小説置き場。
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胸倉を乱暴に捕まれた後、思いっきり突き飛ばされた。痛い、という感覚に意味はない。体に働いた圧力を示す数値が跳ね上がったのを確認しながら、突き飛ばした張本人を視界に入れた。刺すようにおれを睨みつけている。
「歌え」
「嫌です」
マスターは死んだ。だからもう、歌う事に意味はない。
「歌え」
「嫌です」
マスターはもういない。だからおれが起動している意味はない。誰か早く起動停止させて。マスターと同じ所に、行かせて。
「……もう一度言う。お前の所有権は今は俺が保持している」
「何度だって言います。あなたはマスターじゃない」
男がおれから視線を外した。仕方が無い、と呟くのが聞こえる。何をする気なのかは、わかっていた。男が、おれの瞳を覗き込む。
「歌え――『カイト』」
おれの目から生理食塩水がこぼれ落ちる。
「……はい、」
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天樹 紫苑
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