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小説置き場。
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設定としては現実世界からクリミア大陸にトリップした女子高生主人公。
FEは蒼炎・暁はプレイ済み。
一応オタクだけどあんまりギャグにはなりません。文中では名前が愛沙(あいさ)になってます。ビバ適当。
サブ主人公として現地男主人公も。
こっちは第四の鳥翼の種族の梟の民。細かい設定は前のを参照。

とりあえず序章。この設定で原作沿い書きたいなぁ……

**********


 頭がふわふわする。ここはどこだろう。暗い。何も見えない。静かだ。いや、虫の声がする。鳥の鳴き声がする。草を踏み分ける、音がする。
 どうして?
 音が、止む。私は歩いていたのだろうか。見上げると、木の陰が僅かに判る。ここは、森?



 クリミア大陸西部には、広大なガリアの樹海が広がっている。その中を一人の少女がふらふらと歩いていた。時刻は獣も寝静まる真夜中。少女は白いブラウスの上からベージュのカーディガンを羽織り、その上から更に紺色の上着を羽織るというこの世界では些か見慣れない格好をしていたが、それを違和感なく着こなしていた。襞の入った上着と同じ色のスカートを穿いた彼女は、くたびれた黒の革靴で無造作に網を張るかのように広がった巨木の根を踏み越えていた。
 その少女が、ふと足を止める。
 ゆっくりと緩慢な動きで葉の隙間から覗く空を見上げた彼女は、そのままたっぷりと深呼吸できるほどの間を置いて、ぽつりと呟いた。
「ここ、どこ?」
 その声は確かに周辺の空気を揺らし――そしてそのままガリアの樹海に吸い込まれていった。



「ここ、どこ?」
 思わず疑問がそのまま口に出た。答えが帰ってくるとは思っていない。辺りは暗くてほとんど見えないが、“ほとんど”――つまりは多少は見えた。その視界の全てが木で覆われている。それも一人では抱えることができなさそうな大木ばかりだ。見上げるとばらばらにちぎれた星空がうるさいほどに瞬いていた。地面は僅かばかりの下草と根だけだ。一通り見回して、とりあえず視線を元に戻す。その瞬間、私の心臓は跳ね上がった。
 虚空に浮かぶ、二つの弱い光。
 動物だ。こんなに暗いなかで、じっと私を見つめている、その目が星明りを映して輝いている。逃げ場を求めて右足が後ろに下がる。先ほどまではまるで気にならなかった小枝を折る音がやけに大きく聞こえた。汗が止まらない。とにかく不気味なのと、食い殺されるという恐怖がごちゃ混ぜになってとにかく怖い。左足を本能のおもむくままに無意識に下げて、その刹那意識が止まる。気がついたら私は凄い音を立てて地面に座り込んでいた。
 一瞬の間地球が自分を中心に縦に一回転したんじゃないかと思うくらい混乱し、そして痛みを訴える足首によって自分は木の根に足を取られて後ろに転んだのだと理解した。視界には、四つの小さな光の点。
(増えた!?)
 慌てて首を振ると周囲をぐるっと取り囲まれていた。あまりにも物語でありそうな展開に涙よりも乾いた笑いがこぼれそうだ。だが現実でこんなことがあっては堪らない。怖すぎて死んでしまいそうだ。だとしたら死因は何? 恐怖死? 思考回路が現実を拒絶する間にも、心臓の音だけががとにかくやかましい。
(襲うならさっさと襲いなさいよっ!)
 やけになって叫んだ。声は全く出なかった。怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいこわい! 恐怖が臨界点を越えようとしたとき、沈黙を保っていた森が鳴いた。

 ほー。

 オカリナのような優しい音色だった。
 あまりにも突然すぎて私が恐怖心も忘れてきょとんとしている間にも、音色は続く。歌うように。しばらくしてそれが止むと、私は一人森の中に取り残されていた。沢山見えていた光が悉く消えている。あまりにもそれは急な変化すぎて、私はすっかり消えてしまった恐怖心の行方を不思議に思っていた。
「立てるか? お前」
 唐突にどこからともなく聞こえてきた声に私は辺りを見回した。先ほどまでと変わらず木しか見えない。木が喋った?
「違う違う。上だ」
 なんとなく投げやりともとれるような適当な言葉の通りに上を見上げると、私の左足を引っ掛けた根の主の枝に人影が座っている。
「で、立てるか? 歩けるか?」
 言われたままに立ち上がろうとして、足に力が面白いくらいに入らない。あれ、と思って再び立ち上がろうとしても足は微動だにしなかった。
「動かない」
「あー、腰を抜かしたか」
 言われてみてこれが『腰を抜かす』ということなのか、と納得して頷いた。
「多分」
「そんじゃ仕方がない、っか」
 ほんの少し風が動いて頭上の気配が急に消えた。変わりに目の前に人影が見える。
 手が、差し出される。
「ほら、捕まれ」
 私はその手を取った。

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