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小説置き場。
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長編を連載してみたいなぁ…。



 1.

 潮風に舞い踊る木の葉。
 どこまでも突き抜けた、蒼い、碧い空。
 波止場に当たる波が奏でるオーケストラ。
 道行く人々が生み出す町の喧騒に、辺りを漂う磯の香り。
 その全てを目の前のスケッチブックに閉じ込められたら、どんなにいいのだろう。

 そんなことを思いながら、僕は自分で描いた町のスケッチを見下ろした。

 出来は上々。どうせ趣味で描いてるんだから多少の下手さには目をつぶらないとね。
 さて、じゃあどれから色をつけようか。

 …こんなことを考える、この時間が何よりも好きだ。
 絵を描く、という行為をしているこの時間が。

 今日は海から塗ろうか。
 青に、ほんの少し黄を加えて。
 試しに塗って、納得いかなかったら別の色を加えて、また、試し塗り。
 うん、今度は上手くいった。

 そう、思ったその刹那、僕にとってはよく聞きなれた声がした。

「カイト、また絵描いてんのか?」

 あーあ、折角いい気分だったのに。
 彼が来るまでが絵の時間だからなぁ。



 海を臨んだ、町から少し離れた崖。
 そこで茶髪の少年が黙々と絵を描いていた。
 少年がスケッチブックに乗せた色を見て、満足そうに頷く。
 その隣に今度は黒髪の少年がやってきた。
 絵を描いている少年をじっと見やり、それからおもむろに口を開く。

「カイト、また絵描いてんのか?」
「そうだよ。
 だけど、今日はもう終わり。」

 サンが来たからね、と筆を置きながら茶髪の少年は呟いて、道具類を片付け始める。
 隣に置いてあった小さな鞄に道具類を詰め込み、膝に立てかけていたスケッチブックを片手に持って立ち上がった。

「さて―――、と。」

 茶髪の少年は手をかざして空を見上げた。
 太陽の位置はまだまだ高い。

「日が暮れるまで時間もあるし、これを家に置いたら遊ぼうか、サン。」
「よし!そう来なくっちゃっ!」

 飛び跳ねて喜んだ黒髪の少年が、いてもたってもいられない、と、茶髪の少年の手を引いて走り出した。


―――早くそれ、家に置きに行こうぜっ!

  ―――んなっ、ちょ、速いってばサン!



 ここは、地図にも載らない小さな町。
 この町の住人は、自分たちの町を便宜上、『ナナシタウン』と呼んでいた―――。

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