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小説置き場。
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 白く、儚く。さらさらと積もるまっさらな雪。それが枯れ果てた世界を白銀に塗りつぶす。生ある物の気配は途絶え、出来あがったのは鈍色の空と銀色の地面。そして、立ち尽くす人間の影。
「雪、だ」
 ただ呆然と人間は眺めていた。
「初めて見た…」
 思わず声が零れ落ちた。自分の名の由来となった物。話でしか聞いたことはなかった、自分の頭の中でしか見たことはなかった、いつか実際に見て見たいと願った物。
 ――それが、こんなに気高いとは。
 美しい物も醜い物も、全てを覆いつくし、ただ一人、痛いくらいに眩しく光り輝く。眩しくて、鋭くて、触れただけで全てが壊れそうな張りつめた糸のような存在。それでいて、実際に手のひらに触れると柔らかく解けてしまうのだ。まるでこちらを傷つけないかのようにそっと熱を奪って、儚く散る。
 手のひらで水滴に変わった雪を握りしめ、人間は天を見上げた。分厚く重々しい雲からその欠片が落ちてきていた。


(070927)

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