小説置き場。
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「あなたでしょう、カイト先輩をたぶらかしてるのは!」
「返してよっ! カイト先輩を、返して!!」
「っ……」
カイトが好きだという女の子達が、声高に、声を震わせながら俺を詰る。
言葉に、ならなかった。カイトを好いている人間は多かった。そのことをすっかり失念していた。俺は俺と出会ってからのあいつしか知らないが、俺と出会う前に聞いた噂では人当たりがよくて、誰にでも分け隔てなく優しい人間だった(要するに、本人も騙されるくらいに猫を被っていたということだが)。それが今では、自惚れでも何でもなく、あいつは俺以外はどうでもよくなってる。それは酷くいびつな事だが、俺はそれに気付かない振りをしていた。俺だけに向けられる真っ直ぐな好意を、心地好く感じていたから。俺は目の前にいる女の子達ほど、強くカイトを想っているわけじゃあない。それなのに、カイトは俺だけを見る。それが彼女達をどれだけ傷付けたのだろう。
返す言葉がない。黙り込んだ俺を、女の子達がキッと睨みつける。
「あんたなんか、いなくなればいいのよっ!」
その声を皮切りとして、急速に辺りの魔力が膨らんだ。『怒り』を共有した彼女達の魔力が互いを増幅しあい、そのまま俺にとんでくる。避ける事はできるだろう。でも俺は、一発くらい痛い目にあった方がいいんじゃないのか……? そう思うと、立ち尽くす事しかできなかった。
が、衝撃はいつになっても来なかった。
「何、してるんですか? ねぇ……」
俺の目の前に立つ人影。俺の"従者"は"主人"の身の危険を察知して文字通り飛んできたらしい。やばい、完全にキレてる。止めないと危ないかもしれない。
カイトは俺の"従者"になった。そういう能力を潜在的に持っていたらしい。とにかく、俺に害を成すものには問答無用で排除にかかる。何度も言うがそういう能力らしい。つけられた名前は"隷従"。反吐がでるくらいに分かりやすい。
「カイト先輩っ! そんな奴に、騙されたらダメですっ!」
「目を覚ましてくださいっ!」
「いつもの優しい先輩に、戻ってください!」
カイトに完全に敵と見做した視線で見られているであろうに、女の子達は怯みもしない。恋とはすごい。俺ならとうに尻尾を巻いて逃げ出してるだろう。
「何してるんですかと、聞いてるんです」
カイトの冷え切った声に、流石の女の子達も黙り込む。俺もほう、と息を吐いた。さっきの狂気に近い気配は消えてる。何も言わない女の子達にカイトが溜息をついた。
「この人は、」
カイトが後ろを振り返って俺を引っ張る。無理矢理隣に立たされた俺に、カイトはふんわりと笑いかけてきた。腕を腰に回されて隣に引き寄せられる。
「おれの大切な人です。だから絶対に、傷付けるような真似はしないで」
静かに、真剣にカイトは告げる。その手が微かに震えてたのに気付いたのは俺だけだろう。短いようで長い沈黙の後、女の子の一人が尋ねる。
「先輩は、その人が好きなんですか?」
「うん。世界で一番、誰よりも」
震えるのを抑えたような声に、カイトははっきりと即答した。それきり、誰も何も言わない。
行きましょうか、とカイトが零した。一つ頷いて俺達はその場を離れた。
*
起 青主出会い・学園や世界観の設定の説明
青主出会い話
承 だんだんきな臭くなってくる
学園の闇を垣間見たり、千景が実力を隠すわけとか、外国が準備をしているとの噂を聞いたり
転 外国の進攻・戦争開始
戦闘・千景が学園に味方する理由
結 戦争集結・Sクラスになっちゃったよ千景
*
「忘れたのか? 入学の時の契約書を。あれの中には『有事の際は学園の為に持てる力を奮う事』とあっただろうが」
「そう言われると、そんな気もしますね」
「あれは自分の血を使った、立派な魔導契約だぞ! 普通の書面での契約書と違って、破った時には確実にそれなりの代償が求められる。まぁ、大した対価ではないだろうけどな……」
「果たして、この学園の『卒業生』ってのは実際にはどのくらいなんだ?」
「あ」
「卒業試練を合格しない限りは卒業とは扱わない。つまり、この大陸に散らばっているこの学園卒業者は学園に敵対する事ができない。……実質、誰も逆らえないんだよ、学園には。だからこその中立、だ。
「戦うんですか……?」
「ああ。俺は、きな臭いところがあったとしても東大陸の安定の為に学園は必要だと思うしーー好きだからな、ここが」
*
・青主
・極力恋愛色は薄め
・赤がいない頃の話
・(赤が来るのは卒業した年の秋・青主が成立するのは5月頃)
・ボカロ屋の主人から話を回してもらう。
・↑実は副業で何でも屋みたいなことをしている? というか仲介屋のアフターケアの一環。
「俺あんたに電話番号教えてへんよな?」
「そのくらい調べるのはわけねーよ。カイトは元気か?」
「……ああ、元気やで。変わろか?」
「あー、まだでいい。そろそろ定期検診すっからカイト連れて店に顔出してくれ。検診代はとらねーし」
「別にボカロの整備くらいできんねんけど」
「いいから来い。んじゃカイトに変わってくれ」
「はいはい。おーいカイト」
「お久しぶりです。えっと、検診の連絡ですか?」
「そうだ。説明はお前がしろ。あといつ来るかは連絡入れろよ」
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