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小説置き場。
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テスト期間にせっせと携帯で小説を書く馬鹿がここに一人。
オリキャラ注意。あ、シアンってのは4主なんで。

※小設定と言い訳
 3の50年前の炎の運び手達は炎の英雄(ヒエン)を中心とした宿星達だった、というものです。
 真なる風の紋章のルックの先代の継承者・ルイン(天間星)と、軍師さん(名前未定・天機星)がでてきます。
 ルインの性格が大分違うのは設定が固まってないからです;

「俺は紋章に嫌われてるからね。次の継承者は紋章から愛されることを願ってるよ。」
「最期の言葉はそれだけか?」
「ああ。
 さぁシアン。早く俺を楽にしてくれ。紋章の呪いから解き放ってくれ。」
「そうだな。それじゃあな、真なる風の継承者よ。」
「ああ。お前ともお別れだ、罰の継承者。」

 * * * * *

 ドアを開けた向こうにいたのは、病弱そうな青年だった。ただ一人、部屋の中央に置かれた椅子に座って開け放たれた窓から外を眺めている。部屋の中にそれ以外のものはなかった。燭台すらもないだだっ広い部屋。
 青年がこちらを見ずに言った。
「ここに君たちが求めてる物はないよ」
 ただ淡々と、侵入者であるヒエン達の事などどうでもいいように。
「お前は…」
 言葉は続かなかった。
 何も聞いてはいけない気がした。だが、それと同時にこの青年を知りたいとも思った。そんな奇妙な葛藤がヒエンの中で渦巻いて、何故だか見ていて苦しくなるのだ。彼を放っておいてはいけない、と何かが激しく警鐘を鳴らしていた。
 だが青年の関心はとうに薄れてしまったようだ。ヒエンの存在を完全に無視し、何を見るでもなく、窓の外に意識を向けている。
「今日は紋章に選ばれし器が来るのか…」
 青年がポツリと呟いたその言葉が酷くヒエンの耳に残った。
 だがそれも長くは続かない。
「おーいヒエン!こっちだ!」
 仲間の呼び声が聞こえて、ヒエンは後ろ髪を引かれる思いで青年のいる部屋を去った。
 中で青年が呟く。
「お前も私なんぞに宿されて心底不快であろう、真なる風の紋章よ…」
 答えるように突風が室内に吹き荒れた。

 なんだかよくわからないままに凄そうな紋章を宿してしまったヒエンは、逃走の最中に行きに出会った青年をふと思い出した。
「悪ぃ、先に出ててくれ!」
 共に逃げていた仲間にそう言い、ヒエンは180゜振り返って奥に走った。
「ヒエン!どこに行くんだ!」
「忘れ物だ!すぐ戻る!」
 不思議と青年がいた部屋の場所がわかる。右手に宿したばかりの紋章が僅かに熱を帯びていた。
 階段を駆け降りて廊下を二度三度曲がって、ようやくたどり着いたその部屋のドアを開ける。その瞬間にとてつもない突風がヒエンに押し寄せ、ヒエンは若干吹っ飛んだ。
 体制を立て直して再び部屋に入る。今度は青年に話し掛けることを躊躇ったりはしなかった。
「おい、お前」
 呼び掛けと同時に青年がヒエンの方を振り向いた。青年の目がほんの少し見開かれる。
「そうか、君が紋章の継承者…」
 青年は、その話し方に比べて随分と顔立ちが幼かった。まだ少年と呼ばれる範疇だろう。肌は日頃から日に当たっていないのか病的なまでに白く、髪も全体的に色素が薄い。銀色に水色を足したような髪が緩く纏められて背中に垂れていた。ぱっと見た印象は「白っぽい」だろう。だが、瞳の色だけは鮮やかな赤紫色だった。そしてひたすらに無表情だった。
「早く逃げた方がいい。ここにも警備の者はいる」
「お前も来いよ」
 歩いて傍に寄って白い腕を引く。
「お前はこんな所にいたらいけない」
「何故そう思う?」
「…そんな気がする」
 青年が微かに驚き、僅かに微笑んだ。
 ヒエンの手をそっと外して立ち上がる。
「ならば私も行こう」
 ヒエンは頷いた。

「な、ヒエン、そいつ誰だよ!」
「女か!?」
「どー見ても男だろーが。さっきの忘れ物さ」
「そんな細っこい奴使い物になるか?」
「まぁ、多分なるだろ」
「勘か!?また勘なのか!?」
「…とりあえず名前は?」
「そういえばまだ聞いてなかったな。
 俺はヒエン。こいつらと一緒に盗賊団をやってる。
 お前の名は?」
「ルイン。
 これから行くアテがないからな。しばらくお前達の世話になろう。
 …それでもいいか?」
「もとからそのつもりだっつーの」
「んじゃここは一つパーっとやろうぜ!」
「お前ら、勝手に決めるな!」

 * * * * *

 外は雨。ざあざあと何の面白みもない音が室内に響き渡る。その音がかえって静かさを強調しているようで、どうもヒエンは雨の日というものが嫌いだった。否、雨の日に屋内に立て篭もることが嫌いだった。
「あ゛~、暇」
 言って床に倒れ込む。少し離れた所で書き物をしていた軍師がペンを止めて顔を上げた。
「お前が暇なんて珍しいな」
「…人の事珍獣みたいに言うな」
「事実を言ったまでだ」
 流石にこれには反論できない。
 確かにヒエンはいつも何かをしている。こんな風に手持ち無沙汰なことは滅多にないのだ。軍師の前では初めてかもしれない。
 バサリ、とヒエンの頭の側に紙が落とされた。
「何、コレ」
「俺がお前の代わりに捌いてる書類だ」
「何、するの」
「無論お前が捌くんだ」
 軍師の方を見遣るとそこには意地の悪い笑みが浮かんでいる。
「俺字読めないんだけ「サナはお前は字が読めると言っていたが?」
 確実に目が笑っていない。やばい、怒らせたか…?ヒエンに冷や汗が浮かぶ。
「いや、その、これにはふかーい訳がありまして」
「問答無用、暇ならやれ」
「でも俺、字書けな…」
「ヒエン?」
「すんませんやります」
 ヒエンは字を書くのは本当にできなかったが、あまりにも軍師が怖すぎる。紙束を持って立ち上がる。
 ぽすん、と軍師の手が頭に乗せられた。
「自分の名前は書けるな?」
「…そのくらいは」
「大まかに書類は分けておいた。基本は署名だけでいいが、何かあったら俺に聞け」
「分かった」
 渋々、といった表情で頷く。
「あぁ、あと」
 軍師は勝ち誇ったように微笑んだ。
「軍主の仕事は基本がこれだ。今までしていたことは他人に任せて明日からはここに来い。これはお前にしかできない仕事なんだからな?」

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