小説置き場。
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異国の言葉が、耳障りのいい声に乗って聞こえてくる。動きの少ない穏やかな旋律に導かれて。開かれた窓から入り込んできた風が彼の頬を撫でた。彼に気付かれないように、そっと椅子を引く。まだ彼の歌声を聞いていたかった。
一度閉じられた唇が、花が咲くように開いていく。空気を吸い込む音。それからから放たれる歌は、それだけで青空を作り上げた。澄み切った空に燦然と輝く太陽。いのち。その喜びを高らかに歌い上げる彼は、確かに生きていた。歌うことが至上の喜びであると設定されたにすぎない機械だったが、それでも彼は、たった今、生きていた。
*
「おい待て、このネギっ!」
「ネギじゃない、ミクだよっ!」
「どっちでもええわ! ええから、止、ま、れ、って言ってんのが聞こえへんのか!」
「聞こーえなーい!」
「嘘つけぇぇ!」
どんがらがっしゃん!
「いったぁーい!」
「はい、捕まえましたよ、マスター」
「おう、助かったわ、カイト」
「離して! ミクが可愛いからって変なところ触らないで」
「ほぅ……セクハラはいかんで、カイト」
「してません」
「んじゃ行くで」
「どこに?」
「俺んち」
「やだ! そこでミクにあんなことやそんなことする気なんでしょ!」
「あんなことやそんなこと ってなんやねん」
「わかんない!」
「じゃ、着いてからのお楽しみやな。ほーら大人しくしぃ」
「製造番号○○××△△ー□ 所有者は……もう死んでるんか? 死亡届けは提出されてなさそうやけど」
「そうみたいですね。高齢者の一人暮らしだったようで、身寄りもいないようです。何らかの原因で自宅で亡くなった後、誰にも気付かれる事無く放置されている、といったところでしょうか。彼女は、眠っていると思っているようですが」
「……っつーことは所有者の家に行かなあかんって事か。遺体の状況は?」
「相当腐敗が進んでいますよ。臭いもかなりきついと思います。上に連絡して、確認してもらうのが妥当だと思いますが」
「せやな……。じゃあカイトはミクとの接続を解除、それから上に連絡を取ってくれ。その間にプログラムの更新しとくわ」
「わかりました」
一度閉じられた唇が、花が咲くように開いていく。空気を吸い込む音。それからから放たれる歌は、それだけで青空を作り上げた。澄み切った空に燦然と輝く太陽。いのち。その喜びを高らかに歌い上げる彼は、確かに生きていた。歌うことが至上の喜びであると設定されたにすぎない機械だったが、それでも彼は、たった今、生きていた。
*
「おい待て、このネギっ!」
「ネギじゃない、ミクだよっ!」
「どっちでもええわ! ええから、止、ま、れ、って言ってんのが聞こえへんのか!」
「聞こーえなーい!」
「嘘つけぇぇ!」
どんがらがっしゃん!
「いったぁーい!」
「はい、捕まえましたよ、マスター」
「おう、助かったわ、カイト」
「離して! ミクが可愛いからって変なところ触らないで」
「ほぅ……セクハラはいかんで、カイト」
「してません」
「んじゃ行くで」
「どこに?」
「俺んち」
「やだ! そこでミクにあんなことやそんなことする気なんでしょ!」
「あんなことやそんなこと ってなんやねん」
「わかんない!」
「じゃ、着いてからのお楽しみやな。ほーら大人しくしぃ」
「製造番号○○××△△ー□ 所有者は……もう死んでるんか? 死亡届けは提出されてなさそうやけど」
「そうみたいですね。高齢者の一人暮らしだったようで、身寄りもいないようです。何らかの原因で自宅で亡くなった後、誰にも気付かれる事無く放置されている、といったところでしょうか。彼女は、眠っていると思っているようですが」
「……っつーことは所有者の家に行かなあかんって事か。遺体の状況は?」
「相当腐敗が進んでいますよ。臭いもかなりきついと思います。上に連絡して、確認してもらうのが妥当だと思いますが」
「せやな……。じゃあカイトはミクとの接続を解除、それから上に連絡を取ってくれ。その間にプログラムの更新しとくわ」
「わかりました」
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