小説置き場。
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女装シルその2。
ドラッグストアの化粧品売場にて。
あまり迷わずに化粧品を籠に放り込むシルバーをサファイアが目撃。
「シ、シルバーさん!? どげんしてこんなとこに」
「サファイアか。見ての通り、買い物だ」
「……シルバーさんお化粧するん?」
「たまにはな」
「まるでルビーみたいやね。意外ー」
「そういうお前はルビーに何か言われたのか?」
「ち、違うったい。こないだ遊んだ時にお化粧して貰って、そん時にあいつが妙に嬉しそうやったから……お化粧した方がルビー喜ぶんか、なぁ……って」
「ルビーは幸せ者だな」
「うぅ……」
「……だがな、サファイア。お前にその色のリップクリームは合わないと思う」
「そ、そうったい?」
「色が濃すぎる。ルビーと一緒に来て選んで貰えばいいんじゃないか?」
「こげんなことルビーに言ったら笑われそうったい」
「そんなことはないだろう。好きな女が自分の為に着飾ろうとしてくれたら嬉しいもんだぞ」
「じゃあシルバーさんはゴールドさんがお化粧した方が好きなん?」
「……サファイア、あいつは男だ」
「あ、ほんとだ」
*
女装シルバー。多分潜入捜査か何か。
「あ、シル……って女か。え、ちょ、おま、シルバー!?」
「声が大きい」
「ま、マジでシルバーじゃねーの……。お前、女だったのか?」
「そんなわけないだろう、女装だ女装」
「マジかよ……女にしか見えねーぞ……胸とかどうなってんのこれ?」
「パッドだからむやみに触るな。型が崩れる」
「まぁそうだよな……勿体ねぇ」
「どうせお前のことだから胸はあった方がいいと思って盛っておいたんだがどうだ? 案外貧乳の方が好みだったか?」
「おま、胸を盛るとかそんな夢の無い事言うなって! いやもう大歓迎!」
「それじゃあ、デートしてくれる?」
「あーうん、性別とかそんなのって些細な問題だったんだなーと今実感したわ。んじゃ行くかシル。因みに演技はすんの?」
「人目があるところではな。それ以外では面倒だから残念ながら無しだ」
「いや、ギャップ萌えで逆にいいかも……」
「単純だなお前」
*
「げっ、見つかる!」
「……場慣れていないな、お前は。何の為の女装だと思ってる」
「!? シル、近い!」
「キスの一つも出来ないのかお前は」
「……シル、お前、エロすぎ…………。なぁマジで勃ってきたんだけど」
「知るか。その辺で抜いてこい」
「それさっきまでキスしてた相手に言う台詞か?」
「手伝ってやってもいいんだぞ? その方が速く済みそうだしな、お前」
「ひっ……怖すぎて萎えましたお姉様……」
「分かればいい。行くぞ、ゴールド」
*
「てゆーかさ、シルバー。何でオレ指名だったの?」
「不満か?」
「いやいや全っ然! でも気になんじゃん、どう考えたってオレ足手まといだし」
「だからだ。足手まといの自覚があるのはいいが、いつまでもそのままでいられては困る」
「……なぁ、それだけ?」
「さぁな。教えてもらいたければ結果を出す事だ」
*
血に塗れた彼を助けてしまった瞬間から、こうなる事は分かっていたのだけれど。
「刺した時の感覚がさぁ……忘れられないんだよ。もう二度とやりたくねぇって思ってたのに、一度刺しちまったら前の時の事も一緒に思い出してきやがんの。別に嫌とも思わなかった、オレ。初めての時はあんなに吐いたのに、もう何とも思わねぇの。気持ち悪ぃ。オレはひとをころしたのに。なのに何とも思っちゃいねぇ」
俺に背を向けて延々とゴールドは喋り続ける。それが遠回りな俺への非難に聞こえるのは、紛れもなく罪悪感があるからだろう。――俺は、ゴールドに人を殺させた。その結果こうなる事も、予想は付いていた。
「なぁシルバー」
「なん、だ」
けれども、こちらを振り向いたゴールドの、その暗い瞳に射抜かれるだけで呼吸も止まりそうになるだなんて、思ってもみなかったんだ。絶望に染まったその昏い瞳を、よりにもよって美しいだなんて思ってしまうなんて。そしてゴールドが俺に縋り付くしかないという事実に、俺は悦びさえ感じていている。
「やっぱりオレは人殺しだな」
「ああ。俺もお前も殺人者だ」
「でもお前はオレを救ってくれた」
「矛盾することではないだろう」
ドラッグストアの化粧品売場にて。
あまり迷わずに化粧品を籠に放り込むシルバーをサファイアが目撃。
「シ、シルバーさん!? どげんしてこんなとこに」
「サファイアか。見ての通り、買い物だ」
「……シルバーさんお化粧するん?」
「たまにはな」
「まるでルビーみたいやね。意外ー」
「そういうお前はルビーに何か言われたのか?」
「ち、違うったい。こないだ遊んだ時にお化粧して貰って、そん時にあいつが妙に嬉しそうやったから……お化粧した方がルビー喜ぶんか、なぁ……って」
「ルビーは幸せ者だな」
「うぅ……」
「……だがな、サファイア。お前にその色のリップクリームは合わないと思う」
「そ、そうったい?」
「色が濃すぎる。ルビーと一緒に来て選んで貰えばいいんじゃないか?」
「こげんなことルビーに言ったら笑われそうったい」
「そんなことはないだろう。好きな女が自分の為に着飾ろうとしてくれたら嬉しいもんだぞ」
「じゃあシルバーさんはゴールドさんがお化粧した方が好きなん?」
「……サファイア、あいつは男だ」
「あ、ほんとだ」
*
女装シルバー。多分潜入捜査か何か。
「あ、シル……って女か。え、ちょ、おま、シルバー!?」
「声が大きい」
「ま、マジでシルバーじゃねーの……。お前、女だったのか?」
「そんなわけないだろう、女装だ女装」
「マジかよ……女にしか見えねーぞ……胸とかどうなってんのこれ?」
「パッドだからむやみに触るな。型が崩れる」
「まぁそうだよな……勿体ねぇ」
「どうせお前のことだから胸はあった方がいいと思って盛っておいたんだがどうだ? 案外貧乳の方が好みだったか?」
「おま、胸を盛るとかそんな夢の無い事言うなって! いやもう大歓迎!」
「それじゃあ、デートしてくれる?」
「あーうん、性別とかそんなのって些細な問題だったんだなーと今実感したわ。んじゃ行くかシル。因みに演技はすんの?」
「人目があるところではな。それ以外では面倒だから残念ながら無しだ」
「いや、ギャップ萌えで逆にいいかも……」
「単純だなお前」
*
「げっ、見つかる!」
「……場慣れていないな、お前は。何の為の女装だと思ってる」
「!? シル、近い!」
「キスの一つも出来ないのかお前は」
「……シル、お前、エロすぎ…………。なぁマジで勃ってきたんだけど」
「知るか。その辺で抜いてこい」
「それさっきまでキスしてた相手に言う台詞か?」
「手伝ってやってもいいんだぞ? その方が速く済みそうだしな、お前」
「ひっ……怖すぎて萎えましたお姉様……」
「分かればいい。行くぞ、ゴールド」
*
「てゆーかさ、シルバー。何でオレ指名だったの?」
「不満か?」
「いやいや全っ然! でも気になんじゃん、どう考えたってオレ足手まといだし」
「だからだ。足手まといの自覚があるのはいいが、いつまでもそのままでいられては困る」
「……なぁ、それだけ?」
「さぁな。教えてもらいたければ結果を出す事だ」
*
血に塗れた彼を助けてしまった瞬間から、こうなる事は分かっていたのだけれど。
「刺した時の感覚がさぁ……忘れられないんだよ。もう二度とやりたくねぇって思ってたのに、一度刺しちまったら前の時の事も一緒に思い出してきやがんの。別に嫌とも思わなかった、オレ。初めての時はあんなに吐いたのに、もう何とも思わねぇの。気持ち悪ぃ。オレはひとをころしたのに。なのに何とも思っちゃいねぇ」
俺に背を向けて延々とゴールドは喋り続ける。それが遠回りな俺への非難に聞こえるのは、紛れもなく罪悪感があるからだろう。――俺は、ゴールドに人を殺させた。その結果こうなる事も、予想は付いていた。
「なぁシルバー」
「なん、だ」
けれども、こちらを振り向いたゴールドの、その暗い瞳に射抜かれるだけで呼吸も止まりそうになるだなんて、思ってもみなかったんだ。絶望に染まったその昏い瞳を、よりにもよって美しいだなんて思ってしまうなんて。そしてゴールドが俺に縋り付くしかないという事実に、俺は悦びさえ感じていている。
「やっぱりオレは人殺しだな」
「ああ。俺もお前も殺人者だ」
「でもお前はオレを救ってくれた」
「矛盾することではないだろう」
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