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小説置き場。
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▽背景設定
 シルバー・クリス→7歳
 戦争終結から9年・現在から8年前
 この時点でシルバーと契約しているのはニューラのみ。
 終戦間近になると人間は主に海沿い、ポケモンは内陸部を占領。戦争中に放棄された都市の近くの村。村から少し行けば廃墟に出るが、ポケモンの巣窟となっていて危険。村は都市に使われていた石材と、周辺の木を組み合わせて出来てる。村は内陸部のため、周囲は森。都市は放棄されてから10年以上経過。舗装された地面からも若木が生えてる感じ。子供が歩ける範囲に沢があり、水ポケモンも多数棲息。村周辺では草ポケモンや虫ポケモン、淡水系の水ポケモンや森の中にいそうな獣型ポケモン、鳥系、廃墟にはゴーストタイプとか。
 子シルバーの髪型どうしようorz 昔っから長かった、てことでいいかな?
 ヤミカラスは友達です!

▽本編

 だからやめようと言ったのに! なんで石なんて投げちゃうんだろう。やっぱりおこっちゃったじゃないの!
 盛大に文句を心の中で吐きながら、クリスは慣れない森を走っていた。前では我先にと逃げ出した友人達が走っていて、後からは水色の影がひょこひょこと子供達を追いかけまわしている。時折その水色は威嚇の水鉄砲を発射してきて、その度に子供達は悲鳴やら歓声やら(クリスは確実に悲鳴の方だ)をあげて走る速さを上げた。
 今も、クリスの視界の端で水柱が駆け抜けた。思わず後を振り返って、大きく顎を開いた水色の姿を確認すると同時にがつ、と右足に嫌な予感。ぐるんと世界が回りだして、それからすぐに肩に衝撃。クリスが足を引っ掛けた根の主も少し揺れて、葉が二枚ほど落ちていく。
 痛い。
 強かにぶつけた肩と膝と、体の下敷きになった右腕が特にじんじんする。クリスの目に涙が溜まっていく。それでも泣いている場合じゃあないと自分を叱咤して、クリスは左腕を支えにして起き上がった。もう友達の姿は見えない。置いて行かれた、そう思うと更に泣きたくなった。だがクリスには泣く間もなかった。
「だいじょうぶ?」
 突然声が降ってきた。
 クリスが顔を上げると、 枝に危なげも無く腰掛ける人影があった。きれいな赤銅色の髪に、銀色の瞳。
「シルバー?」
 するすると身軽にシルバーが降りてくる。
「はでにこけたな。立てる?」
 シルバーが座り込んだままのクリスに手を差し出す。その手を借りて、何とかクリスは立ち上がった。じんじんはする。でも、立てないほどじゃあない。礼を言おうとシルバーの方を向くと、突然スッ、とシルバーの目が細まる。唐突な変化に驚いたクリスを気にも留めずに、シルバーは彼女の後ろに立った。釣られて振り返ったクリスの目に水色の影が写った。そうだ、にげないと!
「……なぁ」
 襲い掛かろうとした水色、逃げようとしたクリスの両方が固まる。シルバーの剣呑な様子は綺麗さっぱり消えていた。
「このワニノコからにげてこけたのか?」
 この、という代名詞から何を指しているのか検討をつけ、とりあえずクリスは頷く。
「わにの、こ……?」
「こいつの種族名。どんなものでも、名前があればそんなにこわくない」
 シルバーがワニノコと呼んだ水色の前で屈む。おいで、とシルバーが呼ぶとそのワニノコは先程までクリス達を追い掛け回していたのが嘘のように大人しくシルバーの腕に収まった。彼がワニノコを検分する。その間、ワニノコは暴れもしないのを見て怖ず怖ずとクリスは近付いた。だが撫でてみようと手を伸ばすとワニノコは口を大きく開けた。
「きゃっ!」
 びっくりしてクリスは身を引いた。ぽこん、とワニノコの頭にシルバーの拳骨が落ちる。ワニノコの頭と共に上あごも下がって口が閉じられた。不服そうにワニノコが唸る。クリスはいつシルバーが噛み付かれるかはらはらしたが、シルバーは平然とうるさい、と文句を言っていた。全身を隈なく見て、ワニノコを解放する。
「それで、おまえたちはこいつに何をしたんだ?」
「ちょっと、石をなげたり、とか……」
 目線だけで呆れた、とシルバーが言う。慌ててクリスは弁解した。
「わ、わたしはやめよう、って言ったよ?!」
「止められなかったら意味がない。こけるくらいですんでよかったな。気の短いやつなら大けがだぞ」
 じぃ、とワニノコがシルバーを見上げている。シルバーがしっしっ、と手を振るとワニノコはとてとてと歩いていった。
「かえろう。歩けるか?」
「う、ん……だいじょうぶ。……あれ?」
 妙な光景を見てクリスは声をあげた。
「どうした?」
「あのワニノコ、もどってきてる」
「はぁ?」
 二人の前まで来たワニノコはそのまま通り過ぎ、しばらくして頭をきょろきょろ。それからまた戻ってきて、を繰り返す。
「どうしたのかな?」
「……まさか」
 何度目かに戻ってきたワニノコをシルバーが摘み上げる。
「かえる方向がわからなくなった?」
 そうだ、と言わんばかりにワニノコが手足をばたつかせる。
「おまえ、ポケモンだろう……」
 呆れながらシルバーはワニノコを地面に下ろし、軽く辺りを見回す。クリスにはどの方角も同じように見えたのだが、シルバーには違って見えたらしい。
「おれはこいつを沢にかえす。おまえは先に村にかえれ」
「えぇ!? あぶないよ、シルバー」
「おれはあぶなくない。おまえは早くかえって、村のみんなを安心させた方がいい。おまえをさがしにみんなが森に入ったら、それこそあぶない」
「そ、そうだけど……わたし、一人でかえれるかなぁ……」
 そっちか、と言わんばかりにシルバーが息を吐く。少し視線をさ迷わせた後、スタスタと歩いて赤い木の実をもぎ取ると、シルバーはピィーー、と指笛を鳴らした。森の中の空気がそれだけで引き締まる。程なくして、バサッ、という羽音と共に真っ黒な鳥がシルバーの腕に止まった。その鳥にシルバーがもぎ取った木の実を差し出す。それから小声で鳥に囁いていた。凄い、と純粋にクリスは思った。普通だったら逃げ出すようなポケモンと対等にやっているのだ。シルバーなら何でもできるんじゃないか。そんな事も思っていると、シルバーにおい、と呼びかけられる。
「こいつはヤミカラス。村までおまえをつれて行くようにたのんだから、ついていってかえるんだ」
 おれはこいつをおくるから、とシルバーが足に引っ付いているワニノコを指差すと、腕に止まっていたヤミカラスがバサッ、バサッと羽ばたいて少し遠くの木に止まる。それからクリスの方を向いて、促すように二度鳴いた。
「ま、まって!」
 クリスが走りだそうとして、痛みに足を止めた。それから早歩きに切り替えると、ぎこちなくも歩き始めた。なんとか無事に村には辿り着けそうな様子を見て、シルバーは反対方向に歩き出した。少しして、シルバー! と名を呼ぶ声がした。
「どうもありがとー!」
 振り返るとヤミカラスに追い付いたクリスがシルバーに手を振っている。それにシルバーは手だけを振り返すと、また沢に向かって歩きだした。その表情が、普段よりほんの少しだけ緩んでいた。

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