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小説置き場。
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初めは下のでいこうと思うんだが…そこからどうするかが決まらない。
設定が複雑すぎるんだよねぇ。
やっぱり時間を追ったほうがいいのか?


 #00 

 今まで散々歴史に介入した神を倒したことによる、歴史の修復作用。これで一度全てはなかったことになる。アレク達の旅も、十八年前の騒乱も。
 ハロルド、ナナリーと続いてアレクの周囲が光り輝く。次の番は彼らしい。カイルが思わず、という風にアレクの名を呼んだ。
「カイル。ロニ。お前らに別れの言葉はいらないな。また、後でな。んで、ジューダス」
 呼びかけると、仮面の向こうからこちらを見ている紫紺の瞳とかちあった。何度名前が変わっても、世間からどんなに批難されても、アレクの「親友」のポジションは今も昔も彼だけだ。
「二十八年前にまた出会おう」
 随分妙なことを言ってるな、とアレクは苦笑した。それでも彼はこの一言で分かってくれるはずだ。その答えを聞く間もなくアレクの体は光に包まれる。


 夢であるように瞳を閉じてあの日を思う
 君との日々は等身大の僕だった
 いつか描いてた未来へもう一度歩き出そう
 たとえすべてを失っても何かが生まれると信じて

 

 ――そうして彼は目覚める。


------------------------------------------------------------

「――アレク、いい加減に起きろッ!」
 ああ、なんかうるさい。アレクはぼんやりとそう思った。実際にはかなりの声量で怒鳴られているのだが、まだ活動を始めていない脳ではそれも聞こえない。布団の中のぬくもりがアレクをまた眠りに誘う。すると不思議なことに周囲のうるささなど全く関係なくなるのだ。さぁ、また夢の続きを――そう思っていたときにアレクは身の危険を感じて素早く寝返りを打った。ベッドのクッションが自分の体重以外の何かで沈む。アレクの体に掛かっていた布団が急にアレクを圧迫しはじめた。何か重たいものが乗っている。なんだこれは? アレクの脳が徐々にはたらきだす。まどろみから抜け出すとアレクは至近距離での晶力反応を感じた。晶術? 誰の? リオンの。
 ……リオン!?
 アレクの脳が完全覚醒した。今までの眠気が一気に吹き飛ぶ。掛け布団に乗っかっていた石を布団ごと跳ね飛ばして起き上がる。痛いくらいの視線を感じた。怖い。だが、振り向かないと余計に後が怖い。ギギィーッという音を立てながらアレクはギクシャクとした動きで視線の方を見やった。恐る恐るそれを視界に入れると、刺すように紫紺色が飛び込んでくる。
「オ、オハヨウゴザイマス」
 確実に怒っている。かなり怖い。自然と声が引き攣った。紫紺色の持ち主は未だアレクを睨んだままだ。その端正な顔立ちが怒りに染まっているのがわかる。それでも同性と知りつつも見とれてしまうほどの美しさだ。だが、実際にそんなことをしてしまったらあっと言う間に彼の顔には似合わない強烈な舌鋒を食らうことになる。
(なんで朝っぱらからこんなに機嫌が悪いんだよ!?)
 自分の寝起きの悪さを棚に上げてアレクは心の中で悲鳴を上げた。おそらくはヒューゴ様に嫌味でもいわれたのだろう。
 機嫌が悪いリオンの相手はアレクが担当する、ということがこの屋敷では暗黙の了解となっている。アレクがいないときは黙ってマリアンにプリンを作ってもらうのがお約束だ。どちらもいない場合は…極力近寄らないようにする、のだろうか。確実に食事に人参が使われることはないだろう。リオンも苛立っているときの自分が周囲を怖がらせるということは理解しているので大抵ひとりでいる。が、それではいつになっても機嫌が直らないのでアレクがちょっかいをかけるのだ。ポイントはアレクが、である。リオンから近寄ってくることはまず、ない。それがどうして目の前にいるんだ。
「僕は今機嫌が悪い」
 そんなことは見ればわかる、という言葉を辛うじて飲み込む。そんなことを宣言するリオンの理不尽さにはとっくに慣れた。そして下手に突っ込むともっと酷い目にあうことにも。なんだかんだ言って彼もお坊ちゃまなのだ。
「潰されたくなければさっさと用意をしろ」
「は…? 用意?」
 思わずアレクの口から疑問が零れ落ちた。何の用意か全くわからない。
「今日が参内の日だということを忘れたのか、この大馬鹿者が!」
 屋敷中にリオンの怒号が響き渡った。そしてアレクは悟る。リオンのこの不機嫌さの原因は、間違いなく自分だということに。

 

 ぱたぱたと廊下を歩く足音がする。
「夢…か」
 最近と言うには昔過ぎて、昔と言うには最近過ぎる――そのくらいの朝の記憶だろう。アレクは今が現実であることを確かめるかのように瞬きを繰り返した。思わず晶力反応を確かめてしまって、当然それが無いことを確認する。自分が寝ている隣に晶術を放たれて起こされる、というなんとも攻撃的な起こされ方をしたのはあの日が最初で最後だ。あれからは自分でも、用事がある日はちゃんと起きるようにしている。今日のように何も無い日は、寝るに任せて寝っぱなしだ。アレクの寝汚さはこの屋敷に住む人間には有名で、もう誰も起こそうとはしない。
(とりあえず顔洗って、歯磨いて朝ご飯を食べよう)
 のそのそとアレクは寝台から起き上がった。

 ――暇だ。
 朝食を摂り終わり、立ち上がったアレクが真っ先に思ったのはそのことだった。普段ならばリオンの任務にくっついていっているのだが、この前の任務で足を負傷してしまったためにそれができない。

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