小説置き場。
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夜通し実験をしている他の研究室と違って、俺が配属された研究室はほぼ毎日ちゃんと家に帰れる。というのも研究対称であるボーカロイドに睡眠が必要だからだ。だからこそ研究室の鍵閉めという当番が発生し、それは学年が低い者が担当することになる。のだが。
「彩園寺くんいじめられてるんじゃないの? もはや鍵閉め係になってるよ」
「分かってるわ、んなこと」
研究室所有のボーカロイドの一人、初音がそう指摘するようにいつの間にか4年生の中でも俺だけが部屋の鍵を閉めることになっていた。まぁ、鍵閉めくらいどうってことないんだが。
「ん、っと……電源おっけ窓おっけ、後何か忘れてるか? 俺」
「彩園寺殿。右から二つ目の窓の鍵が閉まっておりませんぞ」
「あ、ホンマや」
同じく研究所所有の神威に言われた窓の鍵を閉める。ふと前を見ると、もうそろそろ夏至なのに窓の外は真っ暗で、窓が鏡のように研究室を映し込んでいる。俺と、初音と、神威がいることを何となく確認して、そこで俺はもう一人のボーカロイドの姿が見えない事に気付いた。
「あれ、巡音は?」
振り返って二人に尋ねる。初音が首を横に振り、
「ルカちゃんは気分が悪いからって、隣の部屋で調整してるよ」
「擬似精神が上手く作動しないと言っておられたな」
「大丈夫なんか? それ」
自己調整が必要な程人工精神の調子が悪いというのは、穏やかではない。
「うーん、それはルカちゃん次第かも。測定のストレスでダメになっちゃう子、結構多いもん」
「ダメに、って相当まずいんとちゃうんかそれ……」
「大丈夫大丈夫。測定さえなかったらすぐに元に戻るから」
「……様子見てから帰るわ。んじゃ閉めるで、この部屋」
初音と神威を研究室から出して、電気を全て消す。それから鍵をかけると、隣の部屋……もとい、ボーカロイド達の生活空間にお邪魔した。
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