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学園要素がまるでないorz もうちょっと改稿して提出するつもり。
開け放たれた窓の内側にぶら下がった風鈴がちりんちりん、と涼しげな音を立てた。同時に生温かい風が部屋の中に吹き込んでくる。気持ちが悪い。でも、無いよりはマシだ。何せこの部屋にはクーラーという文明の利器がないのだから。
「あぢぃぃぃぃ」
ゴールドは扇風機に貼りつきながら叫んだ。勢いよく回転している羽根にその声が当たって声が震える。
ちなみにここは、大学生でもないのに一人暮らしをしているシルバーの家だ。というか部屋。彼の性格を反映してか部屋の中は随分と殺風景で、ゴールドの見える範囲にある家具は、飾りっ気のない勉強机と棚と電子レンジと冷蔵庫くらいだろうか。電気だけはアパートに備え付けだったようで、妙にインテリアとしてデザインされたカバーから注ぐ白熱灯の光は少し部屋から浮いていた。それよりももっと部屋から浮いている風鈴は去年姉から貰ったものらしい。冬でも付けっ放しだったのをゴールドは覚えている。
とりあえず、こんな糞暑い部屋で去年の夏を越したシルバーは何かがおかしいに違いない。そうゴールドは愛しの扇風機に抱きつきつつ思った。こいつの傍だけは少しだけ暑さがマシだ。
風鈴がちりんと鳴る。
「……まだ貼りついていたのか、お前は」
「なになに~、扇風機にまで嫉妬しちゃってんのお前」
隣の部屋で着替えていたシルバーに振り返りもせずにゴールドは軽口で答えた。シルバーがため息を一つつく。
「暑さのせいで頭も沸いてしまったか。かわいそうに」
「クーラーが無いお前んちがおかしいんだよ……」
言いながら後ろを振り向き、ゴールドは一時停止する。たっぷり一秒は固まった後、シルバー? と呟きを落とす。
「何だ」
そう普段通りに返すシルバーだったが、彼の赤銅色の髪は後頭部に結い上げられていた。要するにポニーテールだ。ゴールドの視線は吸い込ませるようにシルバーの白い項や鎖骨に行った。ごくり、と生唾を飲む。いつもは髪で隠されていて見えない分、余計にくるものがあった。熱を帯び始めたゴールドの視線にシルバーもはっとした顔をする。
「おいゴールd「シルちゃんちょーかわええぇぇ!」
がし。ごすっ。
一瞬理性を飛ばしたゴールドがシルバーに抱きつくのとほぼ同じタイミングでシルバーがゴールドに肘鉄を入れる。でもゴールドはびくともしない。痛くないわけではないが、すっかり慣れてしまっているのだ。
「離れろこの大馬鹿者っ!」
「俺馬鹿じゃないから知らねー」
「暑いんじゃなかったのかお前!」
「ほらシルちゃんってば体温低いじゃん? だからむしろ気持ちいーぜ?」
「それはお前が子供体温なだけだ! いいから離れろっ、暑い……っ!?」
ああもううるさいなぁ、などと思いながらゴールドがシルバーの口を自分の口を使って塞ぐ。その瞬間は目を見開いたシルバーだったが、すぐにゴールドの体を押して口を離れさせると、キッとゴールドを睨みつけた。
「そんなに暑いなら冷蔵庫にでも入ったらどうだ!」
「やだなぁシルバー、俺がお前んちの一人暮らし用の冷蔵庫になんて入るわけないじゃん」
へらり、と笑ってゴールドが答えると、シルバーの目がすっと細まった。もしかして機嫌最悪? とゴールドが内心でごちる。不自然な微笑を張り付けて、絶対零度の視線と共に淡々とシルバーは口を開いた。
「……関節の一つや二つや三つ、外せばなんとかなると思わないか?」
視線がシルバーを拘束している腕に向けられている。冗談とは、少し捉えにくい。何より目が本気だ。そっとゴールドはシルバーに回していた腕を解いて一歩後ずさった。それから遠慮がちにお伺いを立ててみる。
「えーっと……怒っ、た?」
「怒ったな」
「ちょーっと俺が無理強いしたから?」
「お前は強引にすぎる。大体俺は離れろと何度も言ったはずだが」
「今のキスは嫌だった、と」
「ああ」
「んじゃいつだったらいいんだよ」
少しふてくされたゴールドにシルバーは不自然な微笑を意地の悪い笑みに変えた。
「それくらい察しろ。俺はお前の恋人なのだろう?」
「……なんか酷くないか、それ」
口を開けば素直なことはほとんど言わないシルバーの、その本心を見抜けとシルバーは言う。ゴールドの呟きにシルバーが口角を上げた。
「今更だな」
そんな俺に惚れたのだろう、と傲岸にシルバーは笑った。全くだ、とゴールドも思う。
「なぁシル」
「なんだ」
「今は?」
「……好きにしろ」