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小説置き場。
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 こりゃ死んだ、と確かにジストは思った。テッカニンから人間が逃げられるわけがなかったのだ。既に数回受けた連続斬りの傷からもそれは明らかだった。もう一度食らったら、それで終わりだ。そしてもう一度テッカニンが構えに入ったのを彼は認めた。死んでたまるかという思いが無かったわけではない。だが、テッカニンがよほどのポカをやらかしてくれない限り、避けることはできない事をジストは確信していた。
 だが彼は生きていた。だから何が起こったのか理解できなかった。地面にはあのテッカニンが体液を流しながら落ちていて、自分の目の前には何やら細長い棒を持った少年が背を向けて立っている。もう動かないポケモンを見て、ああ助かったのかと漠然と感じていた。
「ふぅーっ。何とか間に合った。ナイスサポート、クリス!」
 キャップ帽を前後逆さまに被った少年が斜め後の木を振り仰ぐと、いつの間に登っていたのか、少女が枝から軽く飛び降りてくる。手に持っているのは弓だ。
「もぅ……突然走りだしたりしないでよ。びっくりしたじゃない」 おそらく彼女が『クリス』なのだろう。少年が悪ぃ悪ぃと軽く謝り、それからジストの方を向いた。
「で……つい助けちまった訳だが、今の時期に町の外に出るってこたぁお前自殺志願者か?」
 何か話し掛けてきているという事だけをジストは認識した。
「おーい、大丈夫かぁ?」
 キャップ帽の少年がジストの顔を覗き込む。金色の瞳に射抜かれてようやく話し掛けられた内容を反芻した。
「あー悪い、さっき護衛してくれてたやつと逸れてしまってだな……そいつも何か言ってたんだが、この時期って何があるんだ?」
 ジストの言葉を聞いて二人が顔を見合わせる。答えは背後から聞こえてきた。
「今は『間引き』の時期だ」
 何の気配もなく現れた第三の存在にジストは振り返った。いつの間にか赤い長髪を持った少年が立っている。
「まびき……?」
「お前、『間引き』も知らねーのか?」
 キャップ帽の少年が金色の瞳を瞬かせる。
「外から来たからあまりこの地方の事はわからないんだ」
「外……?」
「俺も実はよく分かっていない。ただ、一緒に来ていたやつがそう言ってただけで……」
「そいつの名は?」
 赤髪が口を挟む。
「カイト。スズシロ・カイト」
「! あのスズシロ研究所のところのやつか!?」
 身を乗り出してきたキャップ帽の少年から身を引きつつ、ジストはそれは知らないけど……と答えた。
「ちょっと三人とも、話はもうちょっと落ち着ける場所でしない? 流石にここは危ないわ」
「っと、そうだったな……バクたろう!」
 キャップ帽の少年が金色の瞳を伏せてそう言うと、彼の隣に炎を背負ったポケモンが姿を現す。『召喚』だ。喚びだした少年がそのポケモン、バクフーンの頭を優しく撫でる。
「燃やしてやれ、バクたろう」
 バクフーンの背中の炎が息絶えたテッカニンを包み込む。これまでに何度も見た、殺されたポケモン達とテッカニンの姿が重なって、ジストは吐き気を堪えた。このポケモンを殺すという習慣にはジストは慣れられなかった。ジストにとってポケモンはよき隣人であり、友人なのだ。殺すだなんて、とんでもない。
 完全にテッカニンが灰になった事を見届けるとキャップ帽の少年はバクフーンを再び宿した。
「んじゃとりあえず基地まで戻るか。お前もそれでいいな?」
 ジストは頷いた。

 *

 『基地』は大木の洞(うろ)をポケモンの技で整備した所だった。ジストも何度か泊まった事がある。
「さて、それじゃあ自己紹介でもしましょうか」
 少女の一声で自己紹介が始まった。やはりこの少女がクリスで、金目キャップ帽はゴールド、銀目赤長髪はシルバーと名乗った。
「それで、お前は何者なんだ」
 シルバーが問いかける。
「俺はジスト。何者か、と聞かれてもどう答えればいいのかわかんないんだけど……まずこれを見てくれ」
 ジストはこの地方に来てから大切にしまいこんでいたモンスターボールを取り出した。三人がきょとんとした顔をする。
「何だそれ?」
「モンスターボールって言って、」
 言いながらジストが開閉ボタンを押すと赤い光がボールから漏れ、炎を纏った一匹のポケモンが姿を現す。
「嘘っ、ポケモン!? どこから来たの!?」
 三人が三様に驚く中、そのポケモン、ギャロップはジストに擦り寄ってくる。
「中にポケモンを入れる事ができるんだ。このシチユウ地方の外には普通に出回っている。これで外から来たってこと、分かってもらえた?」
「信じられないような話だがな」
「俺からすればここの方が信じられないよ。……それで、カイトによると俺はここに迷い込んでしまったらしい。この地方から外に出られる所は一つしかなくて、カイトもそこに向かう予定だったからついでに送ってくれる、という話だった」
「でもお前そいつとは逸れちまったんだろ? これからどーすんだよ?」
「それは……」
 ジストは言葉に詰まった。この地方から出る、それが彼の目標だ。だが一人では行けない。だからといって他人を雇えるような物もない。結局、カイトの親切心に付け込むしか無いのだろうか。
 黙り込んでしまったジストに三人が顔を見合わせる。目線で会話した後、クリスの口が開いた、その瞬間にシルバーが鋭い声をあげた。
「敵かっ!?」
 ほぼ同時にキィンと澄んだ音。ジストが驚いて基地の入口に目を向けると、鋭く尖った氷が何本も生えている。クリスが険しい顔で弓に手をかけ、ゴールドは入口に殺到し、勢いそのままに突きを繰り出す。そしてあれ、と呟いた。
「人じゃねーか」
「珍しいわね、シルバー」
 気配を間違えるなんて、とクリス。
「わっりぃこっちの勘違いだわ。無事か?」
 ゴールドが入口から身を乗り出して聞いている。返答はジストがよく知っている声だった。
「勘違いで殺されかけて堪るか……。そっちにオレの知り合いがいんだろ。邪魔すんぞ」
「……サン?」

 入口を半分くらい塞いでいる氷を器用に避けながら、サンは基地に入って来た。
「ったく……人間でこの威力って、何匹憑かせてるんだよ……」
 ぼやいているのはシルバーの氷についてだ。当のシルバーは警戒を解いたゴールドとクリスとは対照的にまだ神経を張ったままでサンの挙動を見張っている。
「ジスト、おめーの知り合いか?」
「うん。友達のサン。サン、カイトはどうしたの?」
 ゴールドに返事を返し、サンに問い掛ける。
「あー、それは後でな。うん、と……お前達がジストを助けてくれたんだな?」
「ええ、まぁ……」
「礼を言う。森の中に放り出す事になったから心配してたんだ。んでさ、折角だからついでに近くの『村』にまでこいつ送ってやってくんねぇか?」
「! サン、どういうことだよ!?」

*****
 長いから休憩。なんか文章になってませんね。初めは『間引き』の説明にするはずだったんだけどな……。

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