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小説置き場。
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  *

 車がぎりぎりすれ違えるか、という狭さの山道を上っていく車の数は案外多かった。一台前を走っているのは左ハンドルの外車。その前には観光バスが走っている。
「意外と車通りはあるんですね」
 フロントガラスからの光景を見て、後部座席に座っていた柏木和也はぽつりと呟いた。まるで観光シーズンの登山客の群だ。和也がこみ上げる欠伸を堪えていると、バックミラー越しに運転手と目があった。
「起きたのかい、お坊ちゃん」
「……だからお坊ちゃんは止してくださいよ、運転手さん」
 和也が呆れたように言って、自分の服を見下ろした。自宅まで来て採寸されて仕立てられた制服は確かに和也の細身の体格に良く合っているが、どうにも垢抜けない。寧ろ仕立てのいいブレザーに着せられているように見える、と客観的に和也は思っていたが、その初々しさが逆に運転手の庇護欲をそそっていることには気がついていなかった。
「ところで、あとどれくらいかかりそうですか?」
「なぁに、もうすぐだよ。ここらの車の目的地はみーんな、一緒だからナァ」
 それはつまり、このタクシーも、前の外車も、その前の観光バスも、運んでいるのはこの林道の果てにある『学園』の生徒だということだ。
 この学園は、幼稚園から付属の大学までを持つ有名な私立学園だった。ほぼ中高一貫となっている中等部と高等部だけが男子校で、この二つだけはなぜかド田舎も甚だしい山中に立地している。お陰で全寮制だが、それでも一学年は十クラスを越えるマンモス校だ。そこまで人が集まるのには、この学園が数多くの著名人を社会に輩出してきた名門校だからであり、その息子達、つまりは上流階級の子息達が多数在籍するためであった。僅かでも人脈を、とこの学園に子供を入学させる中流家庭の親も多い。だが和也はその例からは漏れて、人数は少ないが手厚い奨学金と、衣食住を保証された全寮制に惹かれて編入を決めていた。
「さ、もうすぐ学園の敷地が見える。窓の外を見ててごらん」
 運転手が和也にそう告げた直後、急に左手の森が開けた。緩やかな登りは次第に下り坂に変わり、眼下に実質的な学園の敷地が広がっている。その光景を見て、和也は息を飲んだ。
 小さな異世界だった。
 おそらく、地形的には盆地となっているのだろう。周囲をぐるりと取り囲む広葉樹林の底に、空を映し込んだ湖が一つ。その湖畔に立ち並ぶのは、鮮やかな赤色に彩られた屋根の建物群だ。屋根の勾配がきついのは積雪があるからだろうか。その建物群を挟んで湖と反対側に広がっているのは、おそらく運動場だろう。きれいに敷き詰められた芝生がまぶしい。その運動場を取り囲むように並ぶ、用途がよくわからない赤い屋根の建物が、いくつも。同じ様な運動場がもう一つ、今度は青い屋根の建物に囲まれて、赤い建物達よりも奥の湖畔に広がっていた。
 正直、碌に下調べもしていなかった和也は、言葉も出せずに景色に見入る。それをバックミラーで見て、運転手が笑った。
「きれえな学校だろう」
「そう、ですね。日本じゃないみたいです」
「坊ちゃんの暮らす高等部は赤い屋根のところだよ」
「あの建物群、全部ですか? 相当な広さですね」
 後者らしき建物や、全寮制だけあって大量にある寮舎らしき建物以外にも細々とした建物はかなりある。人らしき姿も一応見えるが、この距離だとゴマ粒程度にしか見えなかった。
「まぁ、この辺は土地はいくらでもあるからなぁ。不便だから誰も住もうとしないがね。大雨でも降って、道路が塞がっちまったら完全に陸の孤島さ」
 まるで隠れ里だ、と和也は思った。山に閉ざされた、秘密の里。中にいる子供達を閉じこめ外界から守り抜くための、小さな楽園。だが和也がそんな感慨に耽っていられたのは僅かな間の事で、次の瞬間には再び森が始まっていた。薄暗い林道を縫うようにタクシーは走り抜ける。そうして木々のトンネルをくぐり抜けると、再び急に視界が開けた。太陽の光に眩んだ目が慣れてくると、真緑の芝生を切り裂く石畳の遥か向こうに、大きく水が噴き上がっているのが見える。噴水だ。そしてその水の柱の向こうに、中世の城のように白亜の館が聳えたっていた。
「さあ坊ちゃん、あれが本部だよ」
 唖然としている和也に、運転手は笑みを浮かべながら告げた。

  *

 それじゃあまた、ご縁があれば。そう運転手が言い残してタクシーが走り去る。とりあえずの荷物が入ったキャリーバッグを片手に、もう片手には運転手が握らせた名刺を持って、和也は呆然と館を見上げていた。
「流石に馴染めるか、不安になってきた……」
 だが、いつまでも入り口の前で立ち尽くしているわけにもいかない。首を左右に振って和也が歩き出そうとした、その時。
「――待てよ」
 唐突に背後から呼び止められて、和也は振り返った。
 噴水の水を湛えている石垣の淵に、和也と同じ制服を着た少年が片足を石垣に上げて腰掛けている。赤銅色の髪を逆立て、耳にはサファイアの様な色の石の小振りなピアスが一つ。シャツの前ボタンは二つ開いていて、ブレザーのボタンも前で留められることはなく、着崩されている。その学生が、片手を水に付けて遊ばせながら和也を見る。
「お前、編入生だろ」
 射抜くような視線に、たじろぎながら和也が答える。
「そう、ですけど」
「名前」
 端的に発せられた言葉が、質問であることに和也が気づくまで一瞬の間が空いた。
「柏木和也です。あなたは?」
「佐渡匡平。高等部生徒会長だ。お前を迎えに、来た」
 佐渡が噴水から降りて、迎え? と首を傾げる和也の隣を通り過ぎる。佐渡は本部、と呼ばれているらしい白亜の館の扉に手をかけて、それから和也が一歩たりとも歩いていない事に気づいて呆れたように振り返った。
「何してんだ、着いてこい」
 とりあえず、着いていけばいいらしい。それだけを把握して、和也は慌てて佐渡の後を追った。

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 状況を整理しよう。
 時間が巻き戻っている、という現象が観測される事は珍しい事ではあるが、全くありえない事ではない。同じ時を繰り返す閉ざされた空間や、時の流れが逆行している空間の存在は確認されている。その空間の時を支配する精霊によって、時の流れは様々なものなのだ。だから、一昨日が三日も来ている事自体はさほど問題ではない。問題なのは、
(どうして僕だけが異常を感じている?)
 ジィーリィはパンにバターを塗る手を止めた。空間の時が巻き戻っているのなら、その空間の中にいるジィーリィも同様に巻き戻って、何の違和感もない一昨日を今日も過ごしているはずなのだ。ジィーリィは確かに魔法が効かない体質と言えども、時の流れ方は言わばその空間の『設定』だ。そもそも魔法は『水は上から下へ流れる』といった世界の設定に逆らう事を指す。つまり繰り返す時の流れから取り残されるという事は、時の流れ方に逆らうも同義で、魔法が効かないはずのジィーリィに魔法が効いているという矛盾した結論を導いてしまうのだ。
 どうしたものか、と小さなクロワッサンが一つ乗っかった皿をジィーリィが見つめていると、ロットの手がその皿にまで伸びてくる。ジィーリィはほぼ反射的にその手を叩いた。
「行儀が悪い」
「ちぇー。いいじゃんかよ」
 恨めしくジィーリィを睨んでくるロットの皿は空っぽだ。旺盛な食欲には少し物足りなかったらしい。
「ちょっとくらいお腹が空いている方が、買い食いは楽しいんじゃないの?」
「それもそっか、んじゃあお前が食い終わったら早速でるぞ!」
 ロットがにかっ、と機嫌良く笑う。
「ああ……それなんだけど」
「ん?」
「今日、別行動にしないかな」
 一瞬、場の空気が固まる。今までのご機嫌はどこへやら、ロットが今度は急速に不機嫌になる。
「えーっ!? なんでだよ、お前行きたい所あんのか?」
「まずは帰りの仕事の為に飛行場に顔を出すんでしょ? 僕その間暇だし、この辺を散歩しとこうかと思って」
「……そんなに待つの嫌かよ」
「うん」
 唸るような声に、しらっとジィーリィは答えた。その返答に半泣きになりそうになりながらも、ロットがびしっ、と指をジィーリィに突き付ける。
「……っ、じゃー勝手にしろよな! 迷子になって泣いたって探してなんかやらねぇからな!」
「はいはい。買い食いは、明日行こう。美味しそうなお店探しておくから」
「うー……。約束だからな!」
「うん、約束する」
 明日が来れば、ね。と、ジィーリィは内心で付け足した。

 *

 人込みのざわめきの中、事故だ、という声だけは鮮明にジィーリィの耳に届いた。薄暗い街、道を行き交う車、ヘッドライト、ブレーキ音。捕まえた腕、あぶねっ、と笑ったのは。咄嗟にジィーリィの脳裏に浮かんだそれらは、いつのものだったか。
「僕は、馬鹿かっ!」
 ジィーリィは走り出した。周りの人々が怪訝そうにそれを見送るが、そんなことには気付きもせずにジィーリィは急いだ。

 *

 人混みを掻き分けたその先に、見慣れた人影が見えてジィーリィは叫んだ。
「ロット!」
 地面に倒れていた彼が呼ばれた方へ顔を向ける。真っ赤な血溜まりの中、裂けている足の肉の隙間から白い物が見えてジィーリィは思わず息を飲んだ。
「ジィー、リィ……?」
「お知り合いの方ですか?」
 ロットの隣で処置をしていた医者がジィーリィに問いかける。この時ばかりはロットや医者の、海底都市の住民達の肌の色の白さをジィーリィは恨みたくなった。どうしても、不吉なものを連想してしまう。
「そうです」
「近くに私の医院があるのでそこまで彼を搬送します。一緒に来てもらえますか」
 一も二もなくジィーリィは頷いた。
「わかりました」

 *

 車の中、担架に載せられているロットの隣でジィーリィはきつく手を握りしめた。
「ごめん、ごめん、ロット……!」
「なん、でお前が謝る、んだよ……」
「知ってたのに、僕は気付けなかった……!」
 一昨日も、昨日も、ロットはジィーリィが手を引かなければ大怪我をするところだったはずなのに。それを忘れて単独行動を取ってしまった自分が許せない。

 *

「ごめん、ジィーリィ」
 ベッドで寝ていたロットがぽつり、と言った。
「買い食い、行けないな。約束したのに」
「約束……? ねぇ、それっていつした?」
「え? だって昨日………………あれ?」

 *

 ロットは昨日捻った足を痛めたままだった。昨日した約束は無かったことにはならなかった。時の流れに逆らっていたのは、魔法にかかっていたのは、ジィーリィではなくて、この街にいる人々全員だったのだ。
(誰だかは知らないけれど、ふざけた事をしてくれる……!)
 くそっ、と突然吐き捨てたジィーリィにロットが目を丸くする。その額にジィーリィは乱暴に腕を伸ばし、瞳を閉じた。
 魔法なら。魔法ならジィーリィにとって解除するのは簡単だった。意識を凝らして、世界の法則を歪めている魔力を取り除けばいい。三回、ゆっくりと呼吸をするとぱりん、と何かが割れる様な音がジィーリィには聞こえた。それからロットから静かに手を離した。
「ジィーリィ?」
「つかぬ事を聞くけど、ロット」
「うん」
「今日はこの街に来てから何日目?」
「えっと、五日? ……あれ? 三日目?」
「五日で合ってるよ、ロット」

 *

「これからどうする?」
「まずはロットがその足を治さないとね。飛行機に乗れないでしょ?」
「そりゃそうなんだけど。……帰れるのか、おれ達」
「今日出発する仕事を受ければこの街から出る事はできると思うよ。多分、魔法の影響範囲はこの街だけだろうし」
「……これ、放っといていいのか?」
「……あまり良くないだろうね。僕がいなかったらもしかしたら君は一生この街からから出られなかったかもしれないし。これって他の人にも言える事だよね」
「だよ、な。なぁ、おれにやったみたいに一人ずつ解除していったらどうだ?」
「それも一つの手だとは思うけど。ただ人数が人数だから時間がかかりすぎる。多分ロットの足が治る方が早いよ」
「んじゃさ、その魔法の解き方を教えてくれよ。手分けして、解除したやつにも解き方を教えて、ってやれば結構すぐなんじゃねーの?」
「え? ……あ、そっか、説明してないんだっけ。魔法の解除は魔法をかけるよりも複雑で難しいし、魔法の素養が必要なんだ。だけど、僕が見ている限り、海底に住んでいる君達に魔法の素養は無い」
「って事はジィーリィは魔法が使えんのか?」
「いや、使えない」
「何だよそれ」
「僕は例外。特異体質で、魔力は扱えないんだけど一切の魔法を無力化することはできるってやつ」
「つまり、魔法を解けるのはジィーリィだけで、しかも一人ずつしかできない?」
「そういう事だね。多分、どうしてこんなことになっているのかの原因が分からないとなんともできない」
「じゃーまずは原因探しか」
「そうだね。ただ、ロット。君の足が治るまでに何の手掛かりも掴めなかったら、その時は潔く帰る事にしよう。皆心配してるだろうし」
「そんじゃあおれ何にもできないじゃん!」
「できる事を考えてからの発言かな、それ? まぁ、今日のところは僕はここにいるから、ひたすら作戦会議といこうじゃないか」
「何でだよ」
「僕が目を離した隙に大怪我したのは誰だっけ?」
「うっ……悪かったよ、心配かけて」

 *



 *

 時計塔の鐘が鳴る。それは、止まっていた時が動き出す合図だ。
「何はともあれ、一件落着……かな?」
「おう! 帰ろーぜ、ジィーリィ」
「そうだね。運転頼んだよ、ロット」

 *

「……ぇ?」
「ん? どうかしたか、ロッ「い、いま、ううううう、動いたあああああああああああ!?」
「ちょ、何すんだ! 痛ぇだろうが!」
「動いた動いた、今絶対動いたってだってオレ目ぇ合ったもん今!」
「はぁ? なんだって、ん……だ、よ……」
「起きたあああああああああ!?」
「……うるせぇ! ……どうなってんだ? 脈も無かったはずなのに……」
「どうしよう……ゾンビかな? それとも誰かの霊が乗り移ったとか? 研究所で解剖するって話聞いて怒ったのかな?」
「あー、うん、ロット。お前話聞いてこいや。俺はちょっと出てくるから」
「は!? え、イオ、どこ行くんだよ!」
「流石に素っ裸はまずいだろ……俺、服取ってくるわ。んじゃロット頼んだ」
「この状況でオレ置いてく!? この薄情者おおおおお!」


「あの、えーと、こんにちは……」
"Ou on est ?"
「はい?」
"Vous pouvez me comprendre ?"
「もしかしなくてもこれって、言葉通じない……?」

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起 世界観説明
承 主人公1が主人公2を拾う
転 なんとびっくり生きてました?
結 面倒を見ることになったよ

 見上げると、少しばかり濁った空の向こうに太陽が輝いている。そこから何かが落ちてくる。落とし物だ。愛機の残存燃料に視線を走らせた。針が帰還には十分な量を指していることを確かめて、舵を切る。落とし物が大層な金になることをよく知っていた。


 綺麗な体だった。彼の造形の事ではなく、もっと単純に、空に落ちてから間もないという意味で、彼は綺麗だった。飛行士であるロットは落とし物の人間を何度か見たことはあるが、ふやけてブヨブヨになったそれらはもう人ではない何かだった。
「生きてるみてぇだな……でもどうすんだ、これ」
 ロットと同様に、しげしげと彼を眺めていた年長の飛行士が言う。
「いつもみたいに切り分けて、ってわけにはいかねぇだろ」
「葬式でもする?」
「名前も知らねぇのにか」
「うーん」
 どうしようか、とロットは目の前の体にもう一度視線を這わせた。彼が所有していた換金できる落とし「物」は全て体から取り外して、種類ごとにまとめて置いている。後は彼の体だけだったが、捨てるわけにもいかない。
 少女めいた顔立ちに、髪は立たせれば肩は軽く越すであろうプラチナブロンド。淡く色づいた肌は艶やかで、体格も華奢だ。身ぐるみを剥がされて下着すら身につけていない下半身にさえ目をやらなければ、彼を男だと断定するのは難しかっただろう。
「状態がきれいだから、もしかしたら売れるかな」
「死体を買う奴なんざロクな奴じゃねぇぞ」



 主人公1 ロット(陸斗(ほんとは「ろくと」))
 一人称おいらな感じの、素朴な馬鹿。赤ん坊の頃に飛行士養成所の近くに置き去りにされていた。飛行士の誰かが孕ませた子供じゃないのか、という事になって気のいい飛行士達によって育てられた。ガサツかもしれない。
 幼い頃から飛行機に囲まれて育ってきたため、飛行士になるのは早かった。14歳だけれどもパイロットとしては一人前と認められている。飛行機に関する知識に関してはよく知っているが、他は一般常識くらい(普通教育は無い世界)。今は図面を引く勉強をしてる。
 両親を知らない事については特に悩む様子もなく、けろりとしている。飛行士達に育てられることになった経緯も知ってる。

 主人公2 
 空から降ってきた謎の少年(16歳~17歳くらい)。中性的な顔立ちをしていて、体の線も細い。言葉が通じないが、その割にはすぐに現状に適応している(んだけど周囲は空から降ってきたという印象が強すぎてやけにあっさり適応したことには気付いてない)。
 本当は上の世界で海に捧げられたから落ちてきた。生まれた時から犠牲になることは決まっていて、葛藤などもかつてはあったものの既に自分の運命は受け入れていた(その過程で多少の性格の歪みがある)。そのため、何故か生きている現状に違和感を拭えなかったり。
 「どうせ死ぬから」と本人の希望はほぼ叶えられる環境で、ひたすら読書に打ち込んだ。記憶力・理解力共によく、古代語等の語学にも堪能。頭の回転が早く、観察力にも優れていたため、犠牲を取り消すという話も上がったほどだったが、その頃には本人は自分の運命を受け入れていたため、話にはのらなかった。
 物静かで他人に対しては一歩線を引いている。人に注目される事、監視されるのが当たり前だったため、他人の視線は気にしないし、他人にどう思われようとも気にしない。特大の猫を被っているため、外面では微笑んでいても全然違う事を考えていたり。嫌いな人ははっきりと嫌う。態度には出ないが。猫を被っているのは警戒心の表れ。主人公1にはそのうち猫を被らなくなるが、それも二人しかいない時だけだったりする。
 要するに、結構性格悪い。

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 異国の言葉が、耳障りのいい声に乗って聞こえてくる。動きの少ない穏やかな旋律に導かれて。開かれた窓から入り込んできた風が彼の頬を撫でた。彼に気付かれないように、そっと椅子を引く。まだ彼の歌声を聞いていたかった。
 一度閉じられた唇が、花が咲くように開いていく。空気を吸い込む音。それからから放たれる歌は、それだけで青空を作り上げた。澄み切った空に燦然と輝く太陽。いのち。その喜びを高らかに歌い上げる彼は、確かに生きていた。歌うことが至上の喜びであると設定されたにすぎない機械だったが、それでも彼は、たった今、生きていた。

 *

「おい待て、このネギっ!」
「ネギじゃない、ミクだよっ!」
「どっちでもええわ! ええから、止、ま、れ、って言ってんのが聞こえへんのか!」
「聞こーえなーい!」
「嘘つけぇぇ!」

 どんがらがっしゃん!

「いったぁーい!」
「はい、捕まえましたよ、マスター」
「おう、助かったわ、カイト」
「離して! ミクが可愛いからって変なところ触らないで」
「ほぅ……セクハラはいかんで、カイト」
「してません」
「んじゃ行くで」
「どこに?」
「俺んち」
「やだ! そこでミクにあんなことやそんなことする気なんでしょ!」
「あんなことやそんなこと ってなんやねん」
「わかんない!」
「じゃ、着いてからのお楽しみやな。ほーら大人しくしぃ」

「製造番号○○××△△ー□ 所有者は……もう死んでるんか? 死亡届けは提出されてなさそうやけど」
「そうみたいですね。高齢者の一人暮らしだったようで、身寄りもいないようです。何らかの原因で自宅で亡くなった後、誰にも気付かれる事無く放置されている、といったところでしょうか。彼女は、眠っていると思っているようですが」
「……っつーことは所有者の家に行かなあかんって事か。遺体の状況は?」
「相当腐敗が進んでいますよ。臭いもかなりきついと思います。上に連絡して、確認してもらうのが妥当だと思いますが」
「せやな……。じゃあカイトはミクとの接続を解除、それから上に連絡を取ってくれ。その間にプログラムの更新しとくわ」
「わかりました」

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 何か、いる。
 眼下に浮かび上がった自分の機体の影にパイロットは確信した。六方を水に囲まれたこの空間では、光は水によって徐々に拡散されてしまって、辺りに漂う淀みしか見えないはずなのだ。水圧計、水流計、残存動力源の値を確認して、パイロットは「何か」に気付かれないように少しずつ加速する。黒々としたその体に写る機体の影がどんどん小さくなっている事を視認して、パイロットは通信機の電源を付けた。途端に鳴り出す酷いノイズの中に、微かに人の声が混じっている。自分の機体番号を告げ、そしてパイロットは報告した。

――都市より西北西におよそ10km地点。「主」の存在を確認。

 それを最後にして、その機体からの連絡は途絶えた。


 *


 整備場の扉を開くと、中はむせ返るようなオイルの臭いだった。それに嫌な顔一つせずに、否、むしろ嬉しそうな顔をして少年はその中に飛び込む。扉を挟んで左右に整然と並んでいるのは、流線形の本体の左右から翼が飛び出た機械だ。その脇で、全身を黒く汚しながら大人達が整備を行っている。そのうちの一人が整備場に入ってきた少年に声をかけた。
「よう、チビ。お勤めご苦労さん。おめぇの機体はいつもんとこだ。ノッポが待ってっからさっさと行ってやれ」
「わかった!」

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「ごめん。ごめん、ね……エリオット」
「どうしたんだよ、突然」
「出会わなければ良かったんだよ、僕たちは。係わり合うべきじゃあなかった。そうすれば、君が、あんな風に死ぬことも無かったのに」
「おいリーオ」
「だけどね、だからと言って君のいない日々なんて、僕にはきっと選べないんだ」
「……人の死因を勝手に自分のものにするな。あれは俺の責任だったんだから」



 *

「――。久しぶりだな」
 彼がおれの名前を呼ぶ。けれど、違う。彼に呼んで欲しい名前はもっと別の名前だ。どうして、そう思うかは分からないけど。
「久しぶりという程でもないよ。また来たんだ、鴉(レイブン)」
 どうして有力貴族の嫡男である彼が、こんな年下のおれに仕えたがるのかは分からない。それでも彼が本心で、本気でおれに忠誠を誓っているのは分かる。そして、おれを通しておれじゃない誰かを見ていて、けれども、確かにおれを見ている事も。
「ああ。暫くは会いに来れなくなるからその挨拶と、弟を連れて来た」
「なんだか凄く違和感のある用事の組み合わせだね」
 彼はおれに忠誠を誓っているけれど、だからといっておれの命令に従うとは到底思えなかった。彼はおれの従者らしいが、おれは彼の主人じゃあない。彼が従うのは本当の主人の言葉だけだ。そうでなければ、勝手に従者になっておいて、主人の許可も得ずに『暫く来ない』だなんて言えないだろう。彼は矛盾に満ちている。それでいいのだと思う自分は、もっと矛盾に満ちている。
「唐突ですまないな、――」
 また呼ばれた名前は、ノイズが走ったように聞こえない。それはおれの名前じゃない。ただの音の羅列。だけどおれの頭に載せられた彼の掌の温もりは本当だった。
「エリオット、入っていいぞ」
 彼がドアに向かって声をかける。その名前に、おれの心臓がどきん、と高鳴った。エリオット。おれはその名前を知っている。胸にぽっかり開いた穴のような喪失感と共に、おれは知っていた。
 扉が開く。初対面であるはずのエリオットはそこから姿を現わして、そして真っ直ぐにおれを見て、呆然とおれの名前を呟いた。視界がぼやける。慌てておれに駆け寄ってきたエリオットはそのままおれを抱きすくめて、そして誰にも聞こえないような大きさの声で言った。よかった、と。
 おれの涙は止まらない。どうして泣いているのか分からない。悲しさと懐かしさと嬉しさがごっちゃになって、ぽろぽろと涙を流すおれを、彼とエリオットは何も言わずに抱きしめてくれた。何も言わなくても、よかった。

 彼の本当の名前は知っている。主従の契約を交わす時に、一度だけ呼んでほしいと伝えられたから。名を呼んだ時の彼は、自惚れではなく本当におれを慈しんでいるのだと見ただけでわかるような眼差しをしていた。だから、彼の本当の名前は呼ばない。まだ呼べない。あの眼差しに答えられるようになるまでは、まだ。

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 死者を蘇らせる能力と謳われているけれど、そんなものどこまで本当か分からない。本当に本人かもしれないし、それとも俺の記憶から再構成された偽者なのかもしれない。それでも、どっちでもよかった。俺はもう一度彼に会いたかったから。強烈な光であった彼を失う事で、壊れていくモノを見て見ぬフリはできなかったから。だから俺のチェインでできることがあるなら、やるしかないと、思った。

 薄暗いパンドラ本部の俺の部屋。久しぶりにチェインの本体を呼び出して、俺は目を閉じる。

――代償は何か、わかっているな?

 ああ。頭の中に直接響く掠れた声に答える。事前に警告をくれるのだから俺のチェインは酷く良心的だ。

「俺の記憶を代償に、あいつを……エリオット=ナイトレイを呼び出してくれ」

 もう後戻りはできない。記憶の中の彼が俺に怒鳴り散らすのが簡単に想像できた。優しい優しい、あの頃の思い出。でも今こうやって思い出していることすら、俺は忘れる。

――承知した。

 ぷつん、と重苦しい声が途絶える。流れるように思い出していた彼の事もぷつん、と止まる。それから意識が吸い込まれるように落ちていった。

 あ、俺床で寝ることになるな。


 *


「……っ! ローランド! ローランド!!」
 耳元で必死そうに俺を呼ぶ声が聞こえた。体も結構な勢いで揺さぶられている。この声は、えっと……。
「ギルバート、さま……?」
 思ったよりも声は出なかったが、それでも揺さぶりを止めるには効果があったらしい。重い瞼を上げると、随分と思いつめた金色の瞳が俺を見つめていた。くしゃくしゃの黒髪を揺らしながら、すとん、と座りだす。
「意識が戻ったんだな……」
「ええと、おかげさまで……?」
 一体何があったんだ。どうしてギルバートがいる? っていうかここは……パンドラの自室だ。ベッドで俺は休んでいたらしい。
「あの、何か御用ですか?」
 ベッドの脇、床にギルバートは座り込んでいる。様子が、多分おかしい。おそるおそる声をかけると、絞り出すような、微かな声で返答があった。
「お前まで……いってしまうのかと思った……」
 右手をぎゅうと握りしめているギルバートの声は震えていた。よっぽど、堪えるような事があったらしい。俺はベッドから身を起こして、握りこまれた右手の指をそっと外してやった。
「何があったのかは存じ上げませんが……俺でよければ、お話くらいは伺いますよ?」
 それは、俺にとっては何の他意もない問いかけだった。ギルバートが凹んでいるのなら、少しは慰めてやりたい。俺は従者だが、ナイトレイ家の裏稼業やパンドラにおいては俺とギルバートは同僚だ。人の上に立つ事をあまり良しとしないギルバートとは、身分的にはおこがましいものの、友人のような関係を築けていると思っていた。だからこその提案だ。
 それに対するギルバートの答えは、驚愕に見開かれた目だった。
「存じ、あげな……い……だと!? お前、もしかして忘れたのか!?」
 思いっきり俺の肩に手を置いて、またギルバートが俺をがくがくと揺らしにかかる。
「な、何をですか……?」
「エリオットだ! ナイトレイ家嫡男、俺の弟の、リーオの主人の!! 忘れたのか!?」
 エリオット。その名前に聞き覚えはなかった。ギルバートの弟と言えばヴィンセントだ。だが彼の従者はエコーであって、リーオではない。リーオの主人は……と記憶を辿って、そこで俺は不自然な空白があることに気が付いた。きっと、そこに入るのがエリオットという名前だろう。
「……多分、忘れていますね」
「ローランド……」
 ギルバートの手が、力無く俺の肩から落ちる。何があったのかは俺にはよく分からないが、ある可能性に俺は気付いていた。だが、それを確認する前に俺にはやらなければならない事がある。
「なので、何があったのか、俺に教えてくれませんか?」
 それは、目の前の主人を落ち着かせる事と――俺がどんな記憶を失ってしまっているのかを、確認することだ。

 *

 ギルバートから聞いた話ではこうだ。
 エリオットというのはナイトレイ公爵の実子、つまりギルバートからすれば義弟になる。そして末っ子。成人の儀は済ませているが、まだラトウィッジに通っているという事で一家の中ではまだまだ可愛がられていたらしい。俺は彼がラトウィッジに入学する前は彼の専属護衛だったらしい。確かに、誰かの護衛をしていたという記憶はある。性格は清廉潔白、貴族としての誇りを高く持っていた、と聞くと俺は苦手なタイプのような気がするが、同類のギルバート曰く、身分の別なく分け隔てなく接するタイプだったようで、そういえばあのリーオを自らの意志で従者にしたらしいということを思い出せばそれほど苦手なタイプではないだろう。お前とも仲は良かったよ、と湿っぽい声でギルバートは言った。
 で、湿っぽい理由だが、そんな彼は先日亡くなった。だからこそのパンドラに漂う葬式ムードで、っていうか彼の葬式に俺は参列していた。そこからは結構覚えている通りだった。死因は全身の傷口からの失血死だが、状況は不明。唯一現場を目撃した生存者と思われるリーオは発狂しかけてロクに話を聞けていない、という状況でヴィンセントがナイトレイ公爵を殺害してリーオを連れて逃走。ヴィンセントはブラコンな割には兄の胃を痛くさせることに頓着はしない弟だった。
 一通り話した事でギルバートは少しは落ち着いたらしい。取り乱して悪かった、と言って俺の部屋を出て行った。俺以外誰もいない部屋。決して広くは無いが、俺があまり物を置かない性格だからかガランとしている。その静寂の中、俺は静かに一人の名を呼んだ。

「――ミラ」

「はい、お兄様」

 唐突に部屋に姿を表したのは、俺よりも少しばかり年下な、可憐な少女だった。というか、俺の妹。多少は兄の欲目もあるのかもしれないが、それを差し引いても十分可愛いと、俺は思っている。
 ただし妹には、実体がなかった。彼女は疾うの昔に死んでいる。普通ならば幽霊と呼ばれる類なのだろう。
「人形(ドール)が一人、増えてやいないか」
「ええ、そうですわ。煩くて堪りませんの。お兄様、どうかお話しして差し上げて?」
 妹は花も綻ぶような、小鳥が囀るような声で話す。
「ああ、そうする。けどその前に聞いておきたいことがあるんだが」
「なんですの? お兄様」
「お前はそいつのことを知ってるのか?」
 けれど時折、その声が酷く無機質に聞こえることがある。
「いいえ、お兄様。私達チェインの記憶は、宿主であるお兄様に記録されます。ですから、お兄様が彼についての記憶をすっかり差し出してしまったのなら、私の記憶もその時に差し出されてしまうのですわ」
「そうか。分かった」
 チェインとしての性質を話す時がその最たるもので、その度に俺は妹は決して人ではないのだということを思い出すのだ。人が死んだあと、その人物がどうなるのかは俺は知らない。知らないけれど、俺は自然の摂理にかなり反した事をやっているのではないかと、ぞっとする事はよくあった。
 目を閉じて、何も無い宙に意識を凝らす。無意識も静まり返って、完全な静寂に俺の意識が満たされた頃、すぅっと光が見えた。その声に、俺は『命じる』。
「来い……! エリオット=ナイトレイ――!!」
 光が、弾ける。急速に浮上した意識に従って目をあけると、そこにはやはり半透明の、少年がいた。

 そして、

「何、してくれてんだこんっのドあほ!!!!」

 怒鳴られた。

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 ルエメ布教しようじゃないの文章
 今から書くのは、特パロにおける出会い編。

 R団の手に落ちたルビーがラルドと共に脱出するお話
・ゴシルの信頼関係
・ゴルビ兄弟再会
・ルエメの馴れ初め?

起・ワタイエの助言
 ・サファをかばってR団の手に落ちるルビー
承・安全なところ=兄のところに飛ばされたサファ がジョウトリオに助けを求める
 ・その頃ルビーはラルドと出会う
 ・R団アジトについた4人が操られルビーと戦闘 ラルドもちらっと登場
転・R団の思想/目的を知る4人
 ・ラルドの目的を知るルビー
 ・ラティ解放の為に共闘する6人
結・R団は逃走
 ・ラルドがルビー達と同行する事に

 時間については、ルビー達が12歳くらいを想定。
 つまり、ホウエン組12歳、ジョウト組14歳、イエロー15歳、ワタル24歳くらい。

・R団
 サカキがトップでその下にロケット団、マグマ団、アクア団、ギンガ団、プラズマ団、といったグループが続いている。だいたい担当地域が存在。
 戦争に負け、ポケモンに屈している現状が気に入らない過激派。人間優位思想の持ち主。
 今回はポケモンを使役できる召喚士を捕らえてポケモンを操ろうとしていた模様。担当はルビーだしマグマ団で。
 人間に対し不満を抱く召喚士を集めてサカキが何がしたいのかは不明。

・ワタル
 最初の召喚士のうちの一人。召喚士歴14年(レッド達が17歳現在/シルバーより2年早い/11歳で発現)。レッド達の8歳年上。ゴールド達からすると10歳年上。イエローからすると9歳上か。
 数々の迫害を受けながらも、ポケモントレーナーとして養ったサバイバル能力で生き延びている。R団とは中立(ワタルから攻撃を仕掛ける事はないが、襲われると容赦なく反撃する。相手も勝てない事が分かっているので手を出してこない)。
 シチユウ地方各地を転々としている。一番他人を動かせる(=権力を持っている)召喚士かもしれない。
 トレーナーとして所有していたポケモン達が契約ポケモンのため、ドラゴンタイプばっかり。おかげで異様に強い。
 『森の子』として、ポケモンの気持ちを読みとれる。同じく『森の子』のイエローを保護している。
 かなり低年齢で発現したシルバーには目をかけていたようで、村にもちょくちょく来ていた。ろくに外にでたことがないシルバーが妙に物知りなのはワタルの入れ知恵。
 妙にシルバーの名前が一人歩きしている原因でもある。
 性格は苛烈ながらも、自分の懐に入れた人間(要するにトキワ組)には甘い。本人曰く「昔に比べればかなり丸くなった」との事で、昔は相当な性格だったっぽい。
 なんだかんだでシルバーが珍しく信頼している他人でもある。

・イエロー
 ワタルが保護している少女。昔は男装していたが、年をとるにつれて流石に無理だと言うことでもうやめている。
 ワタルにだけはタメ口。かなり容赦がない。他には敬語だが、慣れてくるとちょっと素が出て容赦がなくなる(シルバー)

・森の子
 自然豊かな東部森林地帯で生まれ育った事で少し不思議な能力を持った人間の事。かなり低い確率で生まれる。ポケモン世界の人間は先祖でポケモンと人間との混血が行われたというのが裏設定で、その遙か昔のポケモンの血が少し強く出た人間という立場。
 トキワ組がこれに該当し、ワタルは「ポケモンの気持ち/記憶を読みとれる」イエローは「他者の傷を癒せる」シルバーは「ポケモンの言ってる事が分かる」と言った具合。
 シルバーの能力に関しては本人も自覚しておらず、周囲も気付いていない(ワタルでさえも)。つまり表に出すつもりはない。

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不良二人にやたらと愛される真面目学級委員長

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001~006
001 特パロ 金銀
002 特パロ 紅翠
003 HGSS ライコト
004 スペ シルイエ?
005 マスカイ
006 金銀 パロ

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 どうしてなのだろう。
 弱いポケモンには意味がないと思っていた。だからバトルに負けた時は酷い事を散々言ったし、かといって勝った時にまともに褒めた事もなかった。
 それなのに、どうして。

 こいつらはオレの傍にいるのだろうか。

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 聞かないと話が進まないセリフと、主要キャラについてログとってくつもり。ライバル、ロケット団とか。

 

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・スレ翠と紅
・金銀スペHGSS三兄弟パロ
・ジョウトリオで花札なう
・マフィアっぽい現代FTパロ設定?
・下ネタ。金銀と紅翠前提。多分現パロだな
・金銀? 銀金? 月がきれいですね
・究極技覚えたところで石化解除には繋がらない
・シルバーのほっぺつまんで詰るゴーちゃんと特に抵抗もせず普通に口喧嘩をするシルバー

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・女遊びの激しいグリーン とレッドがクリス呼び出し
・金の修行を手伝う銀

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「で、あんたは?」
「オレはシルバー。お前の『所有者』だ」
「所有者?」
「言葉通りの意味だが、今のお前には関係あるまい」
「おれは、あんたのモノ?」
「そういう事だ。他の奴を連れて来るから、少し待ってろ」
「え、あ、…………や、だ」
「ゴールド?」
「なんでもねぇよさっさと行けこの馬鹿!」
「……一緒に行くか」

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初代金銀不良&兄弟設定スペゴシルな妄想についてつらつらと。
妄想の中身じゃない

金銀 金    銀
スペ ゴールド シルバー
HGSS ヒビキ  カナデ

まずパロにするなら名前どうするかを検討しておかないとな……特に初代。暫定的に漢字表記でいくけど。
オリキャラ色が濃くなるようなら独自名つけちゃうのもありだけど……えーっとフラ語とか? 金って何だろう。銀はアージェント(厳密にはtの発音はしない)のはず。定冠詞をつけるならラージェント。金はl'or だ、っけ……? ローだな。ロー兄とラル兄ってか。やっぱりヒビカナと音の響きが合わないね!
金は黄金、銀は白銀でもいいかなぁと思ってるけどどっちも地名な件。っていうか漢字表記CPにも見えるという罠。あとどっちにもガネの音がつくのがなぁ。
まぁ金と銀でいいか。いいかな。

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 さく、さく、さく。

 一面の銀世界の中、彼の背中だけがぽつんと色を残してる。

 さく、さく、さく。

 傘の意味はあまりない。ぱらぱらと雪が傘に叩き付けられる音と、わたしたちの足音だけが聞こえる。

「ねぇ、どこに行くの、シルバー」

 しん、と雪に吸い込まれてしまったわたしの声に彼が足を止める。
 ぱらぱらという音だけが聞こえる。
 枝に積もった雪が雪崩をうって落ちた。
 その影に、微かに彼の声。

「え?」

「……行くぞ」

 さく、さく、と彼が歩く音。
 ぱらぱらとわたしの傘で雪が踊る音。
 ざっ、ざっ、ざっ、と私が走る音。

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 泣いてるクリス
 困るゴールド
 慰めるシルバー

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誘われるままにベッドの上にその体を押し倒す。馬乗りになって見下ろすと、真っ白なシーツの中に赤銅色の髪を散らしたそいつが俺を見上げた。色素が少ないから辛うじて分かるくらいの頬の紅潮に、少しばかり涙で潤んだ瞳。やばい、と思った時にはごくりと生唾を飲み込んでいた。
その次の瞬間、そいつの顔がニヤリ、と歪められる。「降参か?」ああくそ。何で俺が野郎なんかに。「ああ、負けたよ。降参だ」「ならさっさとどけ」余裕たっぷりに睨んでくるこいつがムカついて仕方がない。俺に組み敷かれてるくせに。もういいか。元々誘ってきたのはこいつだし。

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 君が居るというただ其の事実に、最大限の賛辞と感謝を

 *

 あの人の所にいるのなら、ひとまず彼女の安全は保証されただろう。それなら。
「離してくれませんか?」
 助けようと伸ばされた手を自ら振り払った。

 *

「驚いた。どういう心境の変化なの?」
「僕に焦る理由が無くなったって事。それに君に手を貸した方が、僕もすっきりするだろうし」
「……本当に、何があったの?」
「大抵の召喚士はエスパータイプのポケモンを憑依させたりはしないんだよね。エスパータイプって憑依でかかる負荷が大きいし、そのくせ能力を使うと異様に疲れるし。だから、みんな気付かなかったんじゃないかな。召喚士の意識を乗っ取るあれ、本当は強力なエスパータイプのポケモンが無理矢理憑依してくるだけだ。多分、悪タイプのポケモンを憑依させている召喚士には通用しないはず。で、僕はRURUで慣れてるからちょっと事情を聞いた。君の友達なんでしょう?」
「……うん。まぁ、そうなんだけど」
「あの人のところにいるのなら、サファイアも安全だろうし。多分僕を追いかけてここにやってくるよ。だからその騒ぎの間に君は友達を解放してあげたらいい。初めっから、僕を逃走させてそうするつもりだったんでしょう?」
「……。どうして、さっき逃げなかったのさ」
「君を置いて行きたくないって、思ったから」
「馬っ鹿じゃないの?」
「そうかもね」
「……お人よし」
「それは違うと思うけど。君じゃなかったら、こんなめんどくさい事しないよ」
「おれを口説いてどうすんの、あんた」

 *

「ジュカイン。お前、またおれといてくれるの?」

 *

たぶん没

 枝に巻き付けたワイヤーに身を任せ、寸でのところで炎を回避する。
「……僕だけここで死ぬなんて、流石にカンベンなんだけど」
 炎を放ってきたのは、人間だ。つまり、炎タイプのポケモンを憑依できる召喚士であるということ。ZUZUを外に呼び出して消火を命じてルビーは枝から飛び降りた。間髪をいれずルビーが乗っていた枝が地面に落下する。
「あーもう、捕まえるなら丁寧にしてよね。操り人形が欲しいなら五体満足の方がいいんじゃないの? ……って、聞いてないし」
 さて、逃げるか、捕まりに行くか。

 *

 カタン、と軽い音がした。
「あ、起きた?」
 他人の声がする。でも、サファイアの声じゃあない。これは変声期をまだ迎えていない、自分ともそう歳の離れていない、子供の声だ。
 そこまで思ってルビーは自分の置かれている状況を思い出した。R団とおぼしき集団に襲撃され、そしてその真っ最中に自分は気絶したのだった。寝たふりをしたままゆっくりと体を動かして拘束の有無を確認する。足首に一つと、後ろ手に回された手首に一つ。微かに伸びる事からして、普通の縄だろう。
 初めの第一声から動く気配の無い人間は見張りだろうか。目をつむったまま、もう少しルビーは様子を探る。
 とても静かだった。近くにいるであろう人間の気配以外にはポケモンの気配も風の音もしない。再びカタン、と軽い音。それが微かに反響した事にルビーは気付いた。思えば、いつもに比べてあまりにも臭いがしない。
(つまりここは、屋内――)
「あんたさぁ、そろそろ寝てるフリやめたら?」
 確実に自分を指す言葉に、ルビーの思考が止まる。少しの逡巡の後、ルビーは静かに瞼を上げた。

 *

多分没

「ほら、口開けて」
「なんで『あーん』なんてしなきゃいけないの」
「そりゃあ、両手が塞がってるからじゃん」
「解けばいいよね?」
「そんな事したら俺が脱走補助で捕まっちゃう。食べる気はあるんでしょう?」
「まぁ、お腹空いたし」
「もしかしたら毒かもしれないのに?」
「でも毒じゃないでしょ。キミがそこまで演技力がある方だとは思えない」
「そこは認めるけど、でも俺ごと騙されてるのかも」
「それ自分で言う時点で否定してるも同然だよね。……僕に、何の用?」
「……リーダーに絶対気に入られると思うよ、あんた。俺達に協力しない?」
「嫌だ」
「やっぱり? あーあ、残念」
「もういいよ。お腹空いたから早く食べさせてくれる?」
「はいはい。あーん」

 *

「ラルド」
「ルビー、暑い。離れて」
「嫌だよ」
「……ってこらー! 変なとこ舐めるな!!」
「もうちょっと色気のある反応してよ」
「おれに何を求めてるのあんた」

 *

「仕事だよ」
「僕、協力するなんて言ってないんだけど」
「知ってる」
「な……に、これ。勝手に、動く……?」
「あんまり抵抗しないでくれる?。負担が増えるんだ」

 *

「嘘はあんまりついてないよ。滅んだ都市の生き残りだってのは本当。でもこいつの整備の仕方を知ってるのは、父さんの趣味だったからなんかじゃない。これがおれの――得物だったから」
「……召喚士なんだ」
「今もそうなのかはわかんないけどね。宿してもいなければ憑依もさせてないから。でも、R団ってそんなに悪い組織だとも思えないんだ」
「どうして? ポケモンを殺すような連中なのに」
「おれの家族も友達も知り合いも、皆ポケモンに殺されたのに? ポケモンが人間を殺す事は許されておれたちは許されないわけ?」
「……ごめん。そういうつもりじゃあ、無かった」
「まぁ、あんたの言いたい事もわかるけどね。ポケモンがいない世界が、それほどいいものだとはおれには思えない」
「じゃあどうして協力してるの?」
「友達を助けるため、だよ。だからあんたにも協力してほしいんだ」

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