小説置き場。
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久しぶりに「そこ」を訪れて、花鈴は呆然とした。
そこはもう自然に呑みこまれてその一部と化していた。
緑が芽吹き、鳥が鳴き、穏やかな風が吹き、花が咲き誇る。太陽は優しくそこを照らしていた。どこまでも暖かな、人の気持ちを綻ばせるような、そんな光景だった。
果たしてこの光景を見て、一体何人がここであった惨劇を想像できるのだろう。かつてここに地図にも載らないほどの小さな村があったことにどうすれば気付けるのだろう。そこで起こった悲劇によって、この辺り一帯が全て焼け野原になったこと、そのことを知る人物は多分、もう自分しかいないのだ。
そう、つまりは――自分を裁く者が、自分しかいないということ。
決して許されてはいけない罪の、その証が今、消えかかろうとしていた。
(080128)
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