小説置き場。
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君が居るというただ其の事実に、最大限の賛辞と感謝を
*
あの人の所にいるのなら、ひとまず彼女の安全は保証されただろう。それなら。
「離してくれませんか?」
助けようと伸ばされた手を自ら振り払った。
*
「驚いた。どういう心境の変化なの?」
「僕に焦る理由が無くなったって事。それに君に手を貸した方が、僕もすっきりするだろうし」
「……本当に、何があったの?」
「大抵の召喚士はエスパータイプのポケモンを憑依させたりはしないんだよね。エスパータイプって憑依でかかる負荷が大きいし、そのくせ能力を使うと異様に疲れるし。だから、みんな気付かなかったんじゃないかな。召喚士の意識を乗っ取るあれ、本当は強力なエスパータイプのポケモンが無理矢理憑依してくるだけだ。多分、悪タイプのポケモンを憑依させている召喚士には通用しないはず。で、僕はRURUで慣れてるからちょっと事情を聞いた。君の友達なんでしょう?」
「……うん。まぁ、そうなんだけど」
「あの人のところにいるのなら、サファイアも安全だろうし。多分僕を追いかけてここにやってくるよ。だからその騒ぎの間に君は友達を解放してあげたらいい。初めっから、僕を逃走させてそうするつもりだったんでしょう?」
「……。どうして、さっき逃げなかったのさ」
「君を置いて行きたくないって、思ったから」
「馬っ鹿じゃないの?」
「そうかもね」
「……お人よし」
「それは違うと思うけど。君じゃなかったら、こんなめんどくさい事しないよ」
「おれを口説いてどうすんの、あんた」
*
「ジュカイン。お前、またおれといてくれるの?」
*
たぶん没
枝に巻き付けたワイヤーに身を任せ、寸でのところで炎を回避する。
「……僕だけここで死ぬなんて、流石にカンベンなんだけど」
炎を放ってきたのは、人間だ。つまり、炎タイプのポケモンを憑依できる召喚士であるということ。ZUZUを外に呼び出して消火を命じてルビーは枝から飛び降りた。間髪をいれずルビーが乗っていた枝が地面に落下する。
「あーもう、捕まえるなら丁寧にしてよね。操り人形が欲しいなら五体満足の方がいいんじゃないの? ……って、聞いてないし」
さて、逃げるか、捕まりに行くか。
*
カタン、と軽い音がした。
「あ、起きた?」
他人の声がする。でも、サファイアの声じゃあない。これは変声期をまだ迎えていない、自分ともそう歳の離れていない、子供の声だ。
そこまで思ってルビーは自分の置かれている状況を思い出した。R団とおぼしき集団に襲撃され、そしてその真っ最中に自分は気絶したのだった。寝たふりをしたままゆっくりと体を動かして拘束の有無を確認する。足首に一つと、後ろ手に回された手首に一つ。微かに伸びる事からして、普通の縄だろう。
初めの第一声から動く気配の無い人間は見張りだろうか。目をつむったまま、もう少しルビーは様子を探る。
とても静かだった。近くにいるであろう人間の気配以外にはポケモンの気配も風の音もしない。再びカタン、と軽い音。それが微かに反響した事にルビーは気付いた。思えば、いつもに比べてあまりにも臭いがしない。
(つまりここは、屋内――)
「あんたさぁ、そろそろ寝てるフリやめたら?」
確実に自分を指す言葉に、ルビーの思考が止まる。少しの逡巡の後、ルビーは静かに瞼を上げた。
*
多分没
「ほら、口開けて」
「なんで『あーん』なんてしなきゃいけないの」
「そりゃあ、両手が塞がってるからじゃん」
「解けばいいよね?」
「そんな事したら俺が脱走補助で捕まっちゃう。食べる気はあるんでしょう?」
「まぁ、お腹空いたし」
「もしかしたら毒かもしれないのに?」
「でも毒じゃないでしょ。キミがそこまで演技力がある方だとは思えない」
「そこは認めるけど、でも俺ごと騙されてるのかも」
「それ自分で言う時点で否定してるも同然だよね。……僕に、何の用?」
「……リーダーに絶対気に入られると思うよ、あんた。俺達に協力しない?」
「嫌だ」
「やっぱり? あーあ、残念」
「もういいよ。お腹空いたから早く食べさせてくれる?」
「はいはい。あーん」
*
「ラルド」
「ルビー、暑い。離れて」
「嫌だよ」
「……ってこらー! 変なとこ舐めるな!!」
「もうちょっと色気のある反応してよ」
「おれに何を求めてるのあんた」
*
「仕事だよ」
「僕、協力するなんて言ってないんだけど」
「知ってる」
「な……に、これ。勝手に、動く……?」
「あんまり抵抗しないでくれる?。負担が増えるんだ」
*
「嘘はあんまりついてないよ。滅んだ都市の生き残りだってのは本当。でもこいつの整備の仕方を知ってるのは、父さんの趣味だったからなんかじゃない。これがおれの――得物だったから」
「……召喚士なんだ」
「今もそうなのかはわかんないけどね。宿してもいなければ憑依もさせてないから。でも、R団ってそんなに悪い組織だとも思えないんだ」
「どうして? ポケモンを殺すような連中なのに」
「おれの家族も友達も知り合いも、皆ポケモンに殺されたのに? ポケモンが人間を殺す事は許されておれたちは許されないわけ?」
「……ごめん。そういうつもりじゃあ、無かった」
「まぁ、あんたの言いたい事もわかるけどね。ポケモンがいない世界が、それほどいいものだとはおれには思えない」
「じゃあどうして協力してるの?」
「友達を助けるため、だよ。だからあんたにも協力してほしいんだ」
*
あの人の所にいるのなら、ひとまず彼女の安全は保証されただろう。それなら。
「離してくれませんか?」
助けようと伸ばされた手を自ら振り払った。
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「驚いた。どういう心境の変化なの?」
「僕に焦る理由が無くなったって事。それに君に手を貸した方が、僕もすっきりするだろうし」
「……本当に、何があったの?」
「大抵の召喚士はエスパータイプのポケモンを憑依させたりはしないんだよね。エスパータイプって憑依でかかる負荷が大きいし、そのくせ能力を使うと異様に疲れるし。だから、みんな気付かなかったんじゃないかな。召喚士の意識を乗っ取るあれ、本当は強力なエスパータイプのポケモンが無理矢理憑依してくるだけだ。多分、悪タイプのポケモンを憑依させている召喚士には通用しないはず。で、僕はRURUで慣れてるからちょっと事情を聞いた。君の友達なんでしょう?」
「……うん。まぁ、そうなんだけど」
「あの人のところにいるのなら、サファイアも安全だろうし。多分僕を追いかけてここにやってくるよ。だからその騒ぎの間に君は友達を解放してあげたらいい。初めっから、僕を逃走させてそうするつもりだったんでしょう?」
「……。どうして、さっき逃げなかったのさ」
「君を置いて行きたくないって、思ったから」
「馬っ鹿じゃないの?」
「そうかもね」
「……お人よし」
「それは違うと思うけど。君じゃなかったら、こんなめんどくさい事しないよ」
「おれを口説いてどうすんの、あんた」
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「ジュカイン。お前、またおれといてくれるの?」
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たぶん没
枝に巻き付けたワイヤーに身を任せ、寸でのところで炎を回避する。
「……僕だけここで死ぬなんて、流石にカンベンなんだけど」
炎を放ってきたのは、人間だ。つまり、炎タイプのポケモンを憑依できる召喚士であるということ。ZUZUを外に呼び出して消火を命じてルビーは枝から飛び降りた。間髪をいれずルビーが乗っていた枝が地面に落下する。
「あーもう、捕まえるなら丁寧にしてよね。操り人形が欲しいなら五体満足の方がいいんじゃないの? ……って、聞いてないし」
さて、逃げるか、捕まりに行くか。
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カタン、と軽い音がした。
「あ、起きた?」
他人の声がする。でも、サファイアの声じゃあない。これは変声期をまだ迎えていない、自分ともそう歳の離れていない、子供の声だ。
そこまで思ってルビーは自分の置かれている状況を思い出した。R団とおぼしき集団に襲撃され、そしてその真っ最中に自分は気絶したのだった。寝たふりをしたままゆっくりと体を動かして拘束の有無を確認する。足首に一つと、後ろ手に回された手首に一つ。微かに伸びる事からして、普通の縄だろう。
初めの第一声から動く気配の無い人間は見張りだろうか。目をつむったまま、もう少しルビーは様子を探る。
とても静かだった。近くにいるであろう人間の気配以外にはポケモンの気配も風の音もしない。再びカタン、と軽い音。それが微かに反響した事にルビーは気付いた。思えば、いつもに比べてあまりにも臭いがしない。
(つまりここは、屋内――)
「あんたさぁ、そろそろ寝てるフリやめたら?」
確実に自分を指す言葉に、ルビーの思考が止まる。少しの逡巡の後、ルビーは静かに瞼を上げた。
*
多分没
「ほら、口開けて」
「なんで『あーん』なんてしなきゃいけないの」
「そりゃあ、両手が塞がってるからじゃん」
「解けばいいよね?」
「そんな事したら俺が脱走補助で捕まっちゃう。食べる気はあるんでしょう?」
「まぁ、お腹空いたし」
「もしかしたら毒かもしれないのに?」
「でも毒じゃないでしょ。キミがそこまで演技力がある方だとは思えない」
「そこは認めるけど、でも俺ごと騙されてるのかも」
「それ自分で言う時点で否定してるも同然だよね。……僕に、何の用?」
「……リーダーに絶対気に入られると思うよ、あんた。俺達に協力しない?」
「嫌だ」
「やっぱり? あーあ、残念」
「もういいよ。お腹空いたから早く食べさせてくれる?」
「はいはい。あーん」
*
「ラルド」
「ルビー、暑い。離れて」
「嫌だよ」
「……ってこらー! 変なとこ舐めるな!!」
「もうちょっと色気のある反応してよ」
「おれに何を求めてるのあんた」
*
「仕事だよ」
「僕、協力するなんて言ってないんだけど」
「知ってる」
「な……に、これ。勝手に、動く……?」
「あんまり抵抗しないでくれる?。負担が増えるんだ」
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「嘘はあんまりついてないよ。滅んだ都市の生き残りだってのは本当。でもこいつの整備の仕方を知ってるのは、父さんの趣味だったからなんかじゃない。これがおれの――得物だったから」
「……召喚士なんだ」
「今もそうなのかはわかんないけどね。宿してもいなければ憑依もさせてないから。でも、R団ってそんなに悪い組織だとも思えないんだ」
「どうして? ポケモンを殺すような連中なのに」
「おれの家族も友達も知り合いも、皆ポケモンに殺されたのに? ポケモンが人間を殺す事は許されておれたちは許されないわけ?」
「……ごめん。そういうつもりじゃあ、無かった」
「まぁ、あんたの言いたい事もわかるけどね。ポケモンがいない世界が、それほどいいものだとはおれには思えない」
「じゃあどうして協力してるの?」
「友達を助けるため、だよ。だからあんたにも協力してほしいんだ」
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