小説置き場。
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昼間は立っているだけで汗ばむほどの陽気だったというのに、夜はまだ寒い。
昼のままの調子で半袖で外に出てきてしまったことを僕は少し後悔した。
「ほらよ」
突然、僕の目の前にアルミ缶が差し出された。ついさっきまで誰もいなかったのに、いつの間にか竜二郎が僕の前に聳え立っている。とりあえず差し出されたものなのでありがたく頂戴して、缶を開けようとしてふと気付いた。
「竜……僕はまだ未成年だけど」
「知ってる」
「これ、お酒だよね?」
「そうだな」
外国では飲酒が許されている国もあるくらいの年齢だけれども、アルコールを口にするのはどうも憚られる。
「酒でも飲んで体を暖めとかないと、お前風邪引くぞ」
竜二郎は僕の隣に座ってプルタブを引いた。そのままなんのためらいも無く飲んでいくのを見て、
「まあ、いいか」
僕も飲んでみることにした。
本当は分かっていた。『家出』と称したこの旅が長くは続かないことを。
それでも僕らはそれに気付かないふりをして現実から逃げ出した。
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