小説置き場。
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私の気分は高揚していた。今日だけは、私がシルバーを独り占め! こんな日は、きっと滅多に無い。普段ならこういう予定は大抵断るシルバーがこうして来てくれているのは、『一日くらいあなたが無事だった事を祝わせて』と言ったのが効いたからなのかしら。でも真面目なシルバーからすれば、私達に心配をかけた埋め合わせのつもりなのかもしれない。それでも、やっぱり今日はシルバーを独り占め! なんて素敵な響きなのかしら。
「おい、クリス」
「なに? シルバー」
「……どこに行く気だ?」
「着けばわかるわ」
訝しげなシルバーにくすり、と笑って私はシルバーの手を引いた。今日は手まで繋いでくれるなんて!
うきうきしながら真昼間のコガネシティの繁華街を歩いて、着いたのは一軒のデザートショップだった。
「……ここか?」
「ええ」
「道理でそんなに嬉しそうなわけだ……」
「あら、シルバーだって好きじゃない、スイーツ。嫌いとは言わせないわよ?」
「…………」
自分からは全然頼もうとしないのに、人が食べてるのを心底羨ましそうに見ているのを私は知ってる。
更に今はカップルだと二人分の食べ放題が一人分の値段になるというセール中。前から一度は来たいと思っていた店だからこれは嬉しい。
*
初めて出会った日を、あなたは覚えているでしょうか。
*
大好きだから大嫌いだった
「どうして、キミなんだい」
体を丸めて焚火の側で眠っているヒトカゲにルビーは語りかける。
自分の最初のパートナー。けれどもそれ以上に、兄の相棒でもあった。
*
百葉箱の神様
*
「ルーク様」
「フィン。俺はレプリカなんだ。俺は『ルーク』じゃあ、なかったんだ」
「そうですか」
「だからお前は、俺に仕えなくていい」
「……それは困りました。それでは私はクビですか」
「い、いや、そうまでは言わないけど……あれ?」
「ルーク様。今の私の仕事は、あなたに仕えることです」
「だから、それはっ」
「ですが、それは『ルーク』という名前の人間に仕える事ではありません」
「……えっ?」
「私が、あなたについてまわる身分しか見ていないと思いましたか? 私はあなた自身を見てはいませんでしたか? あなたにそう感じさせてしまったと言うのなら、私はあなたの使用人として大いに反省しなければなりませんね」
「フィン……」
「まだ言葉が足りませんか。つまりは、あなたがレプリカとやらであろうが何であろうが、私にとってそんなことはどうでもいいんですよ。私がお仕えしているのは、他の誰でもない、あなたです」
「……ありがとう、フィン。そう言えば、お前は記憶喪失になる前の俺――じゃない、『ルーク』に会ったことはないんだよな」
「ええ、その通りです」
「じゃあさ、今度『本当のルーク』……今はアッシュって名乗ってるんだけど、そいつを連れて来るから会ってみてくれよ。ちょっと気難しいところはあるけど、悪い奴じゃあないから」
「それは構いませんが……ルーク様、何をお考えですか?」
「……アッシュがここに戻ってきたら、俺は全部返さないといけない。俺はレプリカで、ファブレ家の本当の子供ではないから。あいつから奪ってしまった分を、全部。……フィンは父上に雇われて父上の息子に仕えているんだろ? 本当は、俺じゃなくてアッシュに仕えるはずだったんだ。だから……」
「それは無いと思いますよ。私は、あなたの話し相手として連れてこられたんですから。記憶を失われる以前のルーク様……アッシュ様とお呼びすればよいのでしょうか、もしアッシュ様が今もこの屋敷におられたのなら、私はきっとここにはいません」
「そうだったのか?」
「ええ。今思うに、旦那様はガイの事を知っていたのでしょうね。それなのに、予想外なまでにあなたが懐いてしまったから、慌ててガイの代わりになれそうな人間を捜したのだと思います。尤も、私はガイの代わりにはなれませんでしたけどね」
「ガイの事知って……ってなんでじゃあ雇ってたんだよ!?」
「何かお考えがあったのでしょう。それ以前に、これは私の推量であって事実ではありませんよ、ルーク様」
「あ、あぁ……そうだった」
「そういうわけで、もしもルーク様がファブレ家から縁を切られた場合、私もお払い箱になるのでしょうね」
「……ごめん、フィン」
「仮定の話ですよ。そうなれば、私は故郷に帰って母の仕事を継ごうと思うのですが……ルーク様も一緒に来ますか?」
「えぇっ!? ……使用人でもなくなったのに、まだ俺の世話なんてさせられないよ」
「あなたが公爵家の子息でなければ、私とあなたは友達ですよ。路頭に迷い困っている友達を助けるのは当たり前の事ではありませんか?」
「フィン……。……お前よくそんなことを恥ずかしげもなく言えるよな」
「どうやら減らず口が叩けるくらいにはお元気になったようですね」
「……うん。ありがとな、フィン。お前がいてくれてよかった」
*
「家族になろう」
「僕たちが、か?」
「ああ。今まで俺たちの関係に名前を付けようとしてきたけど、どれも微妙に違ってた」
「兄弟と呼ぼうにも僕たちは他人で」
「友人と言うにしても俺たちは近すぎた」
「仲間や相棒という目的意識がある関係でもなくて」
「ただ俺は、お前と共にありたいしお前の幸せを願ってる。でも恋人でもないだろ?」
「だから家族、か」
「それが一番近いと思ったんだ。相手の幸せが自分の幸せになる、そういう相手は家族と呼べるんじゃないかって」
「それで僕はお前の家族だと?」
「ああ」
「そうか。なら……お前も、僕の家族だ」
「リオ……。改めて、よろしくな」
*
『なんだか僕たちの爛れた関係と比べると、二人って……』
『でもやる事はやってるだろ?』
『王子ともやってたけどね! 不謹慎だ!』
『あいつも気付いてるっぽいのになぁ……。独占欲が薄いとか?』
『僕だったら口もきかない』
『知ってるよ、んなことは。俺だって怒っただろうなぁ』
『今となっては遠い過去の記憶だけどね』
『だな。今となってはただの剣だ』
*
アスベル虐めが趣味(でも悪意はない)なリチャードの学パロ
・リチャードの家は超金持ち。警察とかに圧力を掛けることもできるくらい
・学園の不良どもの弱みを握りこんでパシらせる学園の頂点
・先生よりも強い
・アスベルはリチャードの親友
・リチャードを止める事ができる可能性(あくまでも可能性)がある唯一の人物。不良どもから崇拝されてる
・アスベルと付き合うと漏れなくリチャードが付いてくるため普通の子はちょっと遠巻きにしてるんだけど全然気にしてない。むしろ意図的に空気読んでない。そういう意味では神経の図太さはリチャード並
・ヒューバートは一つ下に在籍。
*
アスベルが中庭を歩いていると、空から水が降ってきました。一瞬でアスベルはずぶ濡れです。何があったんだろうとアスベルが上を見上げると、青いポリバケツが窓の中に引っ込んでいきました。
「あっはははは!」
突然笑い声が聞こえてきました。でもアスベルは驚きません。ここに呼び出しされた時から、嫌な予感はしていたのです。
「リチャード……今日は何だ」
水をポタポタと垂らしながらアスベルは笑い声の主――リチャードに話しかけます。
「ははははっ! アスベルの上だけに局地的な豪雨が降らないかと思って、お願いしてみたんだよ」
「今のは雨じゃなくてバケツの水だろ」
「上から落ちてくる水なんて雨と同じじゃないか。ふふっ、本当に絶景だったよ、アスベル」
リチャードはにこにこと楽しそうです。いつものことです。アスベルは一つため息をつきました。
「制服がびしょびしょになったじゃないか。午後も授業はあるんだぞ」
「心配しなくても大丈夫さ。僕がちゃんと服を用意してきたからね」
「女子用の制服なら着ないからな」
アスベルがぴしゃりと言い放つと、リチャードが首を傾げました。
「どうしてだい? とてもよく似合うと思うけど」
「俺が着たくないからだ」
「でもそれではアスベルが濡れっぱなしじゃないか」
「ヒューバートの体操着でも借りてくる」
そういうとアスベルはくるりと身を翻して校舎へ向かって歩きだしました。その後ろを当然のようにリチャードが付いていきます。
「ヒューバート」
前進びしょ濡れのアスベルは校舎ではとても目立ちます。弟の教室に着いて名前を呼ぶと、教室中の視線がヒューバートに集まりました。
「……どうしたんですか兄さん? 兄さんの頭上のみで局地的豪雨でもあったようになってますよ」
自分と同じ発想をしたヒューバートにリチャードが爆笑します。
「概ね間違ってはいないな。で、服貸してくれ」
「犯人はリチャードですか。体操着でよろしいですか?」
「ああ、頼む。風邪を引きそうだ」
「ちゃんと体を拭いてくださいよ」
慣れた様子でヒューバートがアスベルに体操着を渡します。アスベルは礼を言って、ヒューバートの教室を後にしました。
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