」
「テッドがんなブスッとした顔してたら俺が楽しくない」
「お前の都合じゃねーか」
「悪いかよ!?
 なぁ、今までに何があったのかしんないけどよ、そんな顔して生きてもつまんないだけだろ?」
「…前に何がわかる」
「お前のことなんかなんもわかんねーけど、お前が今全然楽しくないのはわかる。
 なぁ、笑えないなら俺がお前を笑かしてやる。だからさぁ、もっと楽しもうぜ?」
「…断る」
「なっ…ちょ、お前これ軍主命令!聞け、笑え!」
「冗談じゃない。んな意味のない命令聞けるか」
「…くそう、確かに笑ってるといえば笑ってるから言い返せねぇ」
「どーかしたか?軍主さんよ」
「だぁーっもうその軍主さんって言い方も腹立つ!普通に呼べよ!」
「やだね」


シアンは本質的に光なんです。小間使いのときは曇ってましたが軍主になって磨かれていきます。群島に降り注ぐ鮮やかな太陽のような希望なんです。で、その強烈な光によって齎される影の部分が罰の紋章なわけです。

******

「あっははははははは!ははは!あーおもしろい」
「…シアン様」
「こらこら、一国の王族が一般人に様なんか使うなよ」
「立場を考えろということでしたら、そっくりそのままお返ししますよ」
「ちゃんと公式の場では大人しくしてたじゃないか」
「少しは自分の発言が周囲に与える影響を考えてください!」
「そんなの、『なんだこの無礼者は』から始まって最終的にはここから追い出されるだけだろ?俺は王宮に来て騎士長閣下の顔が見れればそれでよかったから別にそれでも構わん。あ、でもお前の奥さんと子供も見てみたいな」
「何しにきたんですかあなた」
「お前の顔見に来たってさっき言わなかったか?あんなに生意気だったお前が、どんな大人になったのかを見てみたくなったんだよ。ほんっと、ガキの頃からは想像つかんほど立派になったよなぁ。ま、それは俺の想像力不足とも言えるけど」
「…………」
「んじゃ、忙しい中邪魔したな。この部屋間諜塗れだし、お前も暗殺とかには気をつけろよ?」

*****

 何が起こったのかわからない、という顔をしていた。女王騎士全員を地に伏せたシアンは、その顔を眺めながらも無感情に剣をしまう。予想外だった。女王直属の騎士と言うくらいだし、このファレナの中でもトップクラスの使い手が集まっているのかと思えば、ただの普通に強い人の集まりである。これならば自分が徹底的に戦い方を仕込んだフェリドがあっさりと周囲に認められたのも当然だ。所詮は政治のコマの一つに過ぎないのか、と軽い失望を感じつつ、フェリドに頼まれた仕事の一つを思い出す。戦力強化とはこのことか、と。
「フェリド、いくらなんでも弱すぎるんじゃねーの?」
「そう言うな。これで彼が女王騎士になることに異存がある者はいないな?」
 最後の言葉は何も言えなくなった観客達への言葉だった。流石にここまでの実力差を見せ付けられて反対できる者はいなかったようで、誰も何も言わなかった。
「それではシアン、明後日には任命の儀を行う」
「あれ、時間空くんだ?」
「服を仕立てたりするからな。今から女王陛下にお目通りをする。来てくれ」

*****

「…どう思った?」
「女王騎士のことか?やはり一番まともだったのはガレオン殿だな。あの年齢まで戦闘職につけるくらいだ、経験が他より違う。惜しいのはザハーク殿。あれは間違いなく叩けば伸びるな。他の連中は多分もう遅い。っていうかあの弱さは何だ?あれだと下手したらどっかの国の精鋭部隊の兵レベルだぞ?彼等は将軍じゃない。実際に剣を奮うこともあるのだろう?」
「それだけ先代の王位継承権争いが激しかったということだ」
「有望な者は引きずり降ろされたってわけか。実際に兵の数は減っていなくとも、指揮する人間がいないとくれば、アーメスがファレナを攻めるのも納得だな」
「正直言って、国力をここまで疲弊させた本人になんとかしてほしい気持ちだ」
「そんなことしたらさらに落ち込むんじゃないのか?」
「それもそうだ。ところでシアン」
「ん、どうした?」
「陛下への謁見が済んだ後、子供達を見てくれないか」
「…戦で最も傷つくのは子供達、か」
「父上が、どうして俺の元にあなたを寄越したのか、今ならその気持ちがわかるような気がするな」
「ふぅん、どんな気持ちだ?」
「少しはこの人の楽天家っぷりを見習ってくれ、ってところか」
「スカルドはもっと馬鹿になってくれ、だったよ。全く失礼な話だ」



「お前、俺の名前言ってみ」
「『陵(りょう)』だろ?」
「お前の苗字は?」
「『陵(みささぎ)』」
「そーだよお前の父親と俺の母さんが結婚したら俺名前が『陵陵』になるんだぜ?なんだよこの中国人の子供のあだ名みたいな名前!だから俺は再婚に反対したんだ!なのに、なのに…」
「説得しきれなかったんだな」
「泣きそうな顔でこっち見て『陵はお母さんの幸せを願ってくれないの? 陵はいつからそんな冷たい子になっちゃったの?』なんて言われたら反対のしようがないだろーが!どっちにしても俺に選択権ないじゃんだったら聞くなよってかこれから名前が生涯『陵陵』になっちまう俺は明らかに不幸だよな!?」
「結婚したら相手方の苗字名乗れよ」
「そーするわ…」





「あの子を助けていただけないでしょうか」
「あの子とは?」
「村外れに一人で住んでいる子供です。特殊な能力らしく、あの子が不快に思ったものを殺してしまうというのです。今までも能力者の旅人さんが通る度にお願いしてきたのですが、危険ということで受けてくださる方は…。このままあの子が永遠に孤独なのかと思うと、私達は…」
「……報酬はいくら貰えますか」
「では…!」
「ひとまずは詳しい話を聞いてからです。お話し、してくれますか?」



「ふむ…そちらのお嬢さんはどうやら言霊遣いの亜種の能力のようですね。今までに亡くなられた人数も少ないですし、さほど強力な能力ではないのでしょう。言霊遣いの能力は言霊遣いの能力封じで抑えられますから、まずはそれが一番かと思います」
「では!」
「ただし、言霊遣いの能力の特徴として、その言霊封じをかけた人物は二度と言霊を使えなくなりますし、その人物が亡くなればまた今の状態になります。私も私の連れにも言霊遣いはおりませんし、旅人にお願いしてもあまり聞いてくれないとは思いますね。」
「そうですか…」
「まぁ、言霊遣いは比較的多数生まれますからこの村にも一人くらいはいらっしゃるかもしれません。心当たりはございませんか? 子供を寝かせるのが得意だとか、作物がよく育つ人物だとか」
「いえ、私に心当たりはございません」
「そうですか…」
「あの、それしか対処法はないのでしょうか…?」
「鋭いですね」
「はい?」
「別の方法もないことはないです」
「では、そちらは…!」
「お嬢さんご本人に『声に出さねば能力は発動しない』という刷り込みをします。多少時間はかかりますが、成功すれば彼女はただの言霊遣いになります」
「その方法は以前に聞きました。ですが以前はその刷り込みを行う人がいなくて…」
「まぁ普通はそうでしょう。言霊遣いでなければ下手したら死にますしね。ですが…」
「?」
「私の連れに魔法・能力の類が一切利かない特殊体質の人間がいます。彼が了解すれば不可能ではありません」
「では是非、その方にお願いを!」
「構いませんが、その前にもう一つだけ」
「はい」
「先ほどは魔法・能力の類が一切利かないと申しましたが、私の読みが外れた場合はその保障はできません。つまり命の危険があるということです。ですので、彼にお願いする場合はそれ相応の対価を覚悟してください。それでもよろしいですか?」
「少し、考えさせて下さい」


「んーと、つまりその女の子に刷り込みとやらをすればいいんだな?」
「ああ。成功しようが失敗しようが報酬はもらえるから心配するな」
「あくどいなー。俺は絶対安全なんだろ?」
「よほどのことがない限りな」
「よほどのことって?」
「彼女の能力が他人に不快感を持った瞬間にその相手の周囲の空気を奪うような間接的なものならば危ないな」
「…本当に大丈夫なんだろうな?」
「被害者は焼死、溺死、窒息死、出血多量、ショック死でもないそうだ。直接の死因は全員不明らしいし、俺はお前の体質ならば死なないだろうと確信している。だが、命の危険がある可能性もある。それでも、受けるか?」
「まぁ、お前がそこまで言うなら間違ってないだろ。ああ、受けるさ。俺も役に立ちたいしな」
「そうか。なら手順を説明するぞ」

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