小説置き場。
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まだ咲き初めの桜の下、貴方の背中が段々と遠くなる。出逢ったのは去年の桜が散りきった頃。貴方は私の名前すらおぼえていないのかもしれない。
それでも、
一目見るだけで嬉しかった。
ほんの少し話すだけで幸せだった。
それも今日が最後。もうこの場所で貴方を見ることもないのでしょう。私は何もしなかったけれど、それでも私は貴方と同じ時に同じ場所に立っていたことを何よりも嬉しく思おう。だから、私は見送るだけ。
花風が吹き、咲いたばかりの桜がふわりと舞い上がって貴方に落ちる。花びらはほんの一瞬だけ貴方に触れ、気付かれることなくもう一度吹いた風にとばされる。どこへ行くでもなく漂うそれを、私は確かに見送った。
(070928)
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