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――私はあなたの傲慢さに救われたのです。
そう言って、フィンは笑う。
「確かにあなたは傲慢でしょう。ですがあなたは、ルーク・フォン・ファブレに相応しくあろうとした、ただそれだけです。そしてその名前に伴う責任を知ったあなたは、逃げ出さずに受け入れたではありませんか」
*
「俺が、王?」
「それが妥当だろ。なんせ第一・第二王位継承者はお前の両親なんだから。陛下が崩御なさる頃にはお二人とも政権なんて握れる歳じゃないだろ。そうなったら次はお前、当然の成り行きじゃないか」
「はぁ? そりゃねーだろ」
「どういう事だ」
「どう考えたってお前の方が相応しいじゃねーか」
「……それを他でもないお前が言うのか」
「人には向き不向きがあるんだろ。俺には向いてねーよ、王様稼業なんてさ」
「それじゃあ俺が王位を簒奪しても、お前は諾々と従うというのか?」
「んなもんそんな状況になってみなきゃわかんねーだろーが」
「俺は、お前の方が王に相応しいと思うけどな」
「はぁ? ……どこが?」
「お前は優しいから。国の指導者は優しい方がいい。お前にとっては、不幸な事だろうけどな」
明らかに、違う。
前は既にルーク達がライガクイーンと交戦状態に入っていた。
アリエッタとの確執を防ぐ為に彼は極力急いだが、それだけでこうも展開が変わるとは思えなかった。
前では自分が到着する前にあの二人は去っていたのだろうか?
とても、そうとは思えない。
二人のうちの片方は現在自分と行動を共にしている。
だとするならば、前の時も行動をともにしていて然るべきだったろう。
そしてもう一人――ヴェント。
この二度目が始まったときに唐突に記憶に現れた彼は、確実に、『前』には存在していなかった。
真紅の瞳は譜眼の証であり、発話能力に障害を持ちながらも詠唱破棄で譜術を発動する鬼才。
そんな人物が、ダアトにいるとは『前』では聞いたこともなかった。
ましてや、六神将シンクの副官だなんて言わずもがな、だ。
既にこの世界とは『前』とはずれ始めている。
ライガクイーンを倒さなかったことで、これからの展開は少しずつ変わっていくはずだ。
そして確実に鍵を握っているのは、今のんびりとルーク達と話しているこの少年に違いなかった。
「っていうわけで、俺記憶喪失なんだよ」
簡単に自己紹介を済ませたあと、俺の記憶が始まってからの数週間の話をかい摘まみながら話した。
とは言っても話すことは四つしかない。
気がついたらこの森にいたこと、この森に済んでるチーグルに近くの集落まで案内してもらったこと、そこで今までお世話になっていたこと、そして今日は暇だから先日の礼をチーグルに言いにきたこと、だ。
「本当かよ。そうは見えねーけど」
頭の後ろで手を組んで、朱い髪を揺らしながらルークが言う。
身に纏っている服、手入れの行き届いた髪や肌、そして漂う箱入り感から貴族だろうとは予想はつく。
更にそれに赤髪となると嫌な予感もするが、俺にはルークとしか名乗らなかった(うっかり名字も口走りそうになって女の人に髪を引っ張られていたのを俺は見逃していない)から深く追求はしないでおく。
お貴族様と積極的に関わる理由もないからだ。
こう自然と考えるということは、俺は平民だったんだろうなぁ。
「本当だって。こう見えて俺結構参ってるんだってば」
「どこがだよ。大体記憶喪失になってから二週間で何で喋れて歩けるんだ」
「はぁ? 別に普通だろ、そんなの。歩き方や喋り方まで忘れる重度の記憶喪失なんてそうそうならないって」
向こうが貴族だということに気づかない振りをしてほしいのなら、こっちはそれに乗るまでだ。
お忍びで外遊だろうか。
赤髪の貴族が、マルクトに?
案外、マルクトの貴族なのかもしれないな。
どちらにしても今の態度を咎められる事もなさそうで少し安心した。
「……そうなのか?」
「そう、だと思いますよ。どうしましたか、ルーク」
きょとん、と足を止めてルークが言う。
それに釣られて足を止めて尋ね返したのは全体的に緑色な、法衣を纏った子供だ。イオンという名前らしい。
おそらくはローレライ教団関連のお偉いさんだろう。
ローレライ教団に関しては、俺は余り詳しくなかったらしい。
信者にとっては常識に等しい聖獣・チーグルなんぞこれっぽっちも知らなかったのだから、世界中の人々の九割以上が信者である教団の、多分信者ですらなかったのだろう。
何が言いたいかというと、ローレライ教団の一般常識レベルのお偉いさんの名前など知らないという事だ。
よってイオンがどのくらい偉い人なのかもよくわからないし、こんな俺よりも小さな子供が様付けで呼ばれる役職も知らない。
ルークとイオンが足を止めた事で先頭を進んでいた女の人、ティアがこちらを振り返る。
肩には水色のチーグルが乗っていて、頬が緩んでいるのを隠しきれていない。
ほれ行くぞ、と立ち止まった二人を軽く押して再び歩かせる。
その様子を見ていたティアがまた前を向いた頃、ルークが騒ぎ出した。
「んじゃなんだって俺はそんなめんどくさい記憶喪失になってんだよああもう信じらんねぇ!」
「へぇ、お前も記憶喪失なんだ。お前こそそうは見えなくないか?」
「俺は十歳以前の記憶がごっそり抜けてるんだよ。もうこの状態で七年も生きてるんだからこんなもんだろ」
あんまりにも堂々とした記憶喪失っぷりにはそういう事情があったらしい。
ということは、と俺は思った事を口にした。
「っつーことはお前、記憶喪失の度合いから推測するにほぼ7歳児?」
「な ん だ と ! ?」
「あーいや悪い悪い。別に馬鹿にしてるわけじゃなくてだな」
「そういう言い方を馬鹿にしてるって言うんだよ!」
「そうやってムキになるところが17歳と言うよりは7歳児っぽいよな」
「なっ……」
いちいち噛み付いてくる様が面白いなぁ、と思っていると怖ず怖ずとイオンが口を挟む。
「あの、少し言いすぎではないですか? 僕はルークのそういうところ、好きですけど」
それは暗にルークが子供っぽいということを肯定しないないかイオン。
「だってさルーク。よかったな」
「てめぇ後で覚えてろよ……」
「別に後回しにしなくてもよくないか?」
キッ、と何処で覚えたのかやたらとガラの悪い目つきで睨んでくるルークとにらめっこをしていたところで、先頭を行く彼女の雷が落ちた。
「もう、いい加減にして! あなた達は静かに歩くことも出来ないの!?」
「あなたは……?」
「僕もイオンだよ。君の被験者、と言えばわかるかな?」
「はい。こんにちは」
「すごい。もう喋れるんだ。僕が聞いていたレプリカは生まれたばかりの赤ん坊のようだって聞いていたけど」
「そうですか」
「うーん、でもやっぱりまだまだって感じかな。導師の仕事をするときはこれでも対応できるかもしれないけど」
「……」
「そう、それで本題。今日は君に名前をあげようと思うんだ」
「私の名前はイオンではないのですか?」
「イオンは僕の名前だよ。それを君に貸しているだけ。だから君だけの名前を今からつけるんだよ。わかった?」
「はい。わかりました」
「うん。それじゃあいいかい、君の名前はーー」
まだ色も凹凸もなかった僕の世界に現れて、初めて僕に名前という色を与えたあの人は、度々僕の前に現れた。僕に向かって他愛ない話をしてくるただ一人の人だった。そしてあっさりと、その命を落とした。まるでそうなることが初めから決まっていたかのように、簡単に。そして僕は彼に成り代わる為に造られたレプリカだった。彼のふりをするのは、簡単だった。
*
「レプリカ達に名前を付けろって?」
「強制はしていない。付けてやったらどうだ、と提案しただけだ。お前の情報から造られたのだから、お前の子供のようなもんだろ」
「僕達はこの歳で子持ちか」
「そーゆーこったな」
*
『知らなかったの?』
「僕の名付け親が、僕達の被験者だって? 冗談じゃない! 名前まで被験者様のものだっていうのかい!?」
『違う、シンク。被験者は僕達を他人として認めてくれていた。イオンがそのまま名前になるはずだったシアに名前をつけたのは被験者だったんだ。それがどれだけシアの救いになっているか、シンクは知ってるよね?』
「さぁ? かえって虚無感が増すだけなんじゃないの。結局のところ、僕達以外の誰も本名を知らないんだから」
*
「君は、フローリアン。まだ喋ることもできないみたいだけど、でも記憶には残るんだってね。不思議な話だよ」
*
「そして君が、ヴェント。生れつきの発話障害と聞いているのだけれど、間違いはないかい?」
*
明らかに、違う。
前は既にルーク達がライガクイーンと交戦状態に入っていた。アリエッタとの確執を防ぐ為に彼は極力急いだが、それだけでこうも展開が変わるとは思えなかった。前では自分が到着する前にあの二人は去っていたのだろうか? とても、そうとは思えない。
二人のうちの片方は現在自分と行動をともにしている。だとするならば、前の時も行動をともにしていて然るべきだったろう。そしてもう一人――ヴェント。この二度目が始まったときに唐突に記憶に現れた彼は、確実に、前には存在していなかった。真紅の瞳は譜眼の証であり、発話能力に障害を持ちながらも詠唱破棄で譜術を発動する鬼才。そんな人物が、ダアトにいるとは前では聞いたこともなかった。ましてや、六神将シンクの副官だなんて言わずもがな、だ。
既にこの世界とは前とはずれ始めている。ライガクイーンを倒さなかったことで、これからの展開は少しずつ変わっていくはずだ。そして確実に鍵を握っているのは、今のんびりとルーク達と話しているこの少年に違いなかった。
「っていうわけで、俺記憶喪失なんだよ」
「本当かよ。そうは見えねーけど」
「本当だって。こう見えて俺結構参ってるんだってば」
「どこがだよ。大体記憶喪失になってから二週間で何で喋れて歩けるんだ」
「はぁ? 別に普通だろ、そんなの。歩き方や喋り方まで忘れる重度の記憶喪失なんてそうそうならないって」
「……そうなのか?」
「そう、だと思いますよ。どうしましたか、ルーク」
「んじゃなんだって俺はそんなめんどくさい記憶喪失になってんだよああもう信じらんねぇ!」
「へぇ、お前も記憶喪失なんだ。お前こそそうは見えなくないか?」
「俺は十歳以前の記憶がごっそり抜けてるんだよ。もうこの状態で七年も生きてるんだからこんなもんだろ」
「っつーことはお前、記憶喪失の度合いから推測するにほぼ7歳児?」
「な ん だ と ! ?」
「あーいや悪い悪い。別に馬鹿にしてるわけじゃなくてだな」
「そういう言い方を馬鹿にしてるって言うんだよ!」
「そうやってムキになるところが17歳と言うよりは7歳児っぽいよな」
「なっ……」
「あの、少し言いすぎではないですか? 僕はルークのそういうところ、好きですけど」
「だってさルーク。よかったな」
「てめぇ後で覚えてろよ……」
「別に後回しにしなくてもよくないか?」
「もう、いい加減にしなさい! あなた達は静かに歩くことも出来ないの!?」
「……すみません、ティア」
「イオン様はいいんですよ。……私は二人に言ったのだけれど?」
「差別はんたーい!」
「あなたねぇ……」
「てか別に静かに歩かなくてもいいじゃん、こんな森の中」
「魔物の生息地で大声を出すなんて、襲ってくださいと言ってるようなものよ?」
「チーグルが生息できて、しかも生態系ピラミッドの頂点にいたライガがいなくなったんだからそう危険でもないだろ」
「でも警戒はするに越したことはないわ」
「……結構まじめちゃんだな、お前」
すごく感情に関して矛盾まみれだけど、ローレライ教団にとってアッシュの存在は神に近いものがあったのではないだろうかとか、その辺のことを考えてみた。
宗教的な意味での預言とは、幸福を迎えて終わる存在しない預言のこと。科学的な預言は本当の預言のこと。この辺に関してはもう少し詰めたい。あとアッシュサイドのキャラをもっと解釈しないと話が書けない。
「馬鹿馬鹿しいと思うよ。それでも――受け入れてしまうのは、僕が導師だからだろうか」
穏やかにイオンは言った。アッシュには理解できない感情だったけれど、それでも理解した。イオンは、宗教者なのだ。ローレライの、神の言葉は絶対なのだ。
「ねぇアッシュ。僕に最後の預言を与えてくれない?」
「お前なら自分で詠めばいいだろう」
「それじゃあつまらない。僕は君の預言が聞きたいんだ」
ローレライと音素振動数が同じ、という事実はローレライ教の信者にとっては特別な意味を持つ。神と同じ存在。目に見え、触れ、言葉を交わすことができる神。信者に公開すれば導師以上の存在となってしまうのは避けられないため、知っているのは教団のごくごく上層部だけだ。それでも、彼らはアッシュをローレライとみなす。ヴァンが突然連れてきたただの子供があっさりと神託の盾騎士団に所属し(初めは騎士団という身の危険がある場所に所属させることも拒んだが)、それなりの地位につけたのもそのためだった。更には目の前のイオンの死後に一斉に行われる人事で詠師にまで引き上げられることが決まっている。イオンが望んだことだった。
――詠んでやろう。死にゆくイオンが望むのなら。
「アリエッタは泣くだろう」
唐突に始まった言葉にイオンが吹き出した。
「そこから始まるの?」
「うるせぇ。思いついた順に言ってんだ」
「ごめんごめん。続きは?」
「カンタビレは泣かないだろうな。それでも、悲しむと思う。お前の死にもだが、殆どの人間がお前の死を知らないという事実に」
「なるほど。彼らしいね」
「モースとかの教団上層部は、預言の通りに死ぬお前は幸福だと、そう感じるのだろう。そして、お前の死を隠す工作を必死になって行うはずだ」
「この情勢で教団内で混乱を起こすわけにはいかないからね。それに、望まぬ者を導師につけるわけにもいかない」
何か言いたげな視線を送るイオンをあえてアッシュは無視した。
「ディストはレプリカの準備が忙しくなっているだろう。ヴァンは悲しみはしないんだろうな」
「ねぇ、そろそろ君の話を聞きたいな」
「……俺は、」
受け入れられるのだろうか。彼の死を。今こうして話している彼が、あと数日もすれば命を落とすという事実に耐えられるのだろうか。こうやって話をしているのも、所詮は現実逃避をしているだけではないのだろうか。
アッシュには理解できなかった。預言だからと全てを受け入れ、早々に抵抗を諦めることが。教団に来てからなんとなく受け入れてきた教義に初めて疑問を感じた。だって、預言の成就を願うことはイオンの死を願う事と同義なのだ。
「俺は、お前のように簡単には受け入れられないだろう。預言とは異なった未来を望むのだろう」
生きて、ほしい。それが、アッシュの願いだ。
「やっぱり君は、ローレライ教団員には相応しくないね」
でも、とイオンは続ける。
「君にそう思ってもらえて、凄く嬉しいよ。アッシュ」
「……導師としてその発言はどうなんだ」
「神を信じない事によって生まれる君の苦しみを、僕は嬉しいと言ってるんだよ? 導師としてこれ以上相応しい台詞はないと思うよ?」
「随分と性悪な導師だな」
「ねぇアッシュ」
「何だ」
「人はいずれ死ぬ。それは避けられないことで、生き物である以上、僕らが死を恐れることもまた、避けられない」
「そう、だな」
「でもその死が、未来の繁栄に繋がっているとしたら? その死によって、自分の子孫達や友達の子孫達が幸せになるとしたら? ――僕はその死を、怖いとは思わない。それが、ローレライ教の救いなんだよ。ローレライの存在が、僕達を死の恐怖から救ってくれる。死の恐怖を、未来への希望に変えてくれる」
「また説教か」
「導師直々なんだからありがたく聞くように。――アッシュ」
穏やかだった声が、急速に意思の籠った、硬い声になる。
「僕は今になってようやく気付いたんだ。本当は、預言なんて関係ない」
「いいのか? そんなことを言って」
「ああ。本当に大切なのは、僕が生きた事が誰かの未来の幸せに繋がると、僕自身が確信すること。ローレライ教はその手助けをしたにすぎない。預言の成就を願う事が何故救いに繋がるのかと言うとね、それは最終的な預言が幸せに繋がっているからだ。だから――最終的に不幸に繋がるのなら、そんなものはいらない」
とんでもないことを言い切りやがった、とアッシュは思った。それでも口は挟まない。
「いいかいアッシュ。宗教的な意味での『預言』と、科学的な意味での『預言』はもう異なっているんだ。」
・ハイトが一人でバチカルを飛び出る
「行くのかい?」
「うん。レックを見つけてあげないと」
「レックだって馬鹿じゃあない。待っていれば自力でここまで帰ってくるさ」
「……何処に帰るべきか、分からなくなっていたとしても?」
「え?」
「何でもない。とにかく、僕は行くよ」
「止めても無駄なんだろうね……気をつけて、ハイト」
「うん。ありがとう、ラディ」
・野盗に襲われる
・通りすがりのガイが助ける
・ケセドニアまで送ってもらうことに
・ケセドニアでディックを雇う
・ピオニーとかと会ってると楽しいかも。
・合流はアクゼリュス直前とか? 案外アクゼリュスはアッシュだけでのりきったりして。
・INタルタロス
「私は部分的な記憶喪失に陥っています」
「部分的な、とは?」
「自分に関する記憶が全くありません。名前や、過去の思い出を失っているようなんです。対称的に、知識や社会常識といったものは忘れてはいません」
「結果として、貴方がどこから来たのかも貴方は把握していない、と」
「そうなります」
「ですが、貴方が記憶障害だという証拠はどこにもありませんね」
「その通りです」
「まぁいいでしょう。一週間前、チーグルの森の奥で巨大な第七音素の収縮反応がありました。心当たりは?」
「私が目を覚ましたのがチーグルの森の奥です。無関係ではないと思います。収縮ということは……超振動による転移が疑われますね」
「あくまでも覚えはないと?」
「私はチーグルの森の奥で目を覚ます以前のことは覚えていませんので」
「超振動による転移をすぐに思い付くということは、それなりに第七音素に関する知識はお持ちのようですね」
「そのようです。更に言うと、研究者だったようです。貴方の旧姓はバルフォアではないですか?」
「ええ。確かに、研究者でしょうね」
「それと、キムラスカに住んでいたと思います。太陽が北に昇るので」
「他には?」
「……多分、専門はフォミクリーかと」
「! ……そう、ですか。根拠は?」
「レプリカに関する知識が深すぎます。譜業について詳しいのは、キムラスカの人間だとすれば不思議なことでもありませんし」
「…………」
「バルフォア博士。音素構成を調べる譜業はありませんか? 私がレプリカであれば、この中途半端な記憶喪失についても説明がつくと思うんです」
「待ってください! 生体レプリカは私が禁忌としました。それなのにどうしてそんな発想があっさりと……」
「何かしらの形で私も関わっていたんでしょうね」
「そ、んな……」
「で、私の処遇はどうなるのでしょうか?」
「バチカルに着けば降ろしますよ」
「いいんですか?」
「そうしなければ協力しない、とルークに脅されましてね。全く、可愛いげのない子です」
「……彼は、何者なんですか?」
「本人に聞いたほうが早いと思いますよ」
・INタルタロス↑のちょっと前
「……それはちょっと頼み方がおかしいんじゃねぇの? お前らは俺に協力を要請することしかできない。俺を無事に送り届けないと、和平なんて言ってらんねぇだろ?」
「おや。どうやらただのお馬鹿貴族ではないようですね」
「うるせっ。で、まぁそれはそれとして。俺はお前らへの協力、っつてもまぁ俺の話が何処まで叔父上に通じるのかは甚だ疑問だが、そいつを約束しよう。バチカルに無事、着いたら叔父上に和平締結を進言してみる」
「おや、まだ私は何も言っておりませんが」
「形式だけの言葉なんて時間の無駄だろ、内容は一緒なんだから。で、俺がお前の話を聞くならお前が俺の話を聞くのも道理だよなぁ?」
「そうですね。あなたの要求は?」
「ティアとハイトの拘束の解除。要するに、あいつらの国境侵犯を無かったことにして、俺と一緒にバチカルで降ろせってこと」
「わかりました。まぁ、初めからそのつもりでしたけどね」
・INバチカル一度目の帰還
「ルーク様。この度は無事の御帰還、おめでとうございます」
「あんたは……」
「ラディウス様。お迎えありがとうございます。ほらルーク、覚えてないか? まだ言葉も怪しかった頃に一度お出でになったことがあるだろう?」
「悪ぃ、覚えてないや。でも名前には聞き覚えがあるな。俺が記憶喪失になる前はよく遊んでいたと聞いている。一方的に忘れてしまってすまない」
「そんなことおっしゃらないで下さい。少し寂しいのは本当ですが、それはルーク様の責任ではありません」
「で、そこまで遜られる必要もねぇと思うんだが」
「その通りですね。それで本題なんだけど、ルーク。僕が用があるのは君がマルクトから連れて帰って来たという人のことなんだ」
「あぁ、お前は学問所の譜業科にいたらしいな。記憶喪失みてーなんだが、どうやらキムラスカの研究者だったっぽい。お前なら顔知ってるかもしれねーな。……おいハイト、いい加減降りろ!」
「……ハイト?」
「今譜石の解析をしてるんだって! もうちょっと待ってよ!」
「んなもん降りてからでもできるだろ!」
「それができないんだよ、ルーク。解析はかなり集中しないといけないから。君は和平の親書を陛下に届けるんだろう? 彼のところには僕が行くから、君は君の成すべきことをすればいい」
「わかった。……ジェイド」
「ハイトの身柄はここで解放ですね。そういう約束でしたから」
「つーわけで頼んだ。よくわかんなかったら俺の屋敷に送ってやってくれ」
「その必要はないと思うけどね。和平、上手く掛け合ってみてね」
「お前は戦争は嫌か?」
「僕みたいな中途半端な立場になると、政略結婚でマルクトへの人質……なんてことになりかねないからね。必要なら甘んじて受け入れるけれど、できることなら国の道具にはなりたくはないよ。それじゃ、ルーク」
・一日は45の鐘
・一周目ルークが死んだことによる傷が癒えていなくて、二周目ルークに一周目ルークを重ねてしまうジェイド
この赤目の軍人は、ルークとの約束を殊の外嬉しく思っているようにルークには感じられた。誰に言ったところで共感してはもらえなかったけれど。
彼が時折目を細めて本当に嬉しそうに、しかしながら痛みを堪えるように笑うことをルークは知っていた。そしてそうやって笑うときは、彼がルークを見てルークを見ていないことにも、ルークは気づいていた。
ーーなぁ、お前は誰を見てるんだ?
彼が自分を見てくれているのに満たされない。いらいらする。でも何よりもルークを苛立たせるのは、彼が全くの無意識でそれを行っているということだった。
・ラディとレック
「こんにちは」
「こんにちは……?」
「君にとっては初めまして、になるのかな。本当はそうではないのだけれど」
「……記憶を失う前の俺を、知っているんですか?」
「あぁ。知っているよ。君の名前はレック。君が今名乗っているハイトという名前は、君の双子の兄のものだ」
「双子の、兄……。彼は、今どこに?」
「わからないんだ。君を探すと言って、一人で出ていってしまったから。そう言うということは、君もハイトには会っていないんだね」
「そう、です」
「そうか。心配だな……。とりあえず、今日のところは君の家に案内しよう。家に帰ったら何か思い出すかもしれないしね。ああそうだ、僕はラディウスという。君とは同僚……というか、友人だね」
「友達の……ラディウスさん」
「ラディでいいよ。君にはそう呼んでほしい」
■ラディウスがリチャードにしかならない件について。やっぱり無意識のうちに似てしまう……! というか物腰のイメージはリチャードだから仕方がないんだけどでもなんか違うっ!
■記憶喪失レックの口調も悩む。とりあえず自分より身分が上っぽい人には敬語が主体。ルークは友達だから砕け気味。でも本来の口調とはまた違う。というのを目指したいんだが……。
■設定はいっぱい練ってるんだけど、人間としてはあまり考えていないのがもろばれなんだよなぁ。
・ルークとレック
「記憶は戻ってねぇみたいだが、お前のことを知ってる奴らには会えたんだろ? よかったじゃねーか」
「うん……皆よくしてくれるし、俺の中途半端な記憶喪失だと仕事には影響が出ないもんだから前みたいにやらせてもらってるみたいなんだけどさ……」
「んだよ、はっきりしろよ」
「ルーク。お前は記憶を取り戻したいって思うか?」
「そりゃあ、な。お前だってそうだろ?」
「まぁ、な……でも時々、不安になる。俺が記憶を取り戻したとして、そしたら今の俺はどうなるんだ?」
「記憶があろうがなかろうが、俺は俺。お前はお前。別にどうにもなんねーよ」
「強いな、ルークは」
「怖がったところで何にもならねーんだよ、そういうことは。大体、記憶を取り戻したら今のお前が消えてしまうとして、じゃあお前はどうするんだよ? 記憶を取り戻さないように努力するのか? それとも周りの奴らに今の自分を忘れないでって懇願するのか? 全部無駄だ、そんなこと。周りの奴らは記憶があるお前も無いお前も区別しねーよ。どっちもお前なんだから。……だから、辛いって思うときもあるんだけどな」
「そう、だな」
「誰が悪いってわけじゃあねーんだ。周りの奴らも、記憶を無くした俺達も、誰も悪くはねーんだ。だから疲れたら、今のお前しか知らない奴のところに行けばいいし、そういう知り合いを増やせばいい。俺でも、話し相手ぐらいにはなれる」
「……ありがとう、ルーク」
■二週目ルークは江戸っ子。
・ハイトサイド
「へぇ、アクゼリュスで障気の大量発生ですか……」
「おいおい、お前の目的は弟を探すことだろう?」
「その通りではありますが、もうひとつの目的としてはレックに、自分を探し回っている自分と外見がそっくりな人間がいることを知らせることです。マルクトの主要な都市はこれで全て回ったので、最後にアクゼリュスに行って障気の採取くらいはしたいですね」
「……シルバーナ大陸はいいのか?」
「あそこに永遠に閉じこもっている事はないと思うので、構いません」
「マルクト国内からは入れないんだろ?」
「救援部隊を送り込むのが不可能なだけですよ。ディックさんは障気障害の患者さんを見たことがありますか? 重症になると立つこともままならなくなるんです。そんな患者さん連れて行ける道ではないんでしょうね」
「本当に行く気か?」
「ええ。僕の現在の専門は障気なのですが、肝心の障気はいつどこで発生するのかわからないんでなかなか研究が進まないんですよ。障気を持ち帰ることができれば研究も捗ります」
「……死なないだろうな?」
「多分、大丈夫だと思います……多分」
「くそっ、ラディウスの奴とんでもない仕事を回しやがったな……」
■アクゼリュス崩落前に双子が合流するならこのルート。ディックはラディの差し金です。ちょこちょこラディに雇われていたらいい。そしてそろそろラディの苗字を用意しないといけないんだよなぁ。
ジェイドは思考する。
たとえ「ルークがパッセージリングを破壊する」ことを阻止できたとしても、いずれ耐用年数の限界に達していたアクゼリュスのパッセージリングは機能を停止する。ならば、いっそのこと「記憶」と同じタイミングでアクゼリュスを魔界に降下させる方がその後のヴァンの動向も先読みしやすくなるのではないか。問題はいかに被害を減らして安全に降下させるか、だ。既にマルクト側からはアクゼリュスに入ることができないため、陛下に鳩を飛ばしてマルクト軍に救援を頼むことはできない。キムラスカに要請するとなるとそれこそ「記憶」と同じ結果を辿る事になる。だからと言ってローレライ教団に救援を要請したところで秘預言を知っているモースとヴァンが指揮権を持っている以上、握りつぶされるだけだろう。アクゼリュスにいる民達は預言に死を詠まれているに違いないのだから。結局は見捨てるしかないのか。それだけは極力回避したい。アクゼリュスの一件がルークに深い傷を与えたのは言うまでもない。アクゼリュスを降下させるにしても、パッセージリングの操作を行えるのは超振動が扱えるルークしかいないのだ。……待て、本当にそうだろうか? 前の記憶があるのなら、前との相違点を利用すればいいのではないだろうか。具体的には、あの子供達。完全同位体だというその言葉を信じるのなら、超振動も引き起こせるはずである。――いいや、だめだ。二人がかりで引き起こす超振動がルークほどの精度で制御できるとは考えられない。ならば、残るはただ一人――アッシュか。今回のアッシュは前回とは様子が違っているのは間違いがない。前回散見されたレプリカに対する憎悪の感情が、どうにも感じられないのだ。だが前回とは違うため、今の彼が何を考えているのかは予測がつかない。それにもし彼が協力してくれることになったとして、アクゼリュスの民を見殺しにさせるのは、どうなのだろうか。どうせなら、手を穢すのは自分だけでいい。パッセージリングを破壊するだけの超振動ならなんとかして譜業で起こせるだろうか。被験者を繋いだフォミクリーでホドを崩落させることはできたが、同じ手段をとるとすると問題はあの時の譜業はサフィールが用意していたということと、被験者が必要だということだ。前者はサフィールに協力を要請することになる。こちらはまぁ、適当に丸めこめば可能だろう。後者は被験者を用意する時点でこの「手を穢すのは自分だけ」という当初の目的から逸れている。それでも可能性を挙げるならば、ホドの時の被験者であったヴァンと血縁関係にあったティアはおそらく適性が高い。他の被験者ならば、マルクトの死刑囚あたりから調達すればいいだろうか。だがサフィールに協力を要請し、譜業を作り上げ、死刑囚から適性のあるものを選別してアクゼリュスに送るという一連の作業には時間がかかりすぎる。アクゼリュスの崩落に間に合わない。ヴァンを始末してアクゼリュス崩落を先延ばしにすることも可能だが、前回ではヴァンの存在がマルクト・キムラスカ間の協力体制を築くきっかけとなったのも確かである。それに今回が始まる前のローレライの言葉も気にかかる。あれは確かに「ヴァンを殺したところで結末は変わらない」と言ってはいなかったか。ヴァンを殺すのは、その場合のこれからの展開の考察を十分に行ってからでいいだろう。そういえば、ローレライはまた妙なことも言っていた。――都合良く異世界からも客人が訪れたから今回の世界に招待している――だったか。異世界からの客人とは何者だ? 前回と違う展開を望むのなら、この「異世界からの客人」に協力してもらうのがおそらく最も簡単な方法だろう。これも推測する必要がある。
炎より温かみのない音素灯が石造りの壁を照らしている。炎の揺らめきがない、均質的で無機質な音素灯が昼間から点けられているのは、ただ単にこの建物が昼でも暗いからだ。ここは戦争中に放棄されたとある貴族の別荘だったが、おそらくは別荘となる前は一種の要塞として機能していたのだろう。一度門を頑なに閉じれば、崖の上で海を後ろに背負って立つこの城を落とすのは一筋縄ではいかなかったはずだ。そしてそういう城にありがちなように、この城にも窓が少なかった。それが、昼でも灯りを必要とする暗さの原因だった。その薄暗い廊下に、足音が二つ響く。
「急に静かになったね、レック」
「ルーク、かえっちゃった」
足音の主達は、互いを鏡に映すよりもそっくりな見た目でありながらも、身に纏う雰囲気は異なっていた。一人は落ち着いた物腰の柔らかさを、一人は無邪気な天真爛漫さを子供の外見に宿している。
「そうだね。二人ともあっという間にいなくなっちゃった」
「なにしてるかなぁ」
「もっと遊びたかった?」
「うん」
「きっと、また会えるよ。しばらくすれば身体検査をしにやってくるって」
片方が優しく微笑みかけて二人は足を止めた。不規則な足音が止み、話し声もなくなると残るのはどこからともなく吹き込んでくる隙間風の唸り声だけだ。その僅かな音がかえって静寂を引きたてる。二人は一度顔を見合わせて、足を止めた理由である、年季の入った木の扉を数回ノックした。
「ディー、いますか? ハイトとレックです」
「よんだー?」
「こらレック、失礼でしょ」
小声で片方が窘めているところに、ひとりでに扉が軋む音を立てながら開いた。何とも不気味な光景だが二人に動じた気配はない。さも当然のように室内に足を踏み入れた。
部屋はやはり石の壁で囲われていた。だが、大人なら手を伸ばせば天井に手が届きそうであった廊下と比べるとこの部屋の天井はかなり高い。それが理由か、窓のない部屋であったが不思議と圧迫感はあまり感じさせなかった。部屋自体は質素なものだったが、天井から吊るされたシャンデリアや放置された書棚などの調度品が控えめに品の良さを主張している。この部屋のかつての主の趣味の良さを連想させた。だがそれらも手入れを怠っていれば本来の美しさを発揮することはできないようだった。薄汚れ、踏み均された絨毯からは温かみを少ししか感じられない。底冷えのするこの部屋の暖炉に火が灯っていないのは、現在の主が極端に寒さに強いためであった。
その部屋の主は扉の真正面にある机の更に向こうに座っていた。乱雑に計算用紙が散らばった天板の上に肘をつき、色素の薄い髪の下に普段よりも血色の悪い顔がのぞいている。その苦り切った表情をみて、この部屋にやってきた二人は思わず声をあげた。
「どうしたんですか、ディー」
「おなかいたいの?」
「残念ながら、痛いのは胃です」
部屋の主の男が顔を上げる。掛けなさい、と机の手前の椅子を示されて二人は腰かけた。男は二人を一人ずつ順に見つめた後強く目を瞑った。現実など何も見たくない、という逃避のようにも見えた。それから一つため息をつき、重々しく口を開く。
「あなた達の処分命令が下りました」
*
「それはぼくたちを殺せということですか?」
答えた子供の声は男の深刻さなどまるで無視した、いつも通りの声だった。そのことに男は目を伏せる。いずれここで死ぬことを、この子供は受け入れている。それを強要したのは男であったはずなのに、男自身がそのことを躊躇っていた。今まで、何人もの子供を死なせてきたはずなのに。男の正面の子供の態度は、暗に男を非難しているようだった。
――何人も殺してきたのに、今更躊躇うのですか?
「そういうことに、なりますね」
だが、自分にこの二人を殺せるだろうか。男は自問する。戦災孤児で親もいない子供たちを砂漠の街から連れ去ったのは数年前の話だ。それから己の研究のための実験台として子供たちは次々と死んでいき、最後に生き残ったのがこの目の前の子供だった。親の愛情すらも知らないような子供が、己の模造品でしかないはずのレプリカに惜しみない愛情を注ぐのを見て、自分は何を感じたのだろう。暇だからと読み書きを教え、知識を与え、それをみるみるうちに吸収する二人を見て、どこか喜びに近いものを感じてやいなかったか。自分の研究が脇に逸れだしたのはいつからだろう。レプリカと被験者は同じではないということを思い知らされて、二人を死なせないため研究を始めたのではなかったか。
殺せる、はずがない。
「ディー?」
急に明確な意志が男の瞳に宿ったのを見て取って子供が呼びかける。逃がそう、と男は思った。あの上司には死んだように思わせて、こっそりと逃がしてしまおう。ならば、どうするか。
二人を生き延びさせる研究はまだ終わっていない。現在の潤沢な研究資金を失うわけにはいかなかった。だから連れて逃げることはできない。ちらりと幼馴染の皇族の顔が浮かんだが、まだ立場は安定していない。二人を任せるには不安がある。大体、絶対その近くにいるもう一人の鬼畜幼馴染なら二人を見た瞬間に自分が何をしたのかわかるはずだ。下手な情報を渡してしまうと、今度は今のパトロンが倒れることになる。それではいけない。あの幼馴染がこの研究を手伝ってくれるとは思えなかった。それでは、どうするか。最後に浮かんだ案はどうしても賭けに近かった。
「お逃げなさい、二人とも」
男が言うと、正面の子供が意外そうに目を見開いた。隣の子供が口を挟む。
「どうやって?」
「超振動ですよ。分解後の再構成の位置を調整すればあれは転移にも応用できます」
「つまりはぼくたち二人で超振動を引き起こして自分自身を分解させ、別の地点で再構成させる、と? ほとんど自殺じゃないですか」
「あなたの悪運の強さなら今更死にはしませんよ、きっと」
ここまで自分を変えさせたこの子供なら、きっと。
「私が言えることではありませんが……生きてください。ハイト、レック」
部屋の中に重い空気が満ちる。それを打ち破ったのは、状況をあまり理解していない子供の声だった。
「ディーはこないの?」
「私にはまだ研究がありますからね。あなた達二人のこの場からの消滅をもって、処分したと上に伝えます」
一瞬で空気をぶち壊した子供に苦笑を浮かべ男が答えると、正面の子供と目が合った。子供も微笑を浮かべて隣の子供の頭を腕で掻き寄せる。
「わかりましたよ、ディー。ぼくもレックも、絶対に生き延びます。あなたが、それを望むのなら。ね、レック?」
「おー!」
頼もしい返事に男は一つ頷いて席を立った。それでは準備しましょうか、と言いながら。
*
空は淀んでいた。鈍色の雲の下、潮風が駆け回る。お世辞にも気持ちのいい天気ではなかった。波が岩肌にぶつかっては砕ける音が遠くから聞こえる。
場所は屋外。中庭の真ん中に子供が二人と、男が一人立っている。
「超振動の原理は覚えていますか?」
唐突に男が問うた。
「えっと……第七音素を『反音素』に変換して、それを対象の音素と対消滅させることによって莫大なエネルギーを得る、でしたっけ。さらにそれによって生じたエネルギーで他の場所での再構成を行う、と」
「概ねその通りです。では、第七音素を大量に消費するということも理解していますね? そして、それがあなた達にとって危険だということも」
「はい。まずぼくやレックの体を構成している第七音素も消費される可能性が高いです。更には周囲の第七音素濃度が低下することでレックの音素乖離も引き起こしやすくなる。これらの事象は事前に大量の第七音素を用意しておくことで回避できます。当てはあるんですか?」
素早く会話の流れを読んだ子供に男は笑みを深めた。
「ええ。これです」
男が指し示したのは小振りのナイフだった。鞘には緻密で繊細な細工が施されていて、柄にもささやかな彫刻がなされている。どちらかというと実用的ではなく観賞用といった外見だが、男が鞘から刀身を抜くとよく磨き抜かれた刃が鈍い太陽の光を反射した。
「わぁっ、すっげー!」
「これもケテルブルクの細工物ですか?」
「ええ。親が私の入隊祝いに買ったものです」
「で、それをどーするの?」
「さて、どうするんでしょうね?」
男がにっこりと笑う。子供がもう片方の子供の、腰にも届きそうな髪を見やる。
「……レックの髪を切って、それの第七音素を利用するんですか」
「まぁ、そんなところです。そのナイフは貸しますから、超振動の直前に切ってあげてください」
刃をしまったナイフを男が子供の手に乗せる。
「では、お願いしますね。私が十分離れてから始めてください」
*
さくり、さくり。
子供が刃を滑らせるたびに髪が切れていく。切れた端から髪は音素を乖離させ、光となって空気中に溶けていく。海からの湿った風が子供の手の中に残った髪を攫い、空に浮かび上がらせる。その様子をすっかり髪が短くなった子供が見上げていた。
「きれい」
「そうだね。ディーはいつかこうなることを、わかっていたのかもしれない」
ナイフを鞘に収めながら、髪を切っていた子供が言う。
「さぁ、やろうか。レック」
「おー!」
そっくりな顔を見合わせて、二人は笑った。
ND2011。
それは聖なる焔の光が二度目の誕生を迎えた年であり、またある子供の死の預言が詠まれていた年だった。
正しくは何週目かなんてわかりません。自分の分身であるルークたちが幸せになる結末を望んで、ローレライさんは何度もオールドラントをやり直してます。それでも二週目というのは、一週目がゲームアビスで、二週目がこの話という意味です。ゲームアビスの前の週ではマルクトが滅んだり結局秘預言どおりの結末を迎えたり、レプリカルークが生まれなかったりとかそんな感じの週がありました。一週目がそれまでの中で一番上手くいったんだけど、でも結局はルークが死んでしまうという結末にローレライさんが納得いかなくてもう一周。そうしている間に世界間をふらふらしていたリオンとアレクを見つけて、ついでに放り込みます。そしてディストが変わって、ハイトとレックが生まれて、ルークたちの結末が変わる、と。
フィンとかディックとかラディは一週目の時点でもいた人たち。リオンとかアレクとかハイトとかレックとかは二週目で初登場する人たち。
で、ジェイドのみが逆行。ED(ルーク達の成人の儀)後にルークを取り戻そうと譜術を展開したところローレライさんに誘われます。で、逆行した先は本編開始ごろ。イオンをダアトから連れ出してきた頃です。ちなみにこの時点まででずいぶんディストは性格が変わっているのですが、ジェイドは気付いていません。てか二週目世界の住人が客観的にジェイドをみるとある日突然雰囲気が変わってびっくり、といった具合。
つーわけで大譜歌を知ってるのはジェイドとリオンとアレクです。ローレライさんに教えられた。ただしD組の二人は教えられたのが結構昔なので忘れかけてる。
* * * * *
何者だろうか、とジェイドは思った。『記憶』の中にこの少年はいない。自分が前の世界の記憶を持っている、というだけで厳密には今の世界は前の世界と違うわけで、だから『記憶』通りにいかないことがあるのも当然なのだが、それでもこの変化は大きすぎるようにジェイドには感じられた。
ルクティアの超振動に引きずられてハイトとレックの間でも超振動が起きて、レックだけチーグルの森にまで吹っ飛んで超振動の影響でハイトと記憶が混ざっちゃって、結局ハイトに記憶を移しちゃって、レック自身は記憶喪失になる、ってのは大方決まりで。この記憶喪失ってのは思い出だけの記憶喪失で、レックが今まで得た知識の方は全然記憶障害になってない、と。
このときのハイトをどうするかなぁと思っていたのですが、オリキャラのラディウスくんに頑張ってもらいましてガイと一緒にマルクトに向かうというのはどうだろうか。んでケセドニアでガイがディックを雇うというのはどうだろうか。
ラディウスは赤毛緑瞳の落ちぶれ上流貴族、つまりは中流で、フィンはラディウスの従兄弟でお爺ちゃんがファブレ公爵の母方のはとこくらい? ほぼ他人、くらいのルークつき使用人さんです。
性格は二人ともあんまり考えてなかったのですが、キムラスカ版ピオジェでいいんじゃないかと最近思ってきた。
ラディはハイト・レックと学園が同期で友人。普通は貴族は教養科なのだが、自分から譜業科(平民が大多数。中には奨学生制度で入学した貧民(ハイトとレックみたいな)もいる)に入ってきたまぁ、変人。というか家庭教師を散々つけられて教養科で学ぶことなんか全部頭に入ってる。身分を気にしない開けっぴろげな性格で、研究室なんかにもしょっちゅう遊びに来るような感じ。社交界からは道楽に耽っていると思われている。でも王位継承者だからラディを利用しようとする輩が後を絶えなくて、だからまだ仕事が決まらない。本人の希望としては技術系がやりたいようで、研究室訪問もそのためのコネ作り。学園時代にすっかり譜業科の皆さんには馴染んでいるので皆驚かないとかそんな感じ。遊んでいるだけのように見えるが実際はそうではない。キムラスカ貴族として国(民)を栄えさせることを望んでおり、その為には慣習をぶち破ることも厭わない。王位を継ぐべきは自分ではないと考えているが、考えが変われば自分から玉座を狙いに行くくらいの野心はある。
フィンはルーク付きの使用人兼家庭教師。ルークに対しては常に敬語だが、言っている内容は謙遜もへったくれもない。貴族として知っておかなければならない一般常識などをさりげなーくルークに仕込んでいる。とはいえルークよりも年下なので、屋敷でこっそり人を呼んで勉強させてもらっている。常に敬語全開なのも、常に笑顔だけど実際の感情は違うということも、そういう人に物事を説明されることも、厭味をいわれることも、ルークはフィンで慣れっこなので普通の人がジェイドに感じるような胡散臭さをルークはあまり感じていない。
捏造緑っ子はヴェントです。イオンレプリカの数は原作より減らしてます。ディストが別人に近くなってるんで。さらにディストはレプリカ作成に関してはジェイドを超えているくらいの人ですから、身体能力を弄るのも計算の上でやってます。能力が被験者よりも劣化してしまうのは仕方が無いので、どこを劣化させるか・どこを被験者レベルにするかを弄ってレプリカを4体作成。まぁ、実験でもあったことに違いはないのですが。平均的に劣化させたのがイオン、体術を集中的に伸ばしたのがシンクで、極力劣化を少なくしようとしたのがフローリアンで、譜術に特化させたのがヴェントです。なんでフロが導師じゃないかというと、成長が遅いからです。ディストは捨てる気は初めから無くて、導師にならなかった子は自分で世話をするつもりでした。そしたら勝手にヴァンとかが緑っ子を拾っていくというね(笑 ヴェントの名付け親はカンタビレ。ディストが押し付けました。譜術の潜在能力は被験者よりも高いのですが、やりすぎて発話能力が失われてしまった子。譜術は無理かと思いきや、無詠唱で譜術を使いこなす。髪は染めてるから緑ではなくて赤茶色(生え際をごまかすために始終帽子を着用)、瞳は譜眼をいれたので真っ赤。カンタビレが後見人となってますが、ある程度戦えるようになったらシンクの補佐をさせてます。ヴェントはシンク・イオンがイオンレプリカであることを知ってますが、シンク・イオンはヴェントがイオンレプリカであることを知らない。日常会話はディストが自作した液晶付きキーボードでやってます。デュラララ!! のセルティみたいな感じ。後は笛を数種類。中にはシンク専用もある。
当家のルーク↓
「……それはちょっと頼み方がおかしいんじゃねぇの? お前らは俺に協力を要請することしかできない。俺を無事に送り届けないと、和平なんて言ってらんねぇだろ?」
「おや。どうやらただのお馬鹿貴族ではないようですね」
「うるせっ。で、まぁそれはそれとして。俺はお前らへの協力、っつてもまぁ俺の話が何処まで叔父上に通じるのかは甚だ疑問だが、そいつを約束しよう。バチカルに無事、着いたら叔父上に和平締結を進言してみる」
「おや、まだ私は何も言っておりませんが」
「形式だけの言葉なんて時間の無駄だろ、内容は一緒なんだから。で、俺がお前の話を聞くならお前が俺の話を聞くのも道理だよなぁ?」
「そうですね。あなたの要求は?」
「ティアとハイトの拘束の解除。要するに、あいつらの国境侵犯を無かったことにして、俺と一緒にバチカルで降ろせってこと」
「わかりました。まぁ、初めからそのつもりでしたけどね」
ルーク達が王宮から出るとハイトが立っている。
ル「ハイト!? お前、今までどこに行ってたんだよ!?」
ルークの問いにハイトは控えめな笑みを零す。
ハ「皆さん初めまして。この度皆さんに同行させていただくことになりました、ハイト・フローレンスと申します」
以前とのギャップの大きさに一同は声も出ない。かろうじてティアが聞く。
テ「……ハイト、記憶が戻ったの?」
ハイト、少し困った顔。
ハ「戻ってるといえば戻ってるんですけど……多分皆さんが思っている『ハイト』と僕は別人だと思います」
ル「どういう意味だよ?」
ハ「僕は記憶喪失になっていません。皆さんと一緒にバチカルまで来た彼が、どうやら僕の名を名乗ってたみたいなんです」
ガ「ということは……そっくりさんってことか? 双子か?」
ハ「はい、そんな感じです」
テ「一緒に来たあの子の本当の名前がハイトではなくて、あなたがハイトなのね?」
ハ「そうです。ややこしくてすみません」
ル「本当にややこしいな。それで、あいつの名前は何て言うんだ?」
ハ「レックです。もう記憶は戻っているんで、また会う事があればそう呼んであげて下さい」
ル「あいつは来ないのか?」
ハ「はい、所属研究室が違うので。ところで、皆さんのお名前を伺ってもよろしいですか?」
ガ「そうか、ハイト……じゃない、レックじゃあないからな。俺はガイ・セシル。ルーク付きの使用人兼専属護衛だ」
ル「俺はルーク・フォン・ファブレだ」
テ「私はティア・グランツ。神託の盾騎士団所属よ」
ジェイドはハイトの顔を見たまま考え込んでしまっている。
テ「大佐?」
ジ「ああ、すみません。マルクト帝国軍第三師団師団長のジェイド・カーティス大佐です」
ハ「ありがとうございます。ガイさん、ルークさん、ティアさん、それと……カーティス大佐、ですね」
三人を順番に見回しながらハイトが確認する。
ジ「姓の方には馴染みがないのでできればジェイドとお呼び下さい」
ル「その顔でさん付けなんかされると鳥肌が立つっての。呼び捨てでいい」
*****
夕日によってか、血によってか赤く染まった戦地に人影が一つあった。無数に転がった死体の間を無造作に歩きながら、返り血一つ付いていなかった軍服を赤く汚して死体の検分をしている。目に止まった俯せの死体を足で裏返してみると胸にぽっかりと穴が開いていた。男が溜息を付く。
「即死じゃあ意味が無い」
実験の為には身体の損傷が直接の死因でない、傷みの少ない死体が必要だ。
「次の時はもう少し加減するか」
氷の譜術を大規模に展開したのはこれが初めてだった。綺麗に凍死してくれればと考えていたが、譜に氷片で対象を貫くという記述があったのだろう、蓋を開けてみれば普通の戦場とほとんど変わらなかった。違いがあるとすれば地面がぬかるんでいることだけだ。
男がしばらく探していると、ようやく傷の少なそうな身体を見付ける。余計な傷を付けないように慎重に引き上げると、それはうっすらと目を開いた。
「だれ……だ」
「なんだ、生きていたのか」
途端に男は興味を失い、かいがいしく身体の汚れを拭おうとしていた手を止めた。この死体の海の中で生存者などいるはずがないと思い込んでいたようだ。らしくない失敗に、今回はこのくらいで切り上げるかと考える。
立ち去ろうとした男の背に待て、と声が投げ掛けられた。
「誰だ、って聞いてんだろ……ッ!」
先程まで死体の海と同化していた人間が、立ち上がる。
「驚いた。随分と軽傷なんだな」
「そりゃ俺は譜術を売りにしているからな、っと」
第七譜術を展開して大きな傷を塞いでいく。譜術を売りにしていると自称しているだけあってマルクト人では無い割には確かに展開速度は早い。
「お前がジェイド・カーティスだな?」
「ああ」
「指揮官の首を頂けりゃあ、それなりに金が下りるんでな。――一戦お相手願おうか!」
ディック、と名乗った男とジェイドとの戦いはそう長くは続かなかった。ジェイドの部下が駆け付けて来たからだ。ディックは自分の不利を悟ると直ぐさま逃げて行った。引き際の良さは傭兵らしい。久しぶりに負った傷が譜術によってみるみる塞がっていくのを眺めて、ジェイドは第七音素を自分で扱う術は無いものかとぼんやり考えていた。
*****
うーむ謎文。ディックがかなりあっさりしてる。ちなみにディックは本気でジェイドを殺しにかかる気は無く、ジェイドの戦闘能力についての情報を集めて軍に売るのが第一目的でした。
「傭兵? ……生き残りがいたのか」
「そうだって言ってんだろ。首は無理だったがあの死霊使いとも少し戦った。奴の情報はそっちだって欲しいだろ。もっと上の人間を回せ」
「傭兵隊は捨て石だったんだろ?」
「そうだ。無駄な犠牲は払いたくなかったのでな」
「その無能な軍人さんのおかげで何人もの奴が死んだけどな」
「誰も死ななければそれは戦争ではない」
「しゃあしゃあと……それで、指揮官殿が何の用だ?」
「近々ホドで大規模な作戦を行う予定でな」
「おい、」
「即戦力はいくらでも欲しい。私がお前を雇おう」
「拒否権はねーのかよ」
「機密を知っている人間を簡単に野放しにすると思うか?」
「お前が勝手に話したんだろーが」
「さて、どうする?」
「こんにゃろ……受けりゃいいんだろ」
「それは何よりだ」
*****
ル「師匠(ししょう)!?」
デ「何かわからんけどここは俺にまかせろ」
ル「悪ぃ、頼んだ!」
デ「報酬はツケとくぞ。さっさと行け!」
ジ「ルーク、彼は?」
ル「あー、昔屋敷にいた奴。数年前にクビになったんだよ」
ジ「それはまた、どうして?」
ル「俺を無断で屋敷から連れ出したから。まぁ断ったところで許してなんか貰えなかっただろうけどな」
ジ「そうですか……」
ル「それにしても、お前ら知り合いだったんだな」
ジ「はぁ?」
ル「違うのか? ディックはお前を知ってたみたいだぞ」
ジ「ディック、と言うのですか、彼は」
ル「おう。俺に体術を仕込んだ師匠だ」
ジ「なるほど。野戦に慣れるのが早かったのはそのためですか」
ル「あー、まぁなぁ……師匠、稽古の時は平然と鉢植えとか投げてきたからなぁ……。って、やっぱり知ってんのかよ」
ジ「ええ、思い出しました。一度戦場でお会いした事がありました」
ジェイドが手袋を脱いで左腕を見せる。傷痕が残っている。
ジ「これが彼に付けられた傷です」
ル「ジェイドでもやられる事があるんだな」
ジ「当たり前です」
*****
レ「こいつは音素砲の砲門か。流石に一般人に見せるのはまずいんじゃないのか? ……って操作は無理か。指揮官によるロックが掛かってるな。個人認識は固有振動数で、か。んで……固有振動数の採取は声紋からか? 登録振動数は……っと。うーん、そこまでは割り出せないか」
ジ「何をしているのですか」
レ「操作できねぇかと思って。ロックをかけてる指揮官ってお前?」
ジ「ええ。よくご存知のようですね」
レ「そのようだな。なぁ、機関部見せてくんねぇ?」
ジ「お断りします」
レ「ケチだなー」
*****
ル「なぁレック」
レ「なんだよ」
ル「俺はアッシュのレプリカなんだってさ。本当はあいつがルークで、俺は……偽物なんだ」
レ「何言ってんだ」
ル「え?」
レ「お前に本物も偽物もあるかよ。お前はアッシュか?」
ル「……違う」
レ「じゃあルークでしかありえないだろ」
ル「そうだけど、でも!」
レ「俺はお前と話す時は、お前と話していたつもりだよ。キムラスカの王族のルークという名前の人じゃなくて、目の前にあるお前の人格に話してた。お前が自分を否定するということは、お前を肯定していた俺や皆も否定することになる。それでもお前は自分は偽物だとかいう寝言を言うつもりか?」
ル「…………いいのか? 俺は、この名前も身分も母上も全部あいつから奪ったっていうのに、全部忘れてのうのうと暮らしてたんだ。だからあいつに返さなきゃいけないのに、……怖いんだ。返したくないんだ。全部俺のもんだ、ってどっかが言い張ってる。なぁ、これでいいのかよ?」
レ「そいつはアッシュと相談して、自分達で決断を下すところだと俺は思う。ただお前らが勘違いしてそうだから一つだけ言っておくけど、一人が二人になったところで大して違いは無い。アッシュに返してお前も持ってる、って事もできるからな」
ル「そ……っか」
レ「ま、とりあえずはお前がアッシュをよく知って、アッシュを他人として受け入れる事だ。そんでアッシュを好きになっちまえばいい」
ル「はぁ?」
レ「そしたら、アッシュのレプリカであることも誇りになる。俺はハイトが大好きだから、ハイトのレプリカで俺は心底嬉しいと思ってるよ」
ル「そんなもんか……って、レプリカっ!?」
レ「お前まだ気付いてなかったのか?」
ル「だって、お前ら、双子だって……」
レ「一番初めに言い出したのはお前だろ。つーか俺とハイトは『似てる』のレベルを通り越して『同じ』じゃねーか」
ル「双子ってそういうもんじゃねーのかよ!?」
レ「どんなに似てる双子でも少しは顔は違うっての。……ってそうか、知らないのか」
ル「屋敷に一組いたけどあいつら似てねーし」
レ「ま、レプリカなんてそうそういないから仕方ないけどな」
ル「なんか悔しいな……」
*****
ガ「あぁ……ルークの奴大丈夫かなぁ」
ハ「すみません、わざわざ来てもらって」
ガ「それは構わないさ。確かに前衛がアッシュ一人となるとしんどいからな」
ハ「ルークなら、大丈夫ですよ」
ガ「なんでそう断言できるんだよ」
ハ「レックを見ていてレプリカがどうのこうのって悩めるわけはないでしょうし、開き直りも早いんじゃないですか? 誰かに似て」
ア「……それは俺の事か」
ハ「へぇー、自覚はあるんだ」
ア「……とにかく、あいつは体を治すのが最優先だ」
ハ「落ち着いたらなるべくはやく外殻に上ってほしいところだけどね。魔界の障気の影響はまだ未知数のところがあるし」
ア「そんなところにあいつを置いて来たのか?」
ハ「レックだってそんな事は分かってる。それに今ルークに必要なのは同じレプリカであるレックでしょう?」
ア「まぁそれもそうだが……というかなんでお前がこっちにいるんだ?」
ハ「ヴァンには少し興味があって。何の為にルークのレプリカを必要としたのか。知らなくてもいいんだけど、やっぱり自分達のルーツは知っておきたいじゃない」
*****
ジ「ハイト! あなたは、もしかして……」
ハ「皆には言わないで下さいね。余計な心配はかけたくないんです」
ジ「…………」
ハ「そんな顔をしないで下さい。覚悟はしていましたから。それに、僕もレックもディストも、まだ諦めてはいません」
ジ「そう、ですね……私も私が導きだした結論が間違いであればいいと、思います」
ハ「おや、博士が自分の論を疑うなんて珍しい」
ジ「ええ、本当に」
ハ「本当は博士の智恵もお借りしたいのですが、僕等が助かったところで生きる世界自体がだめになったら意味がありませんしね。博士はそちらを優先してお願いします」
ネタは「俺設定版アビスでCPを組んでみる」で。
一応CPの設定は作らないつもりですが、公式ではありえないのを勝手に組むのが腐女子の職業病と言いますか。
ぼんやり作った組み合わせはあるんで、それは●で、他は○でいきます。
あ、お察しの通りBL(行き過ぎた友情)かただの友情です。
●ルークとアッシュ
当家版だとルークが短髪(究極の受)にならないし、二人とも基本的にツンデレなんですよね。私はアッシュも受っぽいと思ってます。ただ原作ではそれを上回る受がいたから攻なだけで……(ALのことね)。ツンデレ×ツンデレってどうよと思いつつ、多分当家版だとルークが一応攻、かぁ? という感じ。
●ハイトとレック
この二人は「背伸びして子育てした親」と「しっかり育った子供」のイメージです。もう背伸びしなくていいよ、の意味でレックが攻のつもり。まぁどっちも互いが大好きなんで逆でも全然あり。
○ルークとレック
レプリカs。こいつらは友情ですね。基本的にレックが先導しそう。
○アッシュとハイト
被験者s。これまた受同士なんですけど……どっちかって言うとアッシュが攻かなぁ。ここは馬が合う組み合わせです。
○ルークとハイト
やんちゃと保護者。やっぱりルークが攻かなぁ?
○アッシュとレック
一番よくわかんない組み合わせ。普段はルークやハイトを間に挟んでる。本質的に似てるから同族嫌悪みたいなのがあるのかも。仲悪いわけじゃあないです。
●ファブレ公爵とディック
こんなん作ってごめんなさい! 本編時だと公爵様は60歳近いんで、メインはホド戦争以降位です。ほら、シュザンヌさんは体弱いからあんまりきついことできないじゃないですか。それでディックが代わりに、みたいな。シュザンヌさん公認です。ディックは傭兵やる前は身売りで稼いでたとかで抵抗が無かったりする。ただこの二人は体ありきの友情です、うん……。
○ディックとジェイド
ホド戦争絡み第二弾。こっちは本編中にディックが勝手に絡んできたらなぁと思ってる。ジェイドの性格って悩みますよね。鬼畜にするかツンデレにするか(自分に)鈍感にするか……。こいつらの場合はジェイドはノンケにしてディックの片思いくらいでいいかも。
○ラディウスとアッシュ
誘拐前ルーク(アッシュ)と誘拐後ルークが別人だと断じたのはラディだけです。他の人は誘拐のショックで記憶喪失になって残念ながら以前とは正反対の性格になってしまった、という認識でした。「昔のルーク様なら……」という感覚ですね。ラディは別人だから会っても意味がないというわけでルークとは一回位しか会ってませんでした。
で、ラディはイイ性格・腹黒・策略家というイメージの子なので当然、攻です。
○フィンとルーク
フィンはきまじめ・頑固・お目付け役の感覚です。ルークの傲慢さに救われた人。ファブレ家よりもルーク単体に忠誠を捧げている感じ。ま、ただの使用人なのですが。ルークは公式の場で敬語全開で喋らないといけない時はフィンとジェイドを参考にしてます。発言内容までマネしそうになってよく失敗しますが。
フィンは片思いですね。
○ラディウスとフィン
フィンは絶対ラディウスに遊ばれてると思います。ラディはフィンを気に入ってるんですよ。わかりにくいですけど。で、フィンはわかりにくいラディをちゃんとわかっている数少ない人。わかった上で遊ばれてあげてます。何ていい子なんだ……。
○雪国師団長とジェイド
この人は軍学校時代からの数少ないジェイドの本当に普通の友人です(ジェイドの友人という時点で普通じゃないという意見多数)。とにかく押しが強くて根性があって明るくて熱い感じです。攻ですね。
○近衛兵長とピオニー
この人はピオニー一人旅時の護衛さんです。この人は受かなぁ。
●アレクとカンタビレ
まぁ言うまでもないけど。でもこいつらはいつまでたっても友情のままだなぁ。
ひとまずBLはこんな感じ。
NLはレックと研究員の子で一組目。裏設定くらいですかね。レックのお嫁さんです。ハイトは生涯独身。多分レックのところに転がり込んでる。
もう一組はディストの部下達です。男女一人ずつ、ホド出身の人をヴァンから回されたんです。ただハイト達が城から逃がされてしばらくして女の方が自殺というとんでも設定がありますが。そんで残された男とディストでCP組めるかなぁなんて思ってますが。
ダアト勢の外見年齢近い組(カンタビレ・イオン・アッシュ・シンク・アリエッタ・アニス・追加緑っ子)も仲良しです。あんな軍の中の子供達だもん。仲良くなるでしょ。少なくとも顔見知りではあるはず。アレクはそれを少し離れて見てる感じです。
「何、してるんだ?」
「ハイトとレックの墓参り」
「だがお前は……」
「うん、生きてる。僕の中にハイトの記憶もレックの記憶も、感情も、全て残ってる。でも、『僕』がこうして存在する以上、二人は死んでしまった」
「そう、か……」
「でも二人は生きている」
「おい」
「僕の中に」
「……結局のところ、お前はお前、ハイトはハイト、レックはレック、……そういうことか」
「僕にもよくわからない。僕は僕を定義しない。アッシュがそう思うのなら、そう思えばいいんだと思うよ。僕は僕だけど、多分ハイトにもレックにもなれるから」
「そんなことはねぇだろ。ハイトはレックを知らなかった。レックはハイトを知らなかった。どちらも知ってるお前が、どちらかになることはできねぇ。お前はお前だ、レックハイト」
「そっか。そう呼ばれると、なんだかくすぐったいな」
「自分の墓参りは終わったか?」
「うん、もう終わり。付き合ってくれてありがとう、アッシュ」
(100104)
もしハイトとレックで大爆発が起こったら、の話。当家のアシュルクは完全同位体ではないので赤毛には大爆発は起きてないです。レプリカsをどうやって生かすかを考え中。ハイトとレックに関しては大爆発で統合されちゃうかもだけど。
そう言った男は実に苦々しい顔をしていた。対照的に告げられた子供達は淡々としている。
「殺すんですか? 僕達を」
「そんなことできるわけがないでしょう」
男が子供二人を両腕に抱え込む。二人の肩に顔を埋めた。
「ですが、私ではあなた達を逃がすことはできません。だから、逃げてもらいます」
「それって逃がすのと変わらないのでは?」
「全然違いますよ。失敗すれば、あなた達は死にかねない」
男の子供を抱える腕に力が篭る。
「このような手段しか取ることの出来ない私を許してください」
その搾り出したような声に、子供二人は顔を見合わせた。
「許してくれ、だって。ハイト」
「そうだね。レックはどう思う?」
「ディーが悲しいのは、やだ」
「僕も同感。だからディスト、そんなに悲壮な声を出さないでくださいよ。よく分かりませんけど上手くやればいいんでしょう?」
「何すんの?」
顔を埋めたままのディストは黙ったまま。
「ディスト?」
「ディー?」
ハイトとレックがディストの銀色の髪に視線を落とす。
「あなた達という人は……折角人が真面目に深刻に言っているというのに」
「真面目じゃない深刻ってどんなの?」
「さぁ?」
「こら! 人の話は最後まで聞く!」
「「はーーい」」
「はいは短く!」
「「はーい」」
「……もういいです。いいですか、あなた達は完全同位体です。それは分かっていますね?」
「何回も聞いた」
「同じく」
「完全同位体同士では互いの音素を干渉させて超振動を発生させることができます」
「そうらしいですね」
「難しい話だったらオレまだわかんないぞ」
「やってください」
未だに顔を上げずにディストは言ってのけた。
「どうやって?」
「……つまり、コツとかも何もわからない状態で超振動を引き起こして僕とレックを分解して、ここじゃないどこかに再構成しろと?」
「物分かりがいいですね、ハイト」
ディストが顔を上げた。
「再構成に失敗すれば即ち死です。私はあなた達二人のこの場からの消滅を持って処分したと報告します。ですからせいぜい派手にやってくださいね」
「……どうやって?」
「わかりました。レック、基本的な制御は僕がするから。失敗したら一緒に死んでくれる?」
「おう! ハイトが一緒なら怖くないぞ!」
「嬉しいけど断言されてもなぁ……ありがと」
「あぁそれと」
ディストが二人から手を離して短剣を取り出した。
「気休めですが、これでレックの髪を切ってください。理論的には乖離した第七音素が超振動の助けになるはずです」
「オレの髪切っちゃうのか」
レックの髪は長いところで腰くらいまである。
「嫌?」
「そうでもない。けど、勿体ないなぁって」
レックが自分の髪を摘んで弄ぶ。
「そのナイフは差し上げます。護身用にするなり、売り飛ばすなりしてください。それなりの値にはなるはずですから」
それでは、と言ってディストは踵を返し、だがすぐに振り返った。
「本当に、すみません」
「謝らないでください、ディスト」
「必ず、生きて下さい」
「はい、必ず。今まで長い間お世話になりました」
「こういう時はさようならって言うのか?」
「ううん。またね、だよ」
「そっか。じゃあまたな、ディー」
「僕たちにはまだあなたが必要です。これからもよろしくお願いしますね」
笑顔の二人に釣られてディストも少しだけ笑みをこぼした。
「本当に、いつまでも手のかかる子供達ですね」
「あなたの子ですから」
その言葉に一つ頷いて、それでは、と告げてディストは歩き去った。
「行っちゃったな」
「そうだね。……始めようか」
「本当は、ディストはこうなる事を覚悟していたのかもしれないね」
自分の髪を短剣で切り落としていくレックを見ながらハイトは呟いた。
「そうなのか?」
「あの人は、絶対に君の髪を切らせようとしなかったから」
「オレはそれだけじゃないと思うけど」
地面に落ちた自分の髪の房を見つめてレックは言った。
「ディーは、この光景を見たくなかったんじゃないかな」
地面の黒い髪は端の方から次第に色が薄くなっている。二人が眺めている間にもどんどん髪は短くなっていった。
「確かに、あまり気分のいいものじゃあないね」
「こういうの見てるとオレがレプリカってことを実感する」
最後の一筋が消え入るのまでを二人は見届けた。
その日。謎の大爆発がルグニカ大陸南部のコーラル城近郊で発生。駆け付けたキムラスカ軍はその破壊痕を当時行方不明だったファブレ公爵家子息ルークによる超振動のものと断定し、周辺を隈なく捜査した。その結果ルークは捜索の手伝いをしていたローレライ教団のヴァン謡将によってコーラル城で発見される。だがルークは重度の記憶障害を発症しており、真相は誰にも知られることはなかった。
――僕がいるから、怖い夢なんて見ない。
――だからぐっすりお休み、ルーク。
「これはこれは……どうしたもんかね」
「ふぁぁあ、あ……おはよう、ガイ」
「あぁ。おはよう、ハイト。……何があったんだ?」
「ん? あぁーこれ? 眠れなさそうだったから僕が添い寝してあげたんだ」
「違ぇ。お前が寝れないから俺んとこに押しかけたんだろうが」
「ん、おはよう、ルーク」
「…………だから俺はアッシュだと」
「お、は、よ、う」
「…………おはよう、ハイト」
「ガイには?」
「……オハヨウゴザイマス」
「お、おぉ……おはよう、アッシュ」
「よしよし。ガイ、もしかしてものすごく遅かったりする?」
「いや、二人ともいつもは早いから、今日はどうしたのかと思って様子を見に来たんだよ。まだ寝てても大丈夫だ」
「……寝過ぎだ。起きる。どけ、ハイト」
「わ、ちょ、蹴るのは無いんじゃない?」
「邪魔だ」
「元気になったみたいで、よかったかな?」
「あいつ最近眠れてなかっただろう? 何したんだ?」
「特には何も。隣で子守唄を歌って背中を叩いてたくらいだよ」
「……よくそれを受け入れたな」
「まぁ眠かったみたいだしね。文句を言う元気も無かったみたい。しばらくしたらころっと眠ったよ。僕が寝たのはそれからだからほとんど寝てないんだけどね……よっと。アッシュー? 洗面所まだー?」
でもイメージは修学旅行の朝
*****
「いっ……てぇ」
――もしもし? レック? 繋がっちゃった?
「ハ、イト……?」
――聞こえてるみたいだね。頭痛大丈夫?
「だい、じょーぶ……これ、何?」
――僕の方に流れてくる第七音素の流れがあってね。嫌な予感がしたから辿ってみたんだけど……ホントに大丈夫?
「心、配されても治んないから、はや、く……」
――ごめん。手短にいくよ。レックの音素が僕に流れて来てる。原因はおそらく超振動で、多分僕達は大爆発が始まりつつある。極力フォンスロットを閉じて、音素が逃げないようにして。譜術は使うのも使われるのもまずい。それでできるだけ早くディストに会って欲しい。僕も見つけたらこれで連絡するから。それと頭痛の原因、できれば考えておいて。
「わか、った……」
――それじゃあ、切るよ。負担かけてごめんね、レック。
「へーきだ、って」
*****
「ねぇアッシュ。ディストに会いたいんだけどどうすればいい?」
「ディスト? あんな奴に何の用があるんだよ」
「ちょっと命に関わることで出来るだけ早く相談したいことがあるんだ。ダアトに行けばいいかな?」
「ちょっと待て。命に関わるって何だ」
「大爆発って何って博士に聞いたらわかるから。それで、ダアトでいいの?」
「ダアトに行ったところで会えるかはわかんねぇよ。だがそれしか無いだろうな。あいつの副官のライナーって奴ならディストと連絡をとれるはずだ」
「じゃあライナーさんに会えばいいの? どうやって?」
「ライナーに直に会うのもキツイな。あいつは本部に篭りきりだ。ダアトの警備には第六師団員も配置されている。そいつらに頼み込んでカンタビレに面会させて貰え。あいつなら事情を話せば協力してくれるはずだ。カンタビレが無理なら副官のアレクでもいい」
「カンタビレって……あの第六師団長の?」
「あぁ。上手くいけばシンクやアリエッタ辺りを使って探してくれるかもしれない。まぁそれが無理でも部下を使えばすぐに見つかるだろ」
「? カンタビレって君達と仲が悪いんじゃあなかったの?」
「誰がそんなことを言ったんだ?」
「あー、いいや。それで、そんなに簡単に面会できるの?」
「俺からの使いということにしておけ。俺が『身長は伸びたか』と聞きたがってきた、とでも言えば通してもらえる」
「……すごい合言葉」
*****
「大丈夫。怖くないよ。俺は消えるんじゃ、ないから。ハイトと一緒に生きるんだ。だから、怖くない。怖くない」
「いいのか、あいつの傍にいなくて」
「……怖がらないと、だめなんだよ。それがレックがレックとして生きているということ。僕の一部になるだけだから、元に戻るだけだから怖くない、なんて思ったら駄目なんだよ。そうして僕は、他人を喰らって生きる。それからの僕が僕であるかどうかはわからないけど、でも二人分生きる。生きなきゃいけない」
「……まだ、そうと決まったわけじゃない」
「そうだね。まだ大爆発が起きるかはわからない。だけどねルーク。当事者である僕らにとっては同じ事なんだよ。僕らが恐れているのは未来の死なんだから」
*****
大爆発ネタ。あくまでもパラレルです。誰も死なないハッピーエンドが目標なので。
・各キャラの改変具合
ルーク
傲慢・我が儘は始めから少なめ(俺様ではあるけど)。物知らずな常識人。無知であることは自覚している。断髪後は原作-卑屈みたいな感じ。アクゼリュスに関しては手を下してないし、レムの塔も初めからアッシュとの共同作業で死ぬことは無いし(レプリカは死ぬ)、音素乖離も無いので原作の悲壮感が無い。
ティア
今のところ特に予定無し。
ジェイド
裏設定として預言が詠めない体質。生まれる時代を間違えてしまった人。もはや人の皮を被った人を超越してしまった人で、創世暦時代にタイムスリップしても一月くらいいれば天才と呼ばれるようになりそうなくらいには天才。生まれる時代を2000年ほど間違えた人間。現在もジェイドしか理解できない事象をたくさん知っているがジェイドしか理解できないのであんまり意味はない。それだけ頭がいいくせに運動能力も超一流とほんとに人外。譜術能力ももはや人外でまさしくマルクトの人間兵器。譜術を使えば一人で師団一つは潰せると思う。精神面も相当他人とは違っていて人間味が無かったのをピオニーとかが頑張ってなんとか現在の形に。ジェイドを変えるのはやっぱり赤毛であってほしいのですが、ジェイドの友人になるのはルークだけだと思う。
アニス
カンタビレの指導のおかげで誰彼構わず拝金主義を発揮することはない。モースの件についてはカンタビレが実は借金を肩代わりしたため逆らってもいいのだがカンタビレの指示でモースに従っているふりをしている。何をモースに伝えたかは逐一カンタビレに報告しているが二重スパイとかは特にしていない。ダアト組はカンタビレの干渉がすごいっす。
ガイ・ナタリア
まぁ原作どおり。
アッシュ
原作とは正反対でルークを嫌っていない。レプリカ誕生前にハイトと出会って全く新しい価値観を植え付けられた。貧乏くじを苦笑しながら引きまくる年少組のお兄ちゃん。口が悪いのと眉間のしわは相変わらず。
シンク・アリエッタ
普通にイオンもアニスもアッシュも交えて仲がよかったりする。シンクはディストに世話を焼かれてる。
ディスト
大爆発回避法を見つける為に六神将に。原作の原型をほぼ留めていない。ジェイド化してる
カンタビレ
オリジナルイオンに預言を受け付けない体質(異世界人だから)を気に入られて導師守護役に。イオンが死ぬ直前に詠師職に叙せられて第六師団長となる。外見と中身のギャップのおかげか年上の多い部下達にも慕われている模様。人心を掴むのは上手い。下手したらルークよりも長くオールドラントにいるが歳を全然とらない。正体はTOD2ED後のリオン。
考えたことのあるオリキャラ達
・ルーク付き使用人 フィン
天涯孤独な元下級貴族。
「あなたの傲慢さに救われたんです。どうかそのことまでは、否定なさらないで下さい」
・元白光騎士団員 ディック
ルークの体術の師。ルークを屋敷から連れ出したことがバレて首になった。現在は昔のようにケセドニアで傭兵生活。
・もしかしたらルークだったかもしれない人 ラディウス
アッシュの一日前に赤毛緑瞳で生まれた中流貴族。バチカル時代のアッシュの数少ない友人。王位継承権を持つがその気はない。下手するとナタリアと結婚させられかねない。
・ディストの部下二人
男女でディストに代わってハイトとかレックの世話もしていた。ホド出身かな? 本編時では女の方は良心の呵責に耐え兼ねて自殺。男の方はまだディストの部下を続けてる。
・もう一人の緑っ子
イオンレプリカのうちの一人。言語能力に著しい劣化が見られ話すことができない。失語症状態。耳・目などは健全。髪は染めているので緑ではなく、瞳の色を変えるために譜眼を施した。譜眼を制御できる辺り元から譜術の能力があったと思われるが、それに譜眼も相俟って譜術能力は被験者よりある。詠唱破棄で譜術を展開できる鬼才。
*****
・時間は最初のルークの帰還の時
「公爵家の屋敷に侵入して子息を害した身で、よく再びここに来る気になりましたね。身の程を知ったらどうですか」
「フィン! 俺の友人だ!」
「お言葉ですがルーク様、本来ならばこのような所業を行った輩は死罪となってもおかしくは無いのですよ。それを簡単にお許しになってしまわれると他の者に示しがつかなくなります。それでもそうおっしゃいますか」
「ティアに俺を害す気はなかったし、事実俺は何もされていない。ありゃ事故だったんだ。示しがつかないったって、結局は公爵家の面子が潰れたって事だろーが。俺を逃がさない為の警備は万全だったくせに、外からの侵入に対してはザルだったっつーわけだ。為すべき事はそっちの強化であって、ファブレ公爵家に対しては何の敵意を持っていなかったティアを罰する事じゃねぇ。どーだ」
「そこまでお考えでしたら私からは何も言いません。出過ぎた事を申し上げました。失礼いたします」
「何よあいつ。感じ悪ーい」
「アニス。そんな事を言うべきではありませんよ」
「はぁい。ごめんなさい、ルーク様」
「え、いやあれは明らかに感じ悪いから別にいいけど。しっかしティアに対してはあんなに言うのに、敵国が服着て歩いてるジェイドが屋敷に入るのは何のお咎めもないのな」
「おや、一応私は和平の使者ですが?」
「そんなこと屋敷の下っ端連中が知ってるかよ。さて、と……皆、時間はあるか?」
「ええ、ありますけど……?」
「よし、じゃあこの辺がいいかな。ガイ」
「はいはい、テーブルだな?」
「頼んだ。俺は厨房に行ってなんか無いか聞いてくる。それとティア」
「わ、私?」
「お前以外に誰がいるんだよ。母上のところに寄るから来いよ」
「……ルーク。何があるのかさっぱりわかりませんが?」
「へ? ……あぁ悪ぃ、茶会だよ。流石に俺の部屋にこの人数はきついからな。皆は花でも見てちょっと待っててくれよ。んじゃ行くぞ、ティア」
「あ、ガイ。お茶を用意したんだけど何処に持って行けば……中庭?」
「当たりだ。やっぱり紅茶をいれに行ってたんだな」
「ルーク様の御友人なんだから当然だよ」
「付け合わせは何かありそうか?」
「ルーク様に出すおやつを用意していたから多分大丈夫。お茶会にするなら持って来るように言いに行かないと」
「あー、それはさっきルークが行った」
「……御自分で?」
「ああ」
「はぁ……そういう事は周りの者に申し付けろと何度も言ったのに」
「まあいいじゃないか、ルークらしいよ」
「そうだね、ルーク様らしい。……本当に、帰ってこられてよかった」
「お、来た来た」
「わぁー、おいしそーう♪」
「そういえばすっげぇ甘いと思うんだけど大丈夫か? 特にジェイド」
「私は大丈夫ですよ」
「俺は苦手なんだが? ルーク」
「お前は諦めろ。ちゃんと食ってやるから」
「な、酷いぞお前!」
「今更だな。ほーら端っこ、ちょっとはマシだろ」
「ルーク様ぁ、私これがいいです」
「はいはい、どーぞ。ティアは?」
「わ、私はどれでもいいわよ」
「遠慮すんなって。美味そうなところは……っと、ほら」
「あ、ありがとう……」
「イオンはどうする? まぁ後三つしかねーけど」
「僕は……そうですね、その左端のをお願いします」
「はいよっと。ジェイドはこいつな」
「おや、私には聞いてくださらないのですか?」
「大人なんだから我慢しろよ」
まず完全にわかっているのが
『2002年=ホド崩落=ヴァンが11歳』です。
後作中で結構しっかり設定されているのが『ガイが5歳の時にファブレ公爵が攻め込んできた』です。これは一つ目よりも前と言うのが大前提。
後ティアの生年ですが、ホド崩落の後に生まれていることから2002年、もしくは2003年であることは間違いありません。それでPGによると13月生まれ。誕生日は固定であるとすると、2002年に身篭った状態で2003年のほとんど終わりの13月に誕生となるとお母さんどんだけとなるので(しかもオールドラントの一年が765日と考えると2年以上。エース(OP)か)2002年の13月に間違いないでしょう。
ここで、マイ設定ですがアッシュの誕生日を、成人の儀のあった13/48とします。わざわざこんな中途半端な日に設定したからには意味があると思うからです。
とするとティアもアッシュも13月生まれ。生年は2000年と2002年。これで公式年齢1歳差は無茶だ。
公式年齢と誕生日が正しいとするならば、アッシュかティアの生年がおかしいことになります。ただこの二人の生年は預言に詠まれたり預言から割り出したものなので少し変えるのは無茶かなぁ……。
で、誕生日がおかしいとすると、いじりやすいのはティアです(13/1に設定した意図が見えないから)。ティアがナタリア(1/37)よりも早く生まれていれば、ティアとナタリアの誕生日の間の日が年齢の基準と考えてやっとつじつまがあいますね。が、ここまでするのは面倒です。私は公式年齢が間違っているとします。ティアは15歳。
あとアリエッタですが、崩落の時に1歳でもまぁいいんですけど、ティアとの対比(二人は同い年)も考えていたのかなぁと思うと年齢は下げるべきかなぁと思います。というわけで15歳。一応PGには2002年生まれとなってるし。
次、ヴァン。
ヴァンは1989年生まれとすると11歳であるのは2000年から2001年になるので生年をいじります。
ティアの年齢を下げたことも考えた上で、年齢の基準は2018/1/1とします。皆が誕生日を迎える前。年齢を単純計算するなら2017年で皆が誕生日を迎えた後とした方が楽なんですけどね。ゲームの開始が2018なんで。
で、この基準の下、ヴァンの公式年齢が正しい(27)とするとヴァンの生年は1990年生まれとなります。1990年生まれなら11歳となるのは2001年から2002年。2002年に11歳でヴァンはホドを崩落させていますから、ヴァンは誕生日の前にホドを崩落させています。
で、次はガイ。
この人は公式年齢が正しいとすると5歳の誕生日(って普通4歳から5歳になる日だよね?)が2001年になります。誕生日(5/41)も正しいとすると、2002年に崩落する為にはファブレ公爵が攻め行ってから早くても8ヶ月に崩落する必要があります。8ヶ月もあったら、流石にマルクトも研究を撤退させられると思うのですが。ホドを崩落させるまでもないよね。ちなみに私はガイの誕生日から崩落までは通信手段の乏しさを全力で考慮しても2ヶ月が限度だと思ってます。
と、いうわけでガイには2002年に4歳から5歳になったということにします。とすると生年は1997年で年齢は20に変更ですね。
まとめ。
ティア→2002年生まれの15歳
ガイ→1997年生まれの20歳
ヴァン→1990年生まれの27歳
で、預言には要約すると「崩落から季節が一巡りするまで戦乱が続く」、誰かの台詞では「神託の盾の介入から半年で終戦」らしいです。ガイの誕生日も考慮して、13ヶ月で季節が一巡りするとすればまぁ終戦は2003年ですね。
放っておいても収まるはずの戦争に何故神託の盾が介入したのか、は結構考察しがいがあると思うのですがそれはまたの機会に。ホド戦争は本当に考察しがいがあるなぁ。
とあるサイトさんで「まさか半年で季節が一巡りするのか?」という解釈をしてあるところがあったので一応考えてみたんですけど、秘預言が詠まれた2000年前と現在ではオールドラントの公転速度が半分にまで落ちた、というのはどうでしょうか。預言が詠まれた当時では現在でいう半年で季節が一巡りしていたという感じで。まぁ肝心の公転速度が落ちた理由がわからないんですけど。
話は飛びまくりますが、ハイトとレックの英字の綴りです。
ハイト→Haite
レック→Rec
日本語の語感で決めた名前なんでアルファベットがしっくりこない……orz
ハイトはもうこれくらいしか綴りが浮かびませんでした。ローマ字っぽいけど日本人ならハイトと読んでくれるはず。
レックはもう録画にしか見えないんですけどね。ルークがLから始まるんでRから始まる名前にしたかったんです。Rexとしてスの音を発音しないというのもありかなぁと思ったんですけど、まぁわかりやすさ重視。というかここからめんどくさい裏設定が派生したんですけど。
どっかでちらっと書いたとおりハイトはホド系の人と言う裏設定(都合が悪くなれば闇に葬り去られる仮設定のこと)があるんですよ。そんでホドということで本名がレックハイト。(かなりどうでもいいですがレックと言う名前は元ネタはとある一次創作サイト様の長編の主人公の名前なんですよ。こういうのは一応パクりましたと報告すべきなのか悩む。名前はなぁ、レックなんてそんなに凝った名前じゃないし。でも私の頭にはなかった名前)
ハイトはホド文化圏で育ってないんで略称のハイトの方がむしろ親しみを持っているんですけど、レックハイトという名前を親が付けたんだなという認識はあります。数少ない両親がいた証明。で、自分のレプリカに本名の片割れをあげた、というわけ。裏裏設定としては、レックハイト自体はRex Haiteと綴ってレックハイトと読んで古代イスパニア語では何とかの王みたいな感じの意味(何とかの部分を考えてない)だったりする。
「ちょうど今日で折り返しだな。さて、後何日だ?」
「オレに聞くのかよ。折り返しって事はちょうど半分だろ。それで二週間だから、えーっと十四日で……。……ん、あれ? 後六日か?」
「指で計算するなよ……。後七日だよ。ニ掛ける七は?」
「えーと、ニ足すニが四で、もっかい足して六で、……あ、十四だ」
「九九も覚えないとな」
「ちぇー。まだあんのかよ」
「まぁそう言うなって。ちなみにだなルーク」
「なんだよ?」
「二週間の半分は?」
「馬鹿にしてんのか? 一週間」
「一週間は?」
「七日だろ。もう覚えたからな」
「部屋から出られないのは後何日?」
「だから七日って……おぉっ!?」
「こっちの方が楽だったな」
「そーゆーことは早く言えよ!」
「何事も経験だろ?」
******
ラディウス
「民の声に耳を傾けずに、教団の妄言に諾々と従う事が王の努めなのですか。それではキムラスカ・ランバルティアはローレライ教団の属国でしかない!」
「王家の血を引いていようがいまいが、ナタリア様は間違いなく王女としての努めを果たしておりました。彼女以外に我が国キムラスカの王女はおりません! 陛下、どうかお考え直しを。王族、更には我々貴族が尊ばれるのは血が尊いからではなく、行いが尊いからでございましょう?」
*****
「記憶喪失ですか。あなたという人は本当に飽きさせませんねぇ」
「俺を知っているのか?」
「記憶を失う前のあなたならですけどね」
「そうか」
「記憶を取り戻したいならならまずはバチカルの王立学問所の研究院へ向かうことです。あなたの知り合いが多くいますから」
「俺は研究者だったのか?」
「思い出せばわかりますよ」
*****
目を開けて、まず自分は思ったわけだ。「ここどこだ?」って。
全く記憶にない、とそう思った時にはその記憶すらないことに気付いた。正確に言うと思い出。人は一人では生きられないとは知っているけど、だったら自分が誰といたのかも分からない。
立ったままというのもどうかと思って(幸いながら体は無事のようだ)ふらふらすると、でっかい木の中から妙な音がして。
覗き込んで今に至る。
「みゅうぅ」
「みゅみゅ?」
「みゅみゅみゅみゅ!?」
「みゅっ!」
みゅーみゅー五月蝿い色鮮やかな魔物(こんな動物はいないはずだ)の巣窟の片隅に座りこんで、俺はこれからについて考えていた。手元には土の付いた果物。ここの住人達はひとまず俺を追い出す気はないらしく、こうして食事も提供してくれる。ありがたいがいつまでも頼るわけにはいかない。こいつらの備蓄だって少ないだろうし、俺だって果物だけでは生きていけないだろう。かじってみるとやたらと渋くて食べられない果物もあった。多分こいつらは自分達が食べられる果物を出しているのだろう。だとすると人には毒となるような物も入っているかもしれない。そんなことを言っていたら果物はおろか水すら飲めなくなるのだが。
よし、とりあえずは人だな。近所に集落でもあればいいんだが。
近くで喋っていたやつらの一匹につんつん、とすると話していた全員がこちらを向いて口々にみゅーみゅー言った。なぜかこいつらは俺の言葉がわかるらしいが、俺にはこいつらが何を言っているのかは皆目わからない。
「この辺りに人が住んでいるところはあるか?」
聞いてみると途端にこいつらは萎縮した様子で、それでもみゅーと返事した。どうなってるんだ? 目線をちょうどそいつらと同じようにして(こうなると俺の顔は地面スレスレだ)もう一度問い掛けた。
「知ってるんなら、明日にでも案内してくれるか?」
みゅみゅみゅ、と頷いた。
明日に、と言ったのには訳がある。方角を確かめたかったのだ。ついでに太陽の昇る方角を確認すればここが北半球か南半球かも特定できる。太陽の北中高度も確認しておきたかった。今がいつなのかすらわからないが、大まかな緯度くらいは自分で求められる。少しでも俺にまつわる確かな事がほしかった。
と、つらつら考えて俺の思考は少し止まった。北中高度? ……と言う事は太陽は北に昇るもんだ。ということは俺は南半球の人か? つまりは高確率で俺はキムラスカ人? これはかなり有力な情報だった。こうなると俄然記憶を失う前の俺に興味が沸いて来た。人里に出て、ここがキムラスカだったらバチカルに向かおう。そうじゃなかったらまずはキムラスカに向かおう。シャリっと林檎にかじりつくとみずみずしい甘味が口いっぱいに広がった。美味いなぁと思って林檎を見ると焼き印が押してある。A・N・G・A・V・E……エンゲーブ? 何でエンゲーブ産の林檎がこんな森の中にあるんだ? 実はこいつらは餌付けされてたのか? よくわからなかったが、とりあえず美味かった。
夕方になって俺はうろの外に出た。太陽は向かって左側に沈んでいた。西はあっち、と確認して俺は森の中が真っ暗になるまで葉の隙間からの夕日を眺めていた。
*****
次の日。決して近いとは呼べない距離を歩いて(魔物の感覚は恐ろしい)俺は人が住んでいる集落に到着した。案内してくれたやつは俺が集落に入る頃には姿を消している。やたらと人慣れしていると思ったが、魔物は魔物、人里には近付かないようだ。ただ、お礼を言いそびれたのが気になった。落ち着いたら果物でも持って行こう。
柵の中でブウサギがのんびりと草を食んでいる。
*****
「お前達に追い付かれるとヴァンにとって都合が悪い。かと言って最後までここにいられると僕にとって都合が悪い。だからとでも言うわけでもないが、とりあえずお前達はここで足止めだな」
「何者ですか」
「名が必要か? 神託の盾騎士団第六師団長のカンタビレだ」
「我々が先に行くとどんな不都合が?」
「何だ、知らなかったのか? 分かっているからそんなに血相を変えているのだと思ったのだが」
「……話が違うじゃねぇか、カンタビレ」
「お前は通す。さっさと行け、アッシュ。厳密に言うと僕に要請されたのはそこの死霊使いの足止めなのでな。そこまでの相手なら一対一で戦ってみたかったが、生憎と僕は本調子ではない」
「ほう……それは我々には好都合ですね。一応聞きます。通してはもらえませんか?」
「律儀だな。今は通さん。大体、そこまで急ぐ必要は無いだろう? お前達は何もできないのだから」
「あなたの都合が悪くなるならそれで結構」
「なるほど、僕も随分嫌われたものだな。だが……残念ながらもう時間だ」
ヴァン側のように見えるカンタビレ。アレクとはまだ再会してないもよう。
*****
「一つ質問なんですけど、ガイラルディアとかメシュティアリカみたいな長ったらしい名前はホド特有のものなんですか?」
「俺が知ってるホドの住人ってのも限られてるからなぁ」
「私も兄さんしか知らないから、はっきりとは言えないわね」
「私が知っている限りではわざわざ長い名前をつけて普段は略称を使う、という風習はホド特有のものでしょうね。どうかしたのですか?」
「いえ、僕の親につけられた名前はレックハイトと言うんで、もしかしたらホド系の人間だったのかも知れないと思いまして」
「そうだったのか? 俺はそんなの初耳だぞ」
「そりゃまぁ、言ったことなかったし」
「何でだよ」
「君に僕の名前の一部をつけたというのが気に入らなかったから。レックを僕の一部だと自然に考えたということでしょう?」
「俺は俺で、でも俺はお前なんだから俺は気にしないけどな。そんなことよりも、俺はハイトの名前を貰えたのがすげー嬉しい。ありがとな、ハイト」
「何でそう直球でくるかな……。どういたしまして。君がそう言ってくれて僕も嬉しいよ」
「ご両親の名前がわかるなら、ペールにでも確認をとろうか?」
「それが全然覚えてないんですよ。フローレンスが母方の姓であることくらいしかわかりません」
「まぁ、一応聞いてみるか」
*****
ルークは子供。
レックは大人になりつつある子供。
ハイトとアッシュは子供ではいられなかった大人。
というイメージでお送りします。
*****
「心配すんな。お前は何もしてねぇよ。まだ寝てろ」
*****
「悔しいよ。俺なんにもできなかった。本当は俺が背負うはずのもの全部背負って、あいつは俺に心配すんなって言って笑うんだぜ」
「俺もそうだった。いや、今もそう、かな」
「レックもか?」
「ハイトはいつだってずっと俺の前では俺の見本だった。早寝早起きご飯を作って掃除して洗濯もして、わざわざ嫌いなもん作って俺の前で『これ嫌いなんだよね』って言いながら笑って食べてさ。学院に入るまで俺は嫌いなものを残すだなんて考えたこともなかった」
「うわーガイよりスパルタ」
「それでな、学院に入ってハイトと同い年くらいの奴らを沢山知って、俺はようやくハイトが出来すぎだった事に気付いた。ホントはもっと馬鹿だってやりたかっただろうし、家事なんかするより遊びたかっただろうな。なのにあいつは俺がいるから完璧の皮を被って、自分が皮を被っていることにすら気付いていなかった。そう思ったら無性にいらいらしてさ」
「あーわかるわかる! 俺の我が儘をホイホイ聞くガイ見てたら殴りたくなったもん俺」
「それで聞かなかったらもっとむかついたんだろ?」
「う、うっせー! 話続けろよ」
「はいはい。で、なんでそこまでするんだよ俺はガキじゃねぇ! って思ったら唐突にわかっちまった。ハイトにとっては俺はガキなんだって。そしたらもう悔しくて悔しくて。それからはハイトの真似するのやめて、最近やっと少しは俺の事を対等に見てくれるようになったのかなと思ったら今度は置いていかれるし?」
「そーだよな……みんなから見ても、まだまだ子供だもんな、俺……」
「だから、なんだろうな」
「何が?」
「ハイトは俺みたいなのを抱えて、子供ではいられなくなった。アッシュだってそうなんだろうな。あいつらは、俺達に自分にはほとんど無かった子供時代を重ねて見てる。少しは甘やかされてやるのも俺達の仕事だよ」
*****
「大丈夫? アッシュ。だいぶうなされていたけど」
「ハイト、か……。悪ぃ、起こしたか?」
「慢性的に寝不足の人にそんな心配されてもね。そんなので昼間ちゃんと戦えるの?」
「体を横にしてるだけで十分だ」
「そんなわけないでしょ。昼間に倒れて皆に心配かけるのは本意じゃないでしょう? 博士にでも睡眠薬を頼んでみたら? 博士が嫌だったら僕でも調合はするし……」
「いいったらいいんだよ! 毎度の事だ、しばらくすりゃあおさまる」
「ルーク……」
「それは俺の名じゃねぇ。俺はアッシュだ。それでいい」
「……本当に、僕等は似た者同士だね。そんなことばっかりしてたらいつかルークに怒られるよ?」
「……おい、何をする気だ」
「何って、添い寝?」
「ふざけんな」
「僕って人肌があった方が寝付きがいいんだよね。どうして僕がこんな時間に起きる羽目になったのか、君は知ってる?」
「……今日だけだからな」
「うん。おやすみ、アッシュ」
ゲーム中の台詞>設定
の優先度でいきます。
ついでに年数に触れている発言をリストアップしますね。
タルタロス
ジェイド「ホド戦争が休戦してからまだ十五年しかたっていませんから」
カイツールの軍港
ガイ「七年前におまえ(ルーク)が誘拐された時、発見されたのがコーラル城だろうが!」
ユリアシティ
ティア「十六年前のホド戦争でマルクト領のホド島が消滅したでしょう?(中略)その時、兄さんと私を身ごもった母さんも、魔界に落ちた」
ケテルブルク
ネフリー「(前略)レプリカを作ってくれたんです。兄が九歳の時でした」
グランコクマ
ガイ「俺はホド生まれなんだよ。で、俺が五歳の誕生日にさ、屋敷に親戚が集まったんだ。んで、預言士が俺の預言を詠もうとした時、戦争が始まった」
ガイ「そう。俺の家族は(ファブレ)公爵に殺された。家族だけじゃねぇ。使用人も親戚も。あいつは、俺の大事なものを笑いながら踏みにじったんだ。……だから俺は、公爵に俺と同じ思いを味わわせてやるつもりだった」
セントビナー
ティア「ここはホドが崩落した時の状況に似ているわ。その時は結局、一月後に大陸全体が沈んだそうよ」
ダアト(ケセドニア崩落後)
ジェイド「今は新暦2018年です」
ユリアシティ(平和条約締結)
ジェイド「そうですね。被験者(ヴァン)は当時11歳の子供だったと記録に残っています」
地核
イオン「すみませんアニス。僕は誕生して、まだ二年程しかたっていません」
ローレライ「私を解放してくれ。この永遠回帰の牢獄から……」
以下考えてみた。
・ホドの崩落はガイの5歳の誕生日よりも後。
・預言に詠まれているのはホドの崩落が2002年にあったということだけ。
・そもそも崩落するはずのホドに攻め行ってファブレ公爵が無事でいることも疑問。ガルディオス家を襲った後にフォミクリーの事を知る前に帰ったと言うのか。そもそも崩落まで一月もかかったというのにティアママとヴァンが大人しく魔界に降りたのも謎。後津波も発生するのか? ホドの崩落がセントビナーほどゆっくりであったのなら、フェレス島が廃墟に成る程の津波は発生しないと思うんだが。
・結局はガイの5歳の誕生日からどれくらい後にホドが崩落したのかが問題。
生物Iの範囲での遺伝の話です。まぁ軽い話なんでお気楽にお付き合いください。
・赤毛は優性なのか劣性なのか。
初めは劣性だということにしたんです。私の中で。でもそうしたら異様に近親婚が増えるんですよね。「王は赤い髪かつ緑の目」という決まりがいつ出来たのかは分かりませんが、でもまぁ貴族社会に浸透するくらいには長いわけですよね。だから劣性だと絶対王位継承者がいなくなりかねない。かと言って優性にすると、今度は増えすぎる。キムラスカの貴族が殆ど赤色とかそんなの、嫌ですよ?
んじゃあ遺伝を複雑にしてしまおうというわけで、最低条件は「赤×赤の場合必ず赤になる」で考えようかと。
後男の子は赤毛になりやすいとかもあったらいいかなぁということで、性染色体に因子があるとして、男の子はXYだから、まずYに優性因子あるとすると赤毛の女の子が生まれない。却下。Xに優性因子があるとすると今度は女の子(XX)が絶対赤毛。これもどうかなぁと思ったんで、オールドラントの人間は男がホモでXXで女がヘテロXYなんだ! ということにしますね。それでX染色体にある因子は優性ということにします。こうすれば下手すると女の子が赤×赤で赤じゃないかもしれないけど、男の子は絶対赤毛。……で合ってるよね? 生物はあんまりやってないからわからないんだけど。極論すると赤毛のパパの息子は絶対赤毛です。
・何故「緑の瞳」なのか。
いやね、私の脳内設定では、
赤毛かつ緑目の決まりは「聖なる焔の光」を確実にキムラスカ王家に生まれさせるための措置だった
……ということになってるんですよ。秘預言を受けてキムラスカの繁栄の為に決めたんです。でもね、預言に書かれているのは赤毛だけです。じゃあ緑の瞳はどっから来たんだ? という疑問で。
私が思うに、キムラスカの王位継承権は初めは「緑の瞳を持つもの」が最低条件だったのではないかと。それで秘預言に赤毛が詠まれていると知って赤毛を追加したのかなぁと思います。こうなると緑の瞳の遺伝についても考えなきゃなのですが……面倒だ。
Am 弱い乾季のある熱帯雨林気候 季節風の影響による。
Aw サバナ気候 雨季乾季の差が激しい。ブラジル高原、アフリカ中央部。
BW 砂漠気候 一日の気温の変化が大きい。砂漠。
BS ステップ気候 砂漠よりは雨が降る。土壌がいい。アメリカ西部、オーストラリア内陸部
Cw 温暖冬季小雨気候 Awの緯度が高くなった感じ。中国南部
Cs 地中海性気候 夏に乾燥し、冬に適度な雨が降る。
Cfb 西岸海洋性気候 暖流+偏西風のおかげで気温の年較差が小さく、雨も平均して降る。緯度の割に暖かい。ヨーロッパ、ニュージーランド
Cfa 温暖湿潤気候 四季が明瞭。季節風の影響が大きい。夏は高温多湿、冬は寒い。日本、華中、アメリカ南東部等の大陸東岸
Df 亜寒帯湿潤気候 降水は少なめ。気温の年較差が大きい。ユーラシア大陸北西部、カナダ
Dw 亜寒帯冬季小雨気候 冬がとにかく寒い。気温の年較差がとにかく大きい。ユーラシア大陸北東部
ET ツンドラ気候 基本的に氷点下。短い夏に苔などが生える。
EF 氷雪気候 植物が育たない。
*****
・イスパニア半島→南アメリカ
基本af、森林でないところはaw、山(タタル渓谷を含む)はcw
・パダミヤ大陸→東南アジア
南部の山岳地帯はcfb、森林地帯がaw、北部はBSかcfb
・シルバーナ大陸→ロシア
ロニール山脈、西部がET、東部沿岸部がdf、東部内陸部がdw
・北ルグニカ→ヨーロッパ
西部cfb、東部df
・中央ルグニカ
北西部cfb、北東部cfa、エンゲーブ辺り一帯BS、セントビナー周辺am、その西はcw、フーブラス川周辺af、山はcfb、パダン平原cs、アクゼリュス近郊cfa
・南ルグニカ
南ルグニカ平野BS、南部df、山岳地帯dw、ET?
・アベリア大陸西アベリア平野cfb、東アベリア平野cfa、南東部df
・ザオ砂漠BW、南部の非砂漠地帯cfa
・ラーデシア大陸
メジオラ高原BW、東岸BS~cs
・アブソーブゲート、ラジエイトゲートEF
・ホド諸島cfa
*****
・エンゲーブ西の川→シジス川(流れが速い)
・ユリアシティの人口は約3000人
・シェリダンの周囲には大渓谷
・辻馬車は小型恐竜4頭で動く
・飛晃艇アルビオールは全長24×8メートルで定員は20名
携帯から。内容は以下の通……り?
・カンタビレ=リオン(TOD)設定。リオンはアレク(TOD夢主)と一緒にいろんな世界を(私に)飛ばされてるのでその一環です。TOD2後から飛ばされてます。被験者イオンが生きているころからオールドラントにいるのですが、年をとってません。まぁD夢と繋がってるようなパラレルのような、曖昧な位置づけ。外見はあの美少年のままなのですが、もう外見に精神年齢を合わせるのも面倒(というか面倒事を回避することが面倒)になってきた様子。今回はジェイドに皮肉を言ってます
・なぜリオンがカンタビレと名乗っているのか
・シャル→魔剣ネビリム リヴィ(オリジナルソーディアン)→聖剣何とかかんとか(ガイ様の) アレクもD2後に飛ばされてますが何故かD当時の外見にまで若返って老けません。とりあえず童顔ということにして眼鏡をかけて20代ということにしている。
・ハイトとレックに大爆発の危機が。最近アシュルクの株を全てこいつらが奪っているような気がするのは気のせいか。
・序盤の流れが決まったかも! 結局記憶喪失+親善大使派遣時から合流っぽい。
・ぷち設定
・オリキャラ元白光騎士団員さんの設定
・オリキャラルークの使用人さんの設定
アビスは作中での気候についての説明は少なかったかなぁと思うので、イメージと願望でがんばりたいと思います。
できればゲーム画面から明らかにわかる気候(砂漠だとか雪山だとか)以外も緯度や風、海流なんかを考えて考察したいものです。
※尤もそうなことを言って妄想が主成分なのでご注意を!
数少ない私物の服を着て、手には僅かながらの荷物と外套。この時期のあの場所は、まだ寒い。故郷を思うと、寒くないかと問う父の声が、上着を何枚もかけてくれた母が一緒に思い出される。優しい優しい、もう二度と来ない日が。
「行くのか?」
感傷を断ち切ったのは後から聞こえた主人の声だ。出発前の挨拶すらまだだったことをすっかり忘れていた。慌てて振り返り、頭を下げる。
「ルーク様。ご挨拶が遅れ、申し訳ございません。今から、出発させていただこうと思っております」
「そっか」
ヴァン様を除いて、誰かが屋敷を出る前のルーク様はいつも静かだ。その顔にはいつも羨望と諦観が浮かんでいた。空を望みながら諦めてしまった籠の中の鳥。生きながらにして羽をもがれてしまった鳥のなりそこない。
「行って参りますね」
誰が悪いというのではないのだけれど、ルーク様は屋敷を出られないのに自分は出られるということが申し訳なく感じられる。
「おう、行ってこい」
はい、と答えてルーク様の横を通り過ぎて扉に手をかける。ここは使用人の部屋なのだけれど、退出の挨拶をしようと口を開いた時にそれは聞こえてきた。
「帰って、こいよ」
感情が殺されたそれには、でも縋るような響きもあって。
「はい。必ず」
はっきりとそう答えることしか、できなかった。
(091201)
*
オリジナル設定満載すぎて申し訳ないアビス本編前。オリキャラ一人称でやたらとシリアスですが、この人はただ親の墓参りに行くためにちょっと里帰りするだけだったりする。もうちょっと設定あるけど、名前は全然考えてない。ルーク付きの使用人です。ルークは二十歳になっても屋敷からは出れないんじゃないかとぼんやりと思ってます。
背景描写が全く無いしルークの心情もあんまり考えてないし。ルークがどんな顔をしているのかがわからない。
一応設定
・ルークが超振動でティアと共にふっとぶ日の直前。
・語り手が帰って来たらルークがいない
・語り手さんはファブレ家の遠縁の下級貴族(男爵くらい)の息子
・父親はホド戦争で戦死、数年したら母親も死んで天涯孤独な身になったところをルークパパが使用人として引き取る
だから場面場面を書くしかないわけでだな。
結局ハイトとレックの加入場所がわかんない。
最近はコーラル城も書きたくなってきたのですよ……どうしよう?
とりあえず何度も変わっている前提条件
・ハイトのレプリカがレックで、二人は完全同位体。
・ディストは同位体研究を完成してる。
・同位体であること以外はハイトとレックは一般人。
・ハイトとアッシュは一応面識あり。
・アクゼリュスを落とすのはアッシュ。
・ルーク救済。
・逆行は無し。
・ひそかにカンタビレ=リオン(TOD)
・基本的に皆幸せが一番。
・ディストは大爆発回避の研究をするために六神将に所属。
こんなもんか。さーてどうしようかな……