小説置き場。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何か、いる。
眼下に浮かび上がった自分の機体の影にパイロットは確信した。六方を水に囲まれたこの空間では、光は水によって徐々に拡散されてしまって、辺りに漂う淀みしか見えないはずなのだ。水圧計、水流計、残存動力源の値を確認して、パイロットは「何か」に気付かれないように少しずつ加速する。黒々としたその体に写る機体の影がどんどん小さくなっている事を視認して、パイロットは通信機の電源を付けた。途端に鳴り出す酷いノイズの中に、微かに人の声が混じっている。自分の機体番号を告げ、そしてパイロットは報告した。
――都市より西北西におよそ10km地点。「主」の存在を確認。
それを最後にして、その機体からの連絡は途絶えた。
*
整備場の扉を開くと、中はむせ返るようなオイルの臭いだった。それに嫌な顔一つせずに、否、むしろ嬉しそうな顔をして少年はその中に飛び込む。扉を挟んで左右に整然と並んでいるのは、流線形の本体の左右から翼が飛び出た機械だ。その脇で、全身を黒く汚しながら大人達が整備を行っている。そのうちの一人が整備場に入ってきた少年に声をかけた。
「よう、チビ。お勤めご苦労さん。おめぇの機体はいつもんとこだ。ノッポが待ってっからさっさと行ってやれ」
「わかった!」
PR
この記事にコメントする
カテゴリー
プロフィール
HN:
天樹 紫苑
性別:
非公開
カウンター
解析