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小説置き場。
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リボーンンネタが大半を占めている。

 



「並盛には同小の人も多いですし、大丈夫そうです」
俺はそう言って担任が見せた名簿から知っている名前を拾い上げた。
遠藤、佐伯、新島、雲雀、八野、渡辺…と言ったところか。思っていたよりも多い。人生で二回目の転校という行事は、どうやらうまくいきそうだった。
そう思っていると、担任が恐る恐る尋ねて来た。
「雛岸くんは、その…雲雀恭弥と、知り合いかい?」
「へ、きょーですか?」
俺が口を開いた瞬間、静まり返る職員室。一体何だったてんだ?
 俺が首を傾げていると、担任がほっとしたように俺に言った。
「それはよかった。では教室に行こうか」


 久々に会った雲雀恭弥はどうやらその攻撃的な性格を一層強めていたらしかった。
 教室に入った俺に、興味が無さそうな視線を一度だけ寄越して、目を閉じている。
 担任の紹介が終わり、当たり障りの無い挨拶をして、俺は一つだけポカンと空いた座席に座わった。懐かしい顔が声を掛けてくる。この並盛に帰ってきたんだなぁと実感した。
「よう、恭弥」
「…………」
「無視すんなよな~。俺とお前の仲だろ?」
「…………」
「あ、もしかして俺のこと忘れてたりとか?」
「…………」
「返事くらいしてくれたっていいだろ~」
「…………」
「……………………………」
「……何の用」
「席もたまたま隣だし、これからよろしくな~」
「………(トンファーを構える)」
「ってオイ!なんで構える?!ってかなんか武器進化してねぇか?!」
「僕って煩い人嫌いなんだよね」
「それはお前が無視するからだろ?!なんかすんげー理不尽なんですけど!」
「今更だね」

ゴイン

「っつ……お前ほんと変わってないのな」

 * * * * *

「ところで――君がここにいるってことは…奈穂も?」
「ああ、いるな」
「ふぅん…後で来るように言っといて」
 そう言い残して恭弥は颯爽と教室を去った。もうすぐ授業なんだけどな。
「ってオイ!どこにだよ!というか後って何時だよ!?」
 声が廊下中に響き渡ったが、恭弥は結局振り返りすらしなかった。後が怖いから周りの奴に聞いておいた。
 恭弥は大体応接室にいるらしい。

 * * * *

 お兄ちゃんに後で応接室に行くように、と言われて応接室を探している。どこにあるのかなぁ。全然わからないや。
 何となく職員室の近くにあるかな、と思って、まずは職員室に行くことにした。いざとなれば先生に場所を聞けば大丈夫だよね。
 って、……
「あるじゃん、応接室」
 案外近くだった。

「失礼しまーす」
 そう言いながらドアを押し開く。公立の中学校にしては随分と建て付けがいいそれの向こうには、明らかに他の教室とは一線を画す内装が広がっていた。
 ぱっと見てわかる範囲の家具でもほとんどが結構な高級品。それなのに一つ一つがそれを主張せず、見事に調和して一つの落ち着いた空間を生み出している。転校初日に入った校長室より大分いい部屋かもしれない。
 というか。
「なんかきょーちゃんの部屋みたいな雰囲気だなぁ」
「みたいな部屋じゃなくて僕の部屋だよ」

 ………へ!?
 後ろから声が聞こえて私は勢いよく振り返った。

「きききききき…きょーちゃん!いたの?」
「『き』が多すぎ。まともに喋れないの?」
「いえそんなことございませんいつの間に!?」
「何、僕がいたらいけないの?」
 説明するのを忘れていた。きょーちゃんというのは私の家の近くに住んでいた男の子。いわゆる幼なじみという関係で、お兄ちゃんと一緒によく遊んだ。でも私達が4年前に引越しちゃって、それから連絡などもとっていなかったんだよね。彼の名前は雲雀恭弥。(中身はともかく)外見は私が覚えてる限りでは、線の細いどっちかというと女の子みたいな感じだったんだけど…

 ……………。

 どうしようものすごくカッコイイお方が私の目の前にいらっしゃいますよ?あれ、この人ってホントにきょーちゃんだよね?
 夜の闇にも完全に溶け込みそうな深ーい黒色の髪に、美人の域には楽々入る中性的な顔立ち。なのに身に纏う雰囲気がなんか近寄りがたく感じさせる、孤高の…黒猫?なんかカッコ悪いなぁ。…まぁ、とりあえずそんな感じ。体格はそんなにがっちりはしてないけど、女の子っぽいとか頼りないとかとは全然思わない。
 と、そんなお方が気付いたら真後ろに立っているわけなのよ!!いくら幼なじみだと言ってもちょっと意識しちゃうのは仕方ないよね。

 * * * * *

「あっははははっ」
 なんだか私はおかしくなってきた。
 なんだってこの幼なじみに遠慮することがあるのだろう。本質は全く変わっていないじゃないか。
「何、急に」
 恭弥くん――というかきょーちゃん――は案の定少し不機嫌になった。それでも、さっきみたいな恐怖感はもう感じない。
「ううん、何でもない」
 随分久しぶりだったから距離のとりかたに戸惑ってたんだけど…馬鹿みたい、私。きょーちゃん相手に何考えてたんだろうね?




 ここは夢の中なのだろうか。何となくふわふわとした気分だった。
 赤黒い闇が果てしなく続いている。足元にも何もなかったが、落ちそうだといった不安は感じない。



「寒い…」
 寒さのあまりに目が覚めてしまった。腕を摩りながら空を見上げると、枯木の枝の間からどんよりとした雲が空いっぱいに広がっているのが見えた。昼寝を始める前はそれなりに晴れていたのに。
 南国の群島育ちのシアンにとってこの地域の寒さは厳しすぎた。なにせ群島は冬でも半袖が着れるようなところなのだ。暑いのは平気でも寒いのは苦手…というか不慣れだった。こんなに寒いのは生まれて初めてだとシアンは思っていた。
 もぞもぞと動いて身に纏っていた外套を首まで被り、身を縮めて暖をとる。そのままじっとしていたシアンは自分の口から生まれた煙を眺めていた。寒いところでは呼気が白い煙のように見えるということをシアンは数日前に初めて知った。そのことを知った同行者に散々笑われたが、やはりまだ驚きは消えない。




 流石に退却命令―それも護衛対象を見捨てて、だ―には納得いかないのかスノウに食ってかかっている。それはいい。だが。

「我々だけで逃げると言うのですか!」

 だからなんでそのタイミングで俺に振る?

 艦長ことスノウが使い物にならないから副艦長である俺に振ったんだろうけど…俺の立場分かってるのかこの騎士?まぁ、確かに護衛の任務である限り見捨てるのは限りなくまずい。海賊と言っても二隻だけ、こちらは一隻だけだが別に対等に渡り合えるだろう。
 ちらっとスノウを見る。気が動転しているようだ。コイツに任せて自殺幇助をするわけにはいかない。スノウがいなければご飯が食べられないのだ。迷いはなかった。

「戦うぞ!」
「「はっ!」」
「総員、迎撃体制を取れ!」

 騎士達が俄かに動きだす。それを見たスノウが「艦長は僕だ!」と騒ぎ出すが正直言って構っている場合じゃない。大体お前腕が痛くて指示が出せないんじゃないのか。

「スノウ、腕が痛いならとりあえず邪魔にならないところで安静にしておいてくれ」
「シアン…何をする気だ?」
 暗に『邪魔だ』と言っていることには気付かないらしい。スノウのこういうところが好きだ、扱いやすい。
「副艦長業」

「艦長、海賊船の紋章砲の属性は炎と風です!」
「わかった。炎属性の人間は砲手に就け!



 自分の中で確かに存在するもう一人の自分。
 いつか消えて失くなる自己。そいつは自己の消滅を何よりも恐れていた。そいつは俺の存在は知っていても俺のことは知らなかった。俺はそいつの存在もそいつ自身も知っていた。そいつの恐怖も知っていた。
 そいつは消えた。俺が身体の主導権を握った。



 二人は村の忌み子だった。村に災厄を齎す子供。本来ならば生まれたときに殺されるはずなのだが、二人が忌み子になったのは物心がつき始めるちょうどそのときだった。祟りを恐れた村人達は二人を殺すこともできず、ただその力を抑える為に二人を村外れの建物に軟禁した。親のみが二人に会うことを許され、それは二人が死ぬまで続くものと信じられていた。
 そんな二人の子供の名は、雪花と竜二郎といった。

 だが、そんな二人を軟禁していた村が魔物に襲われて消えた。




 もう日が暮れてから随分と時間がたった。少年が息を切らせて階段を上る。どこにでもありそうなマンションの最上階が少年の目的地だった。
 チャイムも鳴らさずに堂々と部屋に入ると、脱ぎ散らかされた女物のパジャマが目に入る。少年はそれを纏めて拾いあげると、廊下の突き当たりの戸を開けた。
 そこには少女が一人、少年に背を向けるように座っていた。





「髪を切ってくれと頼まれたら、それを引き受けるのが散髪屋の仕事だろう?」
 彼は散髪屋と呼ばれることをひどく嫌っていた。自分は美容師なのだと、常々言っていたのに。
「ここは迷いし者の来るところ。」

***


 ここでは、黒髪を持つ人間は神に祝福されし存在として大層尊ばれる。
 自ら髪を黒からブロンズに染めた馨にはあまり馴染めない文化だった。
 こちらに来てから日が経って、頭がプリンになっているのを同居人が見つけてかなり怒られた事も記憶に新しい。そんな尊い髪色をなぜ隠すのか、と。そのあまりの剣幕に、これからは外出時には必ず帽子を被ろうと馨は心に決めている。そしてさっさと日本に帰ろう。こんな妙な夢の世界からはそうそうにオサラバしたかった。

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