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小説置き場。
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 襲われるルサ

 

  *

 まずい。
 ルビーの脳裏で警鐘が鳴る。勝てる、だろうか。
「ルビー、こげんはどういうこったい!?」
「僕が聞きたいよ!」
 サファイアと背中合わせに立ち、ルビーはもう一度自分たちを取り囲む敵を見渡した。その数、総勢十以上。その全員が重火器を装備しただけの、只の人間だったならば勝機はあるとルビーは判断しただろう。何せ、彼はポケモンを使役できる召喚士なのだから。しかし。
 空間の歪みを直感したルビーがサファイアを突き飛ばす。ちょうど二人が立っていた場所の下草が、鋭い刃物で一閃されたかのようにはらりと落ちた。アブソルの、サイコカッターだ。
「なして召喚士が混ざっとると!?」
 サファイアがそう叫ぶとおり、敵には召喚士も紛れていた。しかも、一人や二人どころではない。
「R団だと、思ったんだけどな……」
「どうするったい、ルビー」
「この数じゃあ勝てない。逃げよう」
  せめてもの幸いは、相手が集団戦に慣れていなさそうな点だった。互いに足を引っ張ってくれれば、息のあったルビーとサファイアでも何とか逃げきれるかもし れない。上手く逃げられれば、相手が執拗に追ってくる事もないだろう。なにせ召喚士であることくらいしか、追われる理由が見あたらない。手に持ったワイ ヤーをぎゅうと握りしめる。ルビーは戦闘が嫌いだった。あまりにも、美しくないから。
 最悪の事態を考慮して憑依はラルトスに。複数匹に指示を出すのはこういった場では向かないため、素早さに劣るミズゴロウは控えで。スピードを重視してグラエナを呼び出し、後続を巻くように指示を出す。
「あたしは?」
「サファイアは大人しく走って。とろろもどららもスピードが遅すぎるし、森の中で不用意にちゃもの炎を使うのは危険すぎる。さ、行くよ」
 こくん、と頷いたサファイアの手を取ってルビーは走り出した。

  *

「まだいたの!?」
 遂には刃物で切りかかってきた相手にルビーがナイフを取り出す。甲高い金属音が響いたその一瞬、ルビーは相手の顔をようやくまともに見た。そこにあったのは、完全な、無表情。背筋が凍り思わず相手と距離をとった。
 まともじゃあない。まともじゃない、召喚士。自我を無くし、ただ与えられた命令のみを遂行しているような――操られている?
(ということは、こいつらの目的はおそらく……僕たち召喚士を『捕らえる』事)
 足を止めたおかげで後続との距離もかなり縮まってしまった。逃げきることは、もはや不可能だろう。出来ることは……
「サファイア!」
 応戦していたサファイアを呼び寄せる。怪訝そうにルビーの方へやってきたサファイアの腕をルビーはしっかりと掴んだ。
「何ね、るび……」
(せめてサファイアだけでも、安全なところに……!!)
 憑依しているラルトスに意識を譲り渡す。他人事の様に空間が歪むのを知覚したルビーは、その歪みの中にサファイアを突き飛ばした。
「ルビー!?」
「キミだけでも、逃げるんだ!」
 驚いた表情をしたままのサファイアの姿がふつり、と消える。そこまでを確認したルビーは、とうとう強烈な脱力感に耐えかね意識を失った。

  *

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