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小説置き場。
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 数少ない私物の服を着て、手には僅かながらの荷物と外套。この時期のあの場所は、まだ寒い。故郷を思うと、寒くないかと問う父の声が、上着を何枚もかけてくれた母が一緒に思い出される。優しい優しい、もう二度と来ない日が。
「行くのか?」
 感傷を断ち切ったのは後から聞こえた主人の声だ。出発前の挨拶すらまだだったことをすっかり忘れていた。慌てて振り返り、頭を下げる。
「ルーク様。ご挨拶が遅れ、申し訳ございません。今から、出発させていただこうと思っております」
「そっか」
 ヴァン様を除いて、誰かが屋敷を出る前のルーク様はいつも静かだ。その顔にはいつも羨望と諦観が浮かんでいた。空を望みながら諦めてしまった籠の中の鳥。生きながらにして羽をもがれてしまった鳥のなりそこない。
「行って参りますね」
 誰が悪いというのではないのだけれど、ルーク様は屋敷を出られないのに自分は出られるということが申し訳なく感じられる。
「おう、行ってこい」
 はい、と答えてルーク様の横を通り過ぎて扉に手をかける。ここは使用人の部屋なのだけれど、退出の挨拶をしようと口を開いた時にそれは聞こえてきた。
「帰って、こいよ」
 感情が殺されたそれには、でも縋るような響きもあって。
「はい。必ず」
 はっきりとそう答えることしか、できなかった。


(091201)

 *

オリジナル設定満載すぎて申し訳ないアビス本編前。オリキャラ一人称でやたらとシリアスですが、この人はただ親の墓参りに行くためにちょっと里帰りするだけだったりする。もうちょっと設定あるけど、名前は全然考えてない。ルーク付きの使用人です。ルークは二十歳になっても屋敷からは出れないんじゃないかとぼんやりと思ってます。
背景描写が全く無いしルークの心情もあんまり考えてないし。ルークがどんな顔をしているのかがわからない。
一応設定
・ルークが超振動でティアと共にふっとぶ日の直前。
・語り手が帰って来たらルークがいない
・語り手さんはファブレ家の遠縁の下級貴族(男爵くらい)の息子
・父親はホド戦争で戦死、数年したら母親も死んで天涯孤独な身になったところをルークパパが使用人として引き取る

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