小説置き場。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
読み方を変えれば若干ホラー(笑
というか一年戦争は全く設定とかを考えていないんだよね…。
ただ単に、年が明けたと同時に始まった「何か」が、その年が終わる瞬間に完結したら面白そうだなぁと思っただけ。
登場人物たちは旧暦の月の名前を苗字にしてもらうつもり。
というか一年戦争は全く設定とかを考えていないんだよね…。
ただ単に、年が明けたと同時に始まった「何か」が、その年が終わる瞬間に完結したら面白そうだなぁと思っただけ。
登場人物たちは旧暦の月の名前を苗字にしてもらうつもり。
ジジジジジ、とオンボロの業務用エアコンが唸る。こいつだってたまには休憩したいだろうに、不幸なことに今日一日中働きっぱなしだった。
何で俺、こんなところにいるんだ…? 本当に、そう思う。本来なら今、この時間は家でまったり年越し蕎麦を食いながら新年へのカウントダウンをしている時間である。それが何が悲しくて勉強なんかしないといけないんだ。いくら受験生だと言っても、正月くらいは勉強なんて忘れても許されるだろうに。『年越し集中講座』なんてものを生み出したこの塾の講師に恨みが募る。しかもこんなのを毎年恒例にしているなんて、今でも信じられない。
「はい、それでは時間です」
先生が静まり返った教室の中で声を落とした。一斉に筆箱の中から赤ペンを出す音がした。要領がいいやつはすでに出している赤ボールペンを、一回ノックする。
前の席から模範解答が送られてきた。一枚手にとって残りを後ろに回す。最初の回答を見て早速俺は眉をしかめた。間違っている。
黙々と赤ペンが紙を滑る音が響く中、ポケットの中の携帯のバイブが震えた。こっそりと液晶画面を見やる。時刻は零時一分。気づかぬ間に新しい年がやってきていた。そして携帯が震えた原因であるメールを見る。母さんからだった。たった一言、「あけまして おめでとう」。しかもハートの絵文字つき。がっくりと俺は項垂れた。塾で勉強中の息子にメールを送る母親がどこにいるんだ。
携帯を片付けて、俺は再び採点に取り掛かった。前の座席のやつも携帯を弄くっていた。よくよく気を配れば、隣も、後ろも、斜め前も、最前列も、皆、皆。俺がペンを滑らせる音よりも、ボタンを押す音のほうが大きい。一つ一つの音は小さいのに、ちっぽけな教室に押し込められた数十人もの人間が一斉に鳴らすので、正直言ってかなりうるさい。一体何をしているんだ、と思って隣のやつの液晶画面をこっそりと覗くことにした。幸いにしてメールガードはつけられていない。
隣のやつ、とは言っても学校のクラスメイトでもある女子は学校でも特に目立つわけではなく、むしろ影が薄い部類に入るほうで、ただ一つ抜きんでた成績のよさが有名だった。素行もいたって真面目、少なくとも授業中に携帯をいじるとは思えない。そんなやつが一心不乱に文字を入力している。その文字を見て、俺の背筋は凍った。
意味が分からなかった。
avdtskjbNIHgjvdcgtfFhbfdyKjbdreChlKNyfdtr
生産性の無い文字の塊。何も見なかったことにして、今度は前の座席のやつの携帯を覗きこんだ。
同じだ。意味の無いアルファベットが踊っている。
気味が悪くなって、俺は立ち上がった。ガタン、と派手な音がしたが誰も振り向きさえしない。机の中から乱暴にカバンにテキストとルーズリーフと筆記用具を詰め込んで、椅子に引っ掛けていたコートを羽織る。先生に、気分が悪いので帰ります、と一方的に告げて俺は塾を飛び出した。制止の声は無かった。何故か? そんなの、考えたくも無い。
きっと俺は眠たくって幻覚が見えたんだだから家に帰るんだ。家に帰ったら母さんが一人でいて、当たり前のようにお帰り、と言ってくれるのだ。それで俺はただいま、と言って、二人で除夜の鐘の数を数えながら父さんからの電話を待つんだ。
視界にまたあの文字列が浮かんだ。そんなに俺は眠いのかと呆れた。早く家に帰ろう、帰ろう。
深夜の街は静かだった。歩いている人は一人もいなかった。視界の端の文字列がまた増える。そこから穴が広がるように文字が広がる。今まではガードレールだったものが、文字になる。記号になる。天も、地も、全てが記号で埋め尽くされる。これは、なんの夢だ? 今年の初夢がこれか? 今年はとんでもない一年に違いない。冗談じゃない。受験が控えてるというのに、縁起が悪い。
文字の洪水だった。俺の周りのあらゆる物を飲み込んで、俺だけ取り残してそれは広がっていった。もはや何もわからなくなって、わからなくなって、どうなったのだろう。俺はその先を覚えていない。
何で俺、こんなところにいるんだ…? 本当に、そう思う。本来なら今、この時間は家でまったり年越し蕎麦を食いながら新年へのカウントダウンをしている時間である。それが何が悲しくて勉強なんかしないといけないんだ。いくら受験生だと言っても、正月くらいは勉強なんて忘れても許されるだろうに。『年越し集中講座』なんてものを生み出したこの塾の講師に恨みが募る。しかもこんなのを毎年恒例にしているなんて、今でも信じられない。
「はい、それでは時間です」
先生が静まり返った教室の中で声を落とした。一斉に筆箱の中から赤ペンを出す音がした。要領がいいやつはすでに出している赤ボールペンを、一回ノックする。
前の席から模範解答が送られてきた。一枚手にとって残りを後ろに回す。最初の回答を見て早速俺は眉をしかめた。間違っている。
黙々と赤ペンが紙を滑る音が響く中、ポケットの中の携帯のバイブが震えた。こっそりと液晶画面を見やる。時刻は零時一分。気づかぬ間に新しい年がやってきていた。そして携帯が震えた原因であるメールを見る。母さんからだった。たった一言、「あけまして おめでとう」。しかもハートの絵文字つき。がっくりと俺は項垂れた。塾で勉強中の息子にメールを送る母親がどこにいるんだ。
携帯を片付けて、俺は再び採点に取り掛かった。前の座席のやつも携帯を弄くっていた。よくよく気を配れば、隣も、後ろも、斜め前も、最前列も、皆、皆。俺がペンを滑らせる音よりも、ボタンを押す音のほうが大きい。一つ一つの音は小さいのに、ちっぽけな教室に押し込められた数十人もの人間が一斉に鳴らすので、正直言ってかなりうるさい。一体何をしているんだ、と思って隣のやつの液晶画面をこっそりと覗くことにした。幸いにしてメールガードはつけられていない。
隣のやつ、とは言っても学校のクラスメイトでもある女子は学校でも特に目立つわけではなく、むしろ影が薄い部類に入るほうで、ただ一つ抜きんでた成績のよさが有名だった。素行もいたって真面目、少なくとも授業中に携帯をいじるとは思えない。そんなやつが一心不乱に文字を入力している。その文字を見て、俺の背筋は凍った。
意味が分からなかった。
avdtskjbNIHgjvdcgtfFhbfdyKjbdreChlKNyfdtr
生産性の無い文字の塊。何も見なかったことにして、今度は前の座席のやつの携帯を覗きこんだ。
同じだ。意味の無いアルファベットが踊っている。
気味が悪くなって、俺は立ち上がった。ガタン、と派手な音がしたが誰も振り向きさえしない。机の中から乱暴にカバンにテキストとルーズリーフと筆記用具を詰め込んで、椅子に引っ掛けていたコートを羽織る。先生に、気分が悪いので帰ります、と一方的に告げて俺は塾を飛び出した。制止の声は無かった。何故か? そんなの、考えたくも無い。
きっと俺は眠たくって幻覚が見えたんだだから家に帰るんだ。家に帰ったら母さんが一人でいて、当たり前のようにお帰り、と言ってくれるのだ。それで俺はただいま、と言って、二人で除夜の鐘の数を数えながら父さんからの電話を待つんだ。
視界にまたあの文字列が浮かんだ。そんなに俺は眠いのかと呆れた。早く家に帰ろう、帰ろう。
深夜の街は静かだった。歩いている人は一人もいなかった。視界の端の文字列がまた増える。そこから穴が広がるように文字が広がる。今まではガードレールだったものが、文字になる。記号になる。天も、地も、全てが記号で埋め尽くされる。これは、なんの夢だ? 今年の初夢がこれか? 今年はとんでもない一年に違いない。冗談じゃない。受験が控えてるというのに、縁起が悪い。
文字の洪水だった。俺の周りのあらゆる物を飲み込んで、俺だけ取り残してそれは広がっていった。もはや何もわからなくなって、わからなくなって、どうなったのだろう。俺はその先を覚えていない。
PR
この記事にコメントする
カテゴリー
プロフィール
HN:
天樹 紫苑
性別:
非公開
カウンター
解析