小説置き場。
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マス帯でも帯マスでもない。あくまでもこいつらは家族愛。
*
「マスター、いい加減起きたら? 知らないよ、僕は」
「何の、話や……?」
「あのカイトが、機嫌を損ねていないわけがないと思うんだけど」
「あ、……はははは」
「ご愁傷様」
*
カイトに比べたら華奢な身体。それを抱き寄せる。体を震わせて、声を殺して泣いているのには気づかないふりをした。
*
嫌いじゃなかった好きだった。でもきっと、愛だと気付く前に憎んでいた。
*
大丈夫。
もう、怖い夢は見ない。
*
「我慢、我慢、我慢ガマンがまん……!」
「カイ、ト……?」
「何、アカイト」
「い、いや……なんかお前、機嫌悪くないか……?」
「これで良いように見えるの?」
「見えませんごめんなさい」
「……はぁ。アーくんにあたっても仕方が無いよねぇ」
「聞きたく無いが一応聞く。……マスターは?」
「部屋の中で帯人といちゃいちゃしてるんだ絶対。ふたりっきりとか何それ。おれに対して喧嘩売ってるんですか?」
「仲直り中、か」
「最近のマスターはおれがいてもすぐに帯人が帯人がって五月蝿いから今日だけは目をつぶってあげてるの。だからさっさと元に戻れあんのあほっ! あほ!」
「……朝になったら帯人と逃げるか」
*
「帯人」
僕を呼ぶ声がする。だって当たり前だ。僕は気道が塞がるほどの力を込めてはいないのだから。目が合う。彼の目に、僕はどんな顔で映っているのだろう。
体の横のラインをするすると撫で上げられる。背中に手を回されて、ぐいっと彼の肩に引き寄せられた。肘を折り曲げて膝も曲げて、顔だけが彼の肩と顔の隙間に埋まっている。
「その体勢はしんどいやろ。もっと足伸ばし。体重は俺に預けても平気やから」
言われた通りにもぞもぞと足を動かして、でも体格が僕とほぼ同じ彼にのしかかるわけにもいかずに少し体を浮かせる。
「しんどないか?」
小声で平気、とだけ伝えると彼は一つ頷いてそれで、と言葉を続ける。
「手じゃなくて腕を首に回してみ」
それでな、好きなだけそうしとき。
そう言ったきり、彼は何も言わなかった。
*
「今から14年前の話だけど……知ってるのかな」
「内容にもよるんとちゃうか?」
「そう。じゃあ、ボーカロイドの虐待が社会問題となっていたのは覚えてる?」
「……あぁ、今も解決したとは思えへんけど、確かにあの頃は大騒ぎしとったな」
「それじゃあ、そのきっかけは?」
「そこら辺は専門や。まずはボーカロイドが所有者を殺害する事件が発生して大騒ぎ。んで背景をよくよく調べてみるとその所有者は自分のボーカロイドに虐待を加えていた。その憎しみが原因かと思いきや、当のロイドのメモリを解析してみると、所有者が自分のロイドに自分を殺すように強要した結果やった。そこからKAITOシリーズのエクセプション問題も発生したんやけど、それよりも当のKAITOの悲劇性が過剰報道され、煽られて一種の社会問題と化した、んやったか。最後まで嫌や言うてたのに命令されたせいで従わざるをえなかったんやろ? なぁ帯人」
「……察しが早くて助かるよ、貴方は」
「怖いんは俺ちゃうくて『マスター』か?」
「違う。『マスターを殺した自分』だよ」
「いつか俺を手にかけるんとちゃうかと?」
「馬鹿馬鹿しいとは思うけどね。でも不安ってそういうものでしょう?」
「せやな。でも安心しい、帯人。俺は絶対にお前に「やめろ」って言う。絶対に止めたるから。な?」
「……そう、だね。だいたい、貴方の場合は頼む時はカイトだろうし」
「ま、確かに俺が爺さんになってどうしようもなくなった時は考えるかもしれんけどな」
「じゃあ、最後にお願いしてもいい?」
「なんや?」
「……貴方の首を、絞めさせてください」
「自分に厳しい奴やな、帯人は。ええけど、無理はしたらあかんで?」
「一応誰か呼んだ方がいいんじゃないの?」
「俺は死なんもん。必要ないわ」
「そう。じゃあ……横になって」
「ほんま、徹底しとるなぁ……」
*
「マスター! もう、チョコレートを主食にするのはやめてください!」
「うるさいうるさい。ええやないか」
「よくないです! 大袋を一日で空けるなんて体に悪いに決まってます!」
「そんなんザラやし」
「マスター起きてからチョコレートしか食べてないですよね」
「……やってご飯作んの面倒やねんもん。お前もやってみいや。材料切って炒めて混ぜて煮込んで……炒飯もラーメンも作りすぎて飽きたわ。食べたない」
「……つまり、おれがご飯を作ればいいんですね?」
「そりゃまともな食いもんがあればそれ食べるけど……できるん?」
「レシピがあればできるはずです」
「それじゃあかん。レシピがあったところで計量器具あらへんし……ってお前が量ればいいんか。やるか? 料理」
「はい!」
「おっけ。んじゃ計量機能についでに料理ソフトもインストールしてやな。包丁とか皮剥き器とか仕込むか?」
「刃物は切れ味を保つ為には外部で保存した方が効率的だと思いますが」
「それもそうやな。んじゃやろか」
*
「マスター、いい加減起きたら? 知らないよ、僕は」
「何の、話や……?」
「あのカイトが、機嫌を損ねていないわけがないと思うんだけど」
「あ、……はははは」
「ご愁傷様」
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カイトに比べたら華奢な身体。それを抱き寄せる。体を震わせて、声を殺して泣いているのには気づかないふりをした。
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嫌いじゃなかった好きだった。でもきっと、愛だと気付く前に憎んでいた。
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大丈夫。
もう、怖い夢は見ない。
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「我慢、我慢、我慢ガマンがまん……!」
「カイ、ト……?」
「何、アカイト」
「い、いや……なんかお前、機嫌悪くないか……?」
「これで良いように見えるの?」
「見えませんごめんなさい」
「……はぁ。アーくんにあたっても仕方が無いよねぇ」
「聞きたく無いが一応聞く。……マスターは?」
「部屋の中で帯人といちゃいちゃしてるんだ絶対。ふたりっきりとか何それ。おれに対して喧嘩売ってるんですか?」
「仲直り中、か」
「最近のマスターはおれがいてもすぐに帯人が帯人がって五月蝿いから今日だけは目をつぶってあげてるの。だからさっさと元に戻れあんのあほっ! あほ!」
「……朝になったら帯人と逃げるか」
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「帯人」
僕を呼ぶ声がする。だって当たり前だ。僕は気道が塞がるほどの力を込めてはいないのだから。目が合う。彼の目に、僕はどんな顔で映っているのだろう。
体の横のラインをするすると撫で上げられる。背中に手を回されて、ぐいっと彼の肩に引き寄せられた。肘を折り曲げて膝も曲げて、顔だけが彼の肩と顔の隙間に埋まっている。
「その体勢はしんどいやろ。もっと足伸ばし。体重は俺に預けても平気やから」
言われた通りにもぞもぞと足を動かして、でも体格が僕とほぼ同じ彼にのしかかるわけにもいかずに少し体を浮かせる。
「しんどないか?」
小声で平気、とだけ伝えると彼は一つ頷いてそれで、と言葉を続ける。
「手じゃなくて腕を首に回してみ」
それでな、好きなだけそうしとき。
そう言ったきり、彼は何も言わなかった。
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「今から14年前の話だけど……知ってるのかな」
「内容にもよるんとちゃうか?」
「そう。じゃあ、ボーカロイドの虐待が社会問題となっていたのは覚えてる?」
「……あぁ、今も解決したとは思えへんけど、確かにあの頃は大騒ぎしとったな」
「それじゃあ、そのきっかけは?」
「そこら辺は専門や。まずはボーカロイドが所有者を殺害する事件が発生して大騒ぎ。んで背景をよくよく調べてみるとその所有者は自分のボーカロイドに虐待を加えていた。その憎しみが原因かと思いきや、当のロイドのメモリを解析してみると、所有者が自分のロイドに自分を殺すように強要した結果やった。そこからKAITOシリーズのエクセプション問題も発生したんやけど、それよりも当のKAITOの悲劇性が過剰報道され、煽られて一種の社会問題と化した、んやったか。最後まで嫌や言うてたのに命令されたせいで従わざるをえなかったんやろ? なぁ帯人」
「……察しが早くて助かるよ、貴方は」
「怖いんは俺ちゃうくて『マスター』か?」
「違う。『マスターを殺した自分』だよ」
「いつか俺を手にかけるんとちゃうかと?」
「馬鹿馬鹿しいとは思うけどね。でも不安ってそういうものでしょう?」
「せやな。でも安心しい、帯人。俺は絶対にお前に「やめろ」って言う。絶対に止めたるから。な?」
「……そう、だね。だいたい、貴方の場合は頼む時はカイトだろうし」
「ま、確かに俺が爺さんになってどうしようもなくなった時は考えるかもしれんけどな」
「じゃあ、最後にお願いしてもいい?」
「なんや?」
「……貴方の首を、絞めさせてください」
「自分に厳しい奴やな、帯人は。ええけど、無理はしたらあかんで?」
「一応誰か呼んだ方がいいんじゃないの?」
「俺は死なんもん。必要ないわ」
「そう。じゃあ……横になって」
「ほんま、徹底しとるなぁ……」
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「マスター! もう、チョコレートを主食にするのはやめてください!」
「うるさいうるさい。ええやないか」
「よくないです! 大袋を一日で空けるなんて体に悪いに決まってます!」
「そんなんザラやし」
「マスター起きてからチョコレートしか食べてないですよね」
「……やってご飯作んの面倒やねんもん。お前もやってみいや。材料切って炒めて混ぜて煮込んで……炒飯もラーメンも作りすぎて飽きたわ。食べたない」
「……つまり、おれがご飯を作ればいいんですね?」
「そりゃまともな食いもんがあればそれ食べるけど……できるん?」
「レシピがあればできるはずです」
「それじゃあかん。レシピがあったところで計量器具あらへんし……ってお前が量ればいいんか。やるか? 料理」
「はい!」
「おっけ。んじゃ計量機能についでに料理ソフトもインストールしてやな。包丁とか皮剥き器とか仕込むか?」
「刃物は切れ味を保つ為には外部で保存した方が効率的だと思いますが」
「それもそうやな。んじゃやろか」
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