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※金+晶かつ銀+晶
学生設定、銀は転校生で金とか晶とかと仲良くなったばかり
窓から覗いた空は見事に鈍色だった。
「天気予報、外れたかなぁ」
家を出るときから曇っていたのだけれど、荷物も多かったし、傘を取りに部屋に戻るのも面倒だったし、で結局傘は持たないで学校に来たのだ。多分晴れる、って自分に言い聞かせて。
でもやっぱり、そう都合良くはいかないらしい。
天気はどんどん下り坂へ。今日は生徒会の用事があるから、それが終わるころだけでも雨が降らないでほしいのだけれど。ちょっとお天道様に祈ってみる。
*
やっぱり雨は降った。
下足室の扉の向こうは雨粒のおかげで少し見通しが悪くなってる。人一人いない運動場は、でも荒れていた。ついさっきまで、雨の中サッカー部が練習していたのだから当たり前のことではあるのだけれど。
さて、帰ろう。
意を決して下足室の扉を押しあけていると、後ろから声がかかった。
「あれ、クリスじゃん。帰んのか?」
ゴールドだ。振り返ると、他の部活の友人もいる。雨の中練習していたおかげか、皆ずぶ濡れだ。
「うん。傘忘れちゃって」
「あーあ。風邪引くなよ?」
言いながらゴールドは下駄箱の上に置いていた鞄を簀に下ろして、中から水筒やら傘やら筆箱やら、とにかく出せるだけ出しながらタオルやら着替えを引っ張り出している。真っ白なタオルで体を拭うと、見る間に茶色になっていた。この後で着替えるんだろう。
「先に帰るわよ?」
「おう。じゃーな、クリス。また明日」
髪を拭いていたゴールドが手を止めて私ににかっと笑ってみせた。私も手を振り返して、今度こそ雨の中飛び出した。
*
鞄は幸いながら防水性能はばっちり。まだ夏服でもないから多少濡れても透けないし、走って帰ればそんなに被害はでない……はず。
そんなことを思いながら走って通行人を追い抜かすと、呼び止められた。
「はい? ……ってシルバーじゃない。どうしたの?」
真っ黒な傘で特徴的な赤い髪が見えなかったけれど、振り返ってみればシルバーだ。もう私服に着替えて、どこに向かってるのだろう?
「夕飯の買い出しだ。……クリス、傘も差さずに歩いたら風邪を引く。使え」
一瞬何を言われたのか分からないくらいびっくりした。ゴールドを筆頭とする私の男友達の中でこんなことを言う奴はいない。きょとんとした私にシルバーが傘をかぶせると、ざあざあと雨音が傘を弾く音がした。目の前で段々と濡れていくシルバーが濡れていく。
「ってダメよ、シルバーが濡れるじゃない」
「スーパーにもビニール傘くらいは売ってるだろう」
「女子は脂肪がある分男子より寒さには強いのよ」
「俺は慣れてるから平気だ」
慣れてる、ってこの子普段どういう生活送ってるのかしら。
「使ってくれ、クリス」
シルバーは話し相手を真っ直ぐ見つめる人なのだけれど(そしてそれが時には他人に威圧感を与える)、その様子で誠実にお願いされるとどうにも断れない。いつの間にやら私の手の中にはシルバーの真っ黒な傘があって、シルバーはさっさと歩いていった。
これは今までにいなかったタイプかもしれない。