小説置き場。
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「お前、院は行かねーの?」
「せやな。俺は研究者なりたいんとちゃうし。別に一人でも何とかなるからなぁ」
「そりゃあお前の頭脳があればなんとでもなるだろうよ。既に特許で一生遊んで暮らすだけの金は入ってくるんだろ?」
「研究して暮らすには余りにも少ない金額やけどな。まぁ、お前らがおもろい開発してくれんのを期待してるわー」
「はぁぁ。勿体無い。折角のその頭を、ボカロの発展に使う気はないのか?」
「ないな。てか、そんなん別に院におらんくてもできるやん」
「そりゃあお前だったらな! もう勝手にしろ!」
「? 何をそんなに怒ってるんや?」
*
「研究室で所有しているボカロは3体。初音と神威と巡音やな。あと学生が所有してるのが鏡音二体と咲音。とりあえず、そいつらと顔合わせしに行くで」
「咲音っていうのはMEIKOシリーズということですか?」
「せや。研究室のボカロは苗字で呼ぶのが習慣になっとるから、おまえやったら始音か」
「それってKAIKOの名字なんですけど……」
「今更そんなん気にする奴おらんって」
「……気にしてるのはおれなんじゃ?」
「それもそうか。…………ま、気にすんな!」
「はぁ……」
*
「んで、用件は神威が調子悪いからカイトに来てほしいと、そういうわけやな?」
「そうなんだよ。頼む! な?」
「日数×5万やな」
「はぁ!? なんでだよ」
「カイトと俺のレンタル料やと思えば安いもんやろ」
「なんでお前まで来んだよ」
「俺がカイトを一人で行かせるとでも? お前らのところに? 何されるかわかりゃしない」
「お前って昔からそうだよな。研究者が綺麗事言ってどうすんだよ」
「俺の知識欲は他人に無理強いしてまで必要な欲じゃあないんでね」
「悪かったな」
「何かを知りたいと思うのは悪いこととはちゃうやろ」
「じゃあ始音よこせ」
「断る。カイトが嫌がっとるし、あいつは俺のもんでかつ俺が嫌や」
*
おれはアンドロイドだから、先に寝とけ、と言われてしまうと逆らうことはできない。でも放っておくとマスターは寝ることも食べることも忘れて作業に没頭してしまうから、起床時間はできるだけ早めに設定しておいた。只今午前三時。我ながら自分の設定を褒めてやりたい。マスターは机に突っ伏して寝ていた。
「マスター。そんなところで寝ても疲れなんてとれませんよ。起きてください」
起こすのは申し訳ないけれど、でもやっぱりベッドで寝てほしい。机で寝た次の日はいつも首が痛いとマスターは言っている。軽く揺すってみたけれど、マスターはむにゃむにゃ言うだけで全然起きる気配がなかった。もう一度声をかけようとマスターの耳元に口を寄せる。
「マスター、起きてください」
次の瞬間、べしん、と頬に衝撃が走った。何が起きたのか処理をしている間に、僅かに目を開いたマスターと視線が合う。
「あ、おはようございます」
「……何や、カイト」
マスターの声は低かった。
「机で寝てもかえってしんどいだけですよ。ベッドで寝てください」
「しらん。うるさい」
「マスター、」
「起こすな、このあほ」
寝起きのマスターは機嫌が悪い。もう目を閉じてしまって、睡眠の邪魔をするなと訴えてきている。でもねマスター。おれは貴方がベッドで寝てくれればそれで満足なんですよ。だから実力行使です。
「失礼しますよ」
起こさないように耳元でマスターに囁くとまた頬に衝撃。吐息が耳にかかるのが擽ったいらしい。でもそれ以外は何もしてこないのでそのままマスターの体に手をかけた。
眠っている体の体温が暖かくて心地良い。マスターの腕をおれの首に回させて、脇の下から右腕を通す。左腕はマスターの膝の下に回してそっと椅子から持ち上げた。
軽い。平均的な男性よりもマスターは小柄だから当然と言えば当然だけれど、それでも身長と釣り合わない軽さだった。ちゃんと食べてるのかなぁと心配しながらマスターの体をベッドに下ろす。椅子のすぐ裏がベッドだから大したことでもない。それから首に回させた腕を外そうとすると、マスターがうっすら目を開いておれを見ていた。口が微かに動く。
――いかんとって。
その瞬間、無性にマスターを抱きしめたくなった。衝動のままにマスターの隣に倒れ込んでマスターの体を引き寄せる。その頃にはもうマスターは眠ってしまっていて、多分朝に起きた時には狭い、などと言いながら蹴り出されるんだろうなぁ、なんてことを考えながらおれももう一度眠った。
その衝動の名前なんて、考えもしなかった。
*
狭い。けど暖かい。でも狭い。瞼を上げると目の前に何かがあって周りが見えない。首をぐるぐる回してみて、上を見るとそこには奴の顔。
「おはようございます、マスター」
「なにしとんの、おまえ」
カイトがそこにいるということは、この狭さの原因は奴なわけで。でもカイトと寝た覚えは微塵もない。というか昨日はプログラムを書きながら寝落ちしたはずだ。
「まだ起床時刻ではありませんよ」
でもそんなことはどうでもいい。上から降ってくる声が心地良くて、半覚醒だった俺の脳は再びまどろみに落ちる。あやすように触れられる体温が俺の意識を奪っていく。ああでもこれだけは言わないと。
「せまい……」
「そうですよね。すみません、起こしてしまって」
遠くから声が聞こえる。暖かいものが離れていく。寒いのが嫌で手探りでそれを引き止めると、どこかで息を飲んだような音。
「マスター……っ、おやすみなさい」
優しい声に導かれて、今度こそ俺は眠りに落ちた。
*
最近のおれは何かがおかしい。思考が正常にはたらかない時がある。今だってそうだ。繋がれた左手。狭い、とおれの腕の中を嫌がったマスターがおれの腕を掴んでいる。それだけで何も考えられなくなる。おれの思考回路にあるのは、どうしようもなくこの人が好きだ、という当たり前の事だけ。彼はおれのマスターなのだから、好きなのは当然のことだ。でも胸が苦しい。強く抱きしめてもっと彼と触れ合って体温を分け合いたい。でもそれだけじゃあきっと足りない。おれもマスターもどろどろのぐちゃぐちゃに溶け合って、それから一つに混ざり合えば少しは満たされるんだろうか、なんて思うけどそんなことできっこない。何よりマスターを起こしてしまう。
登録解除前のカイトがこんなにマスターが好きでいいんだろうかと自問自答。
主人だから「好き」なんだと思い込んでぐるぐるしてます。
寝ているマスターが大層可愛いのですが何か路線間違ってる、よねぇ……?
*
時系列整理
基準となるアカイトとか帯人が登場する年はマスターが大学を出たその年っぽい。マスターは学部卒で院には行ってない。マスターは2年くらい飛び級してて、あやめがまだ大学生なことを考慮すると大学出てからはそんなに時間は経ってない。
カイトを購入したのは4回生の初夏くらいかなぁ。配属された研究室にも慣れてきた頃。6月下旬から7月の始めくらい。んでお互いに好きになるんだけど、お互いにどういう「好き」なのかを把握しあぐねてる。マスターはもともと機械愛! な人種だからよくわかんないし、カイトは主人だから好きなんだと思い込むし。んで冬くらいからなんかおかしくね? とお互いに思いながらもずるずると関係は続いていって、でマスター卒業。こうなると完全に二人で過ごす時間が多くなってしまって、はっきりさせようじゃないかとマスターの何かが切れる。そしてマスター登録解除。これが3月の終わりから4月にかけての頃。マスターが主人じゃなくなったカイトは自分の気持ちをはっきりと自覚するわけで、早々に告白もして押せ押せ状態。マスターはまだよくわかんなくてうろたえてて、で、最終的に腹を括るのが5月くらいですか。そこでやっとくっつく、と。
アカイト編は秋くらいにしようかなぁ。んで帯人編は冬から春あたりで。
順番を整理するはずだったのになぜ設定を積み立ててるんだかorz
上の話は
・進路の話→大学4回の春、夏? くらい
・カイトを研究室に紹介するのは4回の夏、カイトを買った直後
・カイト貸してくれの話は卒業した次の年の夏。ちなみにこの人がアカイトの前所有者……でいいや
・そのあとのマスター寝てる話は4回の秋から冬くらいの話
って感じの時間帯。ここまで細かく考えるの久しぶりだ……。
「せやな。俺は研究者なりたいんとちゃうし。別に一人でも何とかなるからなぁ」
「そりゃあお前の頭脳があればなんとでもなるだろうよ。既に特許で一生遊んで暮らすだけの金は入ってくるんだろ?」
「研究して暮らすには余りにも少ない金額やけどな。まぁ、お前らがおもろい開発してくれんのを期待してるわー」
「はぁぁ。勿体無い。折角のその頭を、ボカロの発展に使う気はないのか?」
「ないな。てか、そんなん別に院におらんくてもできるやん」
「そりゃあお前だったらな! もう勝手にしろ!」
「? 何をそんなに怒ってるんや?」
*
「研究室で所有しているボカロは3体。初音と神威と巡音やな。あと学生が所有してるのが鏡音二体と咲音。とりあえず、そいつらと顔合わせしに行くで」
「咲音っていうのはMEIKOシリーズということですか?」
「せや。研究室のボカロは苗字で呼ぶのが習慣になっとるから、おまえやったら始音か」
「それってKAIKOの名字なんですけど……」
「今更そんなん気にする奴おらんって」
「……気にしてるのはおれなんじゃ?」
「それもそうか。…………ま、気にすんな!」
「はぁ……」
*
「んで、用件は神威が調子悪いからカイトに来てほしいと、そういうわけやな?」
「そうなんだよ。頼む! な?」
「日数×5万やな」
「はぁ!? なんでだよ」
「カイトと俺のレンタル料やと思えば安いもんやろ」
「なんでお前まで来んだよ」
「俺がカイトを一人で行かせるとでも? お前らのところに? 何されるかわかりゃしない」
「お前って昔からそうだよな。研究者が綺麗事言ってどうすんだよ」
「俺の知識欲は他人に無理強いしてまで必要な欲じゃあないんでね」
「悪かったな」
「何かを知りたいと思うのは悪いこととはちゃうやろ」
「じゃあ始音よこせ」
「断る。カイトが嫌がっとるし、あいつは俺のもんでかつ俺が嫌や」
*
おれはアンドロイドだから、先に寝とけ、と言われてしまうと逆らうことはできない。でも放っておくとマスターは寝ることも食べることも忘れて作業に没頭してしまうから、起床時間はできるだけ早めに設定しておいた。只今午前三時。我ながら自分の設定を褒めてやりたい。マスターは机に突っ伏して寝ていた。
「マスター。そんなところで寝ても疲れなんてとれませんよ。起きてください」
起こすのは申し訳ないけれど、でもやっぱりベッドで寝てほしい。机で寝た次の日はいつも首が痛いとマスターは言っている。軽く揺すってみたけれど、マスターはむにゃむにゃ言うだけで全然起きる気配がなかった。もう一度声をかけようとマスターの耳元に口を寄せる。
「マスター、起きてください」
次の瞬間、べしん、と頬に衝撃が走った。何が起きたのか処理をしている間に、僅かに目を開いたマスターと視線が合う。
「あ、おはようございます」
「……何や、カイト」
マスターの声は低かった。
「机で寝てもかえってしんどいだけですよ。ベッドで寝てください」
「しらん。うるさい」
「マスター、」
「起こすな、このあほ」
寝起きのマスターは機嫌が悪い。もう目を閉じてしまって、睡眠の邪魔をするなと訴えてきている。でもねマスター。おれは貴方がベッドで寝てくれればそれで満足なんですよ。だから実力行使です。
「失礼しますよ」
起こさないように耳元でマスターに囁くとまた頬に衝撃。吐息が耳にかかるのが擽ったいらしい。でもそれ以外は何もしてこないのでそのままマスターの体に手をかけた。
眠っている体の体温が暖かくて心地良い。マスターの腕をおれの首に回させて、脇の下から右腕を通す。左腕はマスターの膝の下に回してそっと椅子から持ち上げた。
軽い。平均的な男性よりもマスターは小柄だから当然と言えば当然だけれど、それでも身長と釣り合わない軽さだった。ちゃんと食べてるのかなぁと心配しながらマスターの体をベッドに下ろす。椅子のすぐ裏がベッドだから大したことでもない。それから首に回させた腕を外そうとすると、マスターがうっすら目を開いておれを見ていた。口が微かに動く。
――いかんとって。
その瞬間、無性にマスターを抱きしめたくなった。衝動のままにマスターの隣に倒れ込んでマスターの体を引き寄せる。その頃にはもうマスターは眠ってしまっていて、多分朝に起きた時には狭い、などと言いながら蹴り出されるんだろうなぁ、なんてことを考えながらおれももう一度眠った。
その衝動の名前なんて、考えもしなかった。
*
狭い。けど暖かい。でも狭い。瞼を上げると目の前に何かがあって周りが見えない。首をぐるぐる回してみて、上を見るとそこには奴の顔。
「おはようございます、マスター」
「なにしとんの、おまえ」
カイトがそこにいるということは、この狭さの原因は奴なわけで。でもカイトと寝た覚えは微塵もない。というか昨日はプログラムを書きながら寝落ちしたはずだ。
「まだ起床時刻ではありませんよ」
でもそんなことはどうでもいい。上から降ってくる声が心地良くて、半覚醒だった俺の脳は再びまどろみに落ちる。あやすように触れられる体温が俺の意識を奪っていく。ああでもこれだけは言わないと。
「せまい……」
「そうですよね。すみません、起こしてしまって」
遠くから声が聞こえる。暖かいものが離れていく。寒いのが嫌で手探りでそれを引き止めると、どこかで息を飲んだような音。
「マスター……っ、おやすみなさい」
優しい声に導かれて、今度こそ俺は眠りに落ちた。
*
最近のおれは何かがおかしい。思考が正常にはたらかない時がある。今だってそうだ。繋がれた左手。狭い、とおれの腕の中を嫌がったマスターがおれの腕を掴んでいる。それだけで何も考えられなくなる。おれの思考回路にあるのは、どうしようもなくこの人が好きだ、という当たり前の事だけ。彼はおれのマスターなのだから、好きなのは当然のことだ。でも胸が苦しい。強く抱きしめてもっと彼と触れ合って体温を分け合いたい。でもそれだけじゃあきっと足りない。おれもマスターもどろどろのぐちゃぐちゃに溶け合って、それから一つに混ざり合えば少しは満たされるんだろうか、なんて思うけどそんなことできっこない。何よりマスターを起こしてしまう。
登録解除前のカイトがこんなにマスターが好きでいいんだろうかと自問自答。
主人だから「好き」なんだと思い込んでぐるぐるしてます。
寝ているマスターが大層可愛いのですが何か路線間違ってる、よねぇ……?
*
時系列整理
基準となるアカイトとか帯人が登場する年はマスターが大学を出たその年っぽい。マスターは学部卒で院には行ってない。マスターは2年くらい飛び級してて、あやめがまだ大学生なことを考慮すると大学出てからはそんなに時間は経ってない。
カイトを購入したのは4回生の初夏くらいかなぁ。配属された研究室にも慣れてきた頃。6月下旬から7月の始めくらい。んでお互いに好きになるんだけど、お互いにどういう「好き」なのかを把握しあぐねてる。マスターはもともと機械愛! な人種だからよくわかんないし、カイトは主人だから好きなんだと思い込むし。んで冬くらいからなんかおかしくね? とお互いに思いながらもずるずると関係は続いていって、でマスター卒業。こうなると完全に二人で過ごす時間が多くなってしまって、はっきりさせようじゃないかとマスターの何かが切れる。そしてマスター登録解除。これが3月の終わりから4月にかけての頃。マスターが主人じゃなくなったカイトは自分の気持ちをはっきりと自覚するわけで、早々に告白もして押せ押せ状態。マスターはまだよくわかんなくてうろたえてて、で、最終的に腹を括るのが5月くらいですか。そこでやっとくっつく、と。
アカイト編は秋くらいにしようかなぁ。んで帯人編は冬から春あたりで。
順番を整理するはずだったのになぜ設定を積み立ててるんだかorz
上の話は
・進路の話→大学4回の春、夏? くらい
・カイトを研究室に紹介するのは4回の夏、カイトを買った直後
・カイト貸してくれの話は卒業した次の年の夏。ちなみにこの人がアカイトの前所有者……でいいや
・そのあとのマスター寝てる話は4回の秋から冬くらいの話
って感じの時間帯。ここまで細かく考えるの久しぶりだ……。
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