小説置き場。
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夜に森から走って帰るカイトと、パソコンをいじくってるカイト。
思っていたよりも遅くなってしまった。
念のためと持ち出しておいた懐中電灯で辺りを照らしながら、カイトは走った。
日はもう半分も暮れてしまって、東の空はすっかり夜の化粧をしていた。
北も、南も。どんどん暗くなる。近道をして森に入ったのが間違いだった。
森はもう夜のようだった。
コラッタたちが活動を始めていた。踏んづけたら大変なことになる。懐中電灯の光を当てるなどもってのほかだ。
カイトは走っていると木に腕をぶつけてしまった。岩みたいに木が硬くて、腕がじんじんする。
通り過ぎた後ろのほうで、がさごそと木が動いた。
ウソッキーか、と思いながらもカイトは走る。謝ってる暇なんてなかった。
夜の森は昼とは全然違う姿を見せていた。
見通しが悪い上に月の光さえも入ってこない。完璧ともいえる暗闇の中、夜行性のポケモンの瞳が爛々と輝いている。
町までの方角が分からなくなってきた。
今走っている方向で正しいのか、不安になってくる。
と、カイトの思考が別のところへ飛びかけた頃、太陽は完全に沈んでいた。
「うわっとっとっと…危なー」
木の根に躓いて手から離してしまった懐中電灯を探す。
電源が切れてしまったのか、光は見えてこなかった。
辺りは真っ暗。何も、見えない。
自分が今現在この場所にいるのかどうかさえ疑問に思えてくるほど、辺りは暗かった。
カイトは何もしないで突っ立っていた。
カサカサっと、隣の茂みから音がして、急にカイトは目を覚ました。そうだ、帰らないと。
目もずいぶんと夜目が聞くようになって、はっきりとはしないが辺りが見えてきた。
前を少し見上げると、大きな満月が木の葉に切り取られながら輝いていた。
「どこだろう、ここ…」
もうすっかり夜は更けていた。殆ど手探りで見つけた懐中電灯は、スイッチを入れても明かりが点かなかった。
いい加減お腹が空腹を訴えてきて、他のことが考えられなくなってくる。
ふと、ポケットに入れておいた木の実のことを思い出して、迷わずに口に含んだ。
強烈にまずかった。
無理やり覚醒させられた意識で、そういえば『にがいきのみ』だったなぁと思い出す。
あまりにも体が受け付けなくて、カイトは木の実を吐き出した。正直言って勿体無い。
なんとなく、ポケモン研究者である母が研究所のポケモンたちに無理やりこの木の実を与えていたのを思い出した。
そんなカイトの前に、膝丈くらいの丸っこい生き物が落ちてきた。
「わわっ、なんだよ!」
「ホー?」
否、落ちてきたのではなく飛んできた、ようだ。
* * * * * *
カタカタカタ、カタカタ、カタカタ
薄暗い部屋の中で、ノートパソコンのディスプレイの光が辺りを薄っすら照らし出す。
キーボードの上でカイトの指が踊る。
部屋はまだ明るかったが、外はそうでもなかった。
日が暮れてからずいぶん時間が経った。カイトが自分のパソコンと向かい合ってからはもっと時間が経った。
ディスプレイの隅の時計を見ると、4:38が4:39に替わった。
もうすぐ夜が明ける。
「もうこんな時間か…」
カイトは呟いた。勿論、周囲の誰もが聞きとがめないような、小さな小さな声で。
ノートパソコンの低い起動音が、深夜の沈黙の中に溶け込んでいる。
壁の掛時計の秒針が、カチッ、カチッと一定のリズムを刻んでいた。
「…よし、後ちょっと。頑張ろう」
その声も部屋中に溶けて消えてなくなった。
「ふぁぁ…。おはよう、カイト」
「おはよう、サン」
「お前もう起きてたのか? 早ぇーなぁ……
………………まさか、寝てないとか?」
「うん」
「寝なくて大丈夫か?」
「母さんの手伝いとかよくやってたし、2日くらいは寝なくても平気」
「寝とけよ」
「そうしようかな…なんだか僕、眠くなってきたし」
「平気じゃねーじゃねーか」
「別に寝なくても大丈夫だけど、寝るに越したことは無いでしょ?
んじゃ、おやすみ~」
「ん。おやすみ」
「って、こんな遅くまでカイト、何やってたんだ?」
答える者はいない。
念のためと持ち出しておいた懐中電灯で辺りを照らしながら、カイトは走った。
日はもう半分も暮れてしまって、東の空はすっかり夜の化粧をしていた。
北も、南も。どんどん暗くなる。近道をして森に入ったのが間違いだった。
森はもう夜のようだった。
コラッタたちが活動を始めていた。踏んづけたら大変なことになる。懐中電灯の光を当てるなどもってのほかだ。
カイトは走っていると木に腕をぶつけてしまった。岩みたいに木が硬くて、腕がじんじんする。
通り過ぎた後ろのほうで、がさごそと木が動いた。
ウソッキーか、と思いながらもカイトは走る。謝ってる暇なんてなかった。
夜の森は昼とは全然違う姿を見せていた。
見通しが悪い上に月の光さえも入ってこない。完璧ともいえる暗闇の中、夜行性のポケモンの瞳が爛々と輝いている。
町までの方角が分からなくなってきた。
今走っている方向で正しいのか、不安になってくる。
と、カイトの思考が別のところへ飛びかけた頃、太陽は完全に沈んでいた。
「うわっとっとっと…危なー」
木の根に躓いて手から離してしまった懐中電灯を探す。
電源が切れてしまったのか、光は見えてこなかった。
辺りは真っ暗。何も、見えない。
自分が今現在この場所にいるのかどうかさえ疑問に思えてくるほど、辺りは暗かった。
カイトは何もしないで突っ立っていた。
カサカサっと、隣の茂みから音がして、急にカイトは目を覚ました。そうだ、帰らないと。
目もずいぶんと夜目が聞くようになって、はっきりとはしないが辺りが見えてきた。
前を少し見上げると、大きな満月が木の葉に切り取られながら輝いていた。
「どこだろう、ここ…」
もうすっかり夜は更けていた。殆ど手探りで見つけた懐中電灯は、スイッチを入れても明かりが点かなかった。
いい加減お腹が空腹を訴えてきて、他のことが考えられなくなってくる。
ふと、ポケットに入れておいた木の実のことを思い出して、迷わずに口に含んだ。
強烈にまずかった。
無理やり覚醒させられた意識で、そういえば『にがいきのみ』だったなぁと思い出す。
あまりにも体が受け付けなくて、カイトは木の実を吐き出した。正直言って勿体無い。
なんとなく、ポケモン研究者である母が研究所のポケモンたちに無理やりこの木の実を与えていたのを思い出した。
そんなカイトの前に、膝丈くらいの丸っこい生き物が落ちてきた。
「わわっ、なんだよ!」
「ホー?」
否、落ちてきたのではなく飛んできた、ようだ。
* * * * * *
カタカタカタ、カタカタ、カタカタ
薄暗い部屋の中で、ノートパソコンのディスプレイの光が辺りを薄っすら照らし出す。
キーボードの上でカイトの指が踊る。
部屋はまだ明るかったが、外はそうでもなかった。
日が暮れてからずいぶん時間が経った。カイトが自分のパソコンと向かい合ってからはもっと時間が経った。
ディスプレイの隅の時計を見ると、4:38が4:39に替わった。
もうすぐ夜が明ける。
「もうこんな時間か…」
カイトは呟いた。勿論、周囲の誰もが聞きとがめないような、小さな小さな声で。
ノートパソコンの低い起動音が、深夜の沈黙の中に溶け込んでいる。
壁の掛時計の秒針が、カチッ、カチッと一定のリズムを刻んでいた。
「…よし、後ちょっと。頑張ろう」
その声も部屋中に溶けて消えてなくなった。
「ふぁぁ…。おはよう、カイト」
「おはよう、サン」
「お前もう起きてたのか? 早ぇーなぁ……
………………まさか、寝てないとか?」
「うん」
「寝なくて大丈夫か?」
「母さんの手伝いとかよくやってたし、2日くらいは寝なくても平気」
「寝とけよ」
「そうしようかな…なんだか僕、眠くなってきたし」
「平気じゃねーじゃねーか」
「別に寝なくても大丈夫だけど、寝るに越したことは無いでしょ?
んじゃ、おやすみ~」
「ん。おやすみ」
「って、こんな遅くまでカイト、何やってたんだ?」
答える者はいない。
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