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小説置き場。
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不良二人にやたらと愛される真面目学級委員長

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 どうしてなのだろう。
 弱いポケモンには意味がないと思っていた。だからバトルに負けた時は酷い事を散々言ったし、かといって勝った時にまともに褒めた事もなかった。
 それなのに、どうして。

 こいつらはオレの傍にいるのだろうか。

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・スレ翠と紅
・金銀スペHGSS三兄弟パロ
・ジョウトリオで花札なう
・マフィアっぽい現代FTパロ設定?
・下ネタ。金銀と紅翠前提。多分現パロだな
・金銀? 銀金? 月がきれいですね
・究極技覚えたところで石化解除には繋がらない
・シルバーのほっぺつまんで詰るゴーちゃんと特に抵抗もせず普通に口喧嘩をするシルバー

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・女遊びの激しいグリーン とレッドがクリス呼び出し
・金の修行を手伝う銀

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「で、あんたは?」
「オレはシルバー。お前の『所有者』だ」
「所有者?」
「言葉通りの意味だが、今のお前には関係あるまい」
「おれは、あんたのモノ?」
「そういう事だ。他の奴を連れて来るから、少し待ってろ」
「え、あ、…………や、だ」
「ゴールド?」
「なんでもねぇよさっさと行けこの馬鹿!」
「……一緒に行くか」

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初代金銀不良&兄弟設定スペゴシルな妄想についてつらつらと。
妄想の中身じゃない

金銀 金    銀
スペ ゴールド シルバー
HGSS ヒビキ  カナデ

まずパロにするなら名前どうするかを検討しておかないとな……特に初代。暫定的に漢字表記でいくけど。
オリキャラ色が濃くなるようなら独自名つけちゃうのもありだけど……えーっとフラ語とか? 金って何だろう。銀はアージェント(厳密にはtの発音はしない)のはず。定冠詞をつけるならラージェント。金はl'or だ、っけ……? ローだな。ロー兄とラル兄ってか。やっぱりヒビカナと音の響きが合わないね!
金は黄金、銀は白銀でもいいかなぁと思ってるけどどっちも地名な件。っていうか漢字表記CPにも見えるという罠。あとどっちにもガネの音がつくのがなぁ。
まぁ金と銀でいいか。いいかな。

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 さく、さく、さく。

 一面の銀世界の中、彼の背中だけがぽつんと色を残してる。

 さく、さく、さく。

 傘の意味はあまりない。ぱらぱらと雪が傘に叩き付けられる音と、わたしたちの足音だけが聞こえる。

「ねぇ、どこに行くの、シルバー」

 しん、と雪に吸い込まれてしまったわたしの声に彼が足を止める。
 ぱらぱらという音だけが聞こえる。
 枝に積もった雪が雪崩をうって落ちた。
 その影に、微かに彼の声。

「え?」

「……行くぞ」

 さく、さく、と彼が歩く音。
 ぱらぱらとわたしの傘で雪が踊る音。
 ざっ、ざっ、ざっ、と私が走る音。

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 泣いてるクリス
 困るゴールド
 慰めるシルバー

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誘われるままにベッドの上にその体を押し倒す。馬乗りになって見下ろすと、真っ白なシーツの中に赤銅色の髪を散らしたそいつが俺を見上げた。色素が少ないから辛うじて分かるくらいの頬の紅潮に、少しばかり涙で潤んだ瞳。やばい、と思った時にはごくりと生唾を飲み込んでいた。
その次の瞬間、そいつの顔がニヤリ、と歪められる。「降参か?」ああくそ。何で俺が野郎なんかに。「ああ、負けたよ。降参だ」「ならさっさとどけ」余裕たっぷりに睨んでくるこいつがムカついて仕方がない。俺に組み敷かれてるくせに。もういいか。元々誘ってきたのはこいつだし。

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 君が居るというただ其の事実に、最大限の賛辞と感謝を

 *

 あの人の所にいるのなら、ひとまず彼女の安全は保証されただろう。それなら。
「離してくれませんか?」
 助けようと伸ばされた手を自ら振り払った。

 *

「驚いた。どういう心境の変化なの?」
「僕に焦る理由が無くなったって事。それに君に手を貸した方が、僕もすっきりするだろうし」
「……本当に、何があったの?」
「大抵の召喚士はエスパータイプのポケモンを憑依させたりはしないんだよね。エスパータイプって憑依でかかる負荷が大きいし、そのくせ能力を使うと異様に疲れるし。だから、みんな気付かなかったんじゃないかな。召喚士の意識を乗っ取るあれ、本当は強力なエスパータイプのポケモンが無理矢理憑依してくるだけだ。多分、悪タイプのポケモンを憑依させている召喚士には通用しないはず。で、僕はRURUで慣れてるからちょっと事情を聞いた。君の友達なんでしょう?」
「……うん。まぁ、そうなんだけど」
「あの人のところにいるのなら、サファイアも安全だろうし。多分僕を追いかけてここにやってくるよ。だからその騒ぎの間に君は友達を解放してあげたらいい。初めっから、僕を逃走させてそうするつもりだったんでしょう?」
「……。どうして、さっき逃げなかったのさ」
「君を置いて行きたくないって、思ったから」
「馬っ鹿じゃないの?」
「そうかもね」
「……お人よし」
「それは違うと思うけど。君じゃなかったら、こんなめんどくさい事しないよ」
「おれを口説いてどうすんの、あんた」

 *

「ジュカイン。お前、またおれといてくれるの?」

 *

たぶん没

 枝に巻き付けたワイヤーに身を任せ、寸でのところで炎を回避する。
「……僕だけここで死ぬなんて、流石にカンベンなんだけど」
 炎を放ってきたのは、人間だ。つまり、炎タイプのポケモンを憑依できる召喚士であるということ。ZUZUを外に呼び出して消火を命じてルビーは枝から飛び降りた。間髪をいれずルビーが乗っていた枝が地面に落下する。
「あーもう、捕まえるなら丁寧にしてよね。操り人形が欲しいなら五体満足の方がいいんじゃないの? ……って、聞いてないし」
 さて、逃げるか、捕まりに行くか。

 *

 カタン、と軽い音がした。
「あ、起きた?」
 他人の声がする。でも、サファイアの声じゃあない。これは変声期をまだ迎えていない、自分ともそう歳の離れていない、子供の声だ。
 そこまで思ってルビーは自分の置かれている状況を思い出した。R団とおぼしき集団に襲撃され、そしてその真っ最中に自分は気絶したのだった。寝たふりをしたままゆっくりと体を動かして拘束の有無を確認する。足首に一つと、後ろ手に回された手首に一つ。微かに伸びる事からして、普通の縄だろう。
 初めの第一声から動く気配の無い人間は見張りだろうか。目をつむったまま、もう少しルビーは様子を探る。
 とても静かだった。近くにいるであろう人間の気配以外にはポケモンの気配も風の音もしない。再びカタン、と軽い音。それが微かに反響した事にルビーは気付いた。思えば、いつもに比べてあまりにも臭いがしない。
(つまりここは、屋内――)
「あんたさぁ、そろそろ寝てるフリやめたら?」
 確実に自分を指す言葉に、ルビーの思考が止まる。少しの逡巡の後、ルビーは静かに瞼を上げた。

 *

多分没

「ほら、口開けて」
「なんで『あーん』なんてしなきゃいけないの」
「そりゃあ、両手が塞がってるからじゃん」
「解けばいいよね?」
「そんな事したら俺が脱走補助で捕まっちゃう。食べる気はあるんでしょう?」
「まぁ、お腹空いたし」
「もしかしたら毒かもしれないのに?」
「でも毒じゃないでしょ。キミがそこまで演技力がある方だとは思えない」
「そこは認めるけど、でも俺ごと騙されてるのかも」
「それ自分で言う時点で否定してるも同然だよね。……僕に、何の用?」
「……リーダーに絶対気に入られると思うよ、あんた。俺達に協力しない?」
「嫌だ」
「やっぱり? あーあ、残念」
「もういいよ。お腹空いたから早く食べさせてくれる?」
「はいはい。あーん」

 *

「ラルド」
「ルビー、暑い。離れて」
「嫌だよ」
「……ってこらー! 変なとこ舐めるな!!」
「もうちょっと色気のある反応してよ」
「おれに何を求めてるのあんた」

 *

「仕事だよ」
「僕、協力するなんて言ってないんだけど」
「知ってる」
「な……に、これ。勝手に、動く……?」
「あんまり抵抗しないでくれる?。負担が増えるんだ」

 *

「嘘はあんまりついてないよ。滅んだ都市の生き残りだってのは本当。でもこいつの整備の仕方を知ってるのは、父さんの趣味だったからなんかじゃない。これがおれの――得物だったから」
「……召喚士なんだ」
「今もそうなのかはわかんないけどね。宿してもいなければ憑依もさせてないから。でも、R団ってそんなに悪い組織だとも思えないんだ」
「どうして? ポケモンを殺すような連中なのに」
「おれの家族も友達も知り合いも、皆ポケモンに殺されたのに? ポケモンが人間を殺す事は許されておれたちは許されないわけ?」
「……ごめん。そういうつもりじゃあ、無かった」
「まぁ、あんたの言いたい事もわかるけどね。ポケモンがいない世界が、それほどいいものだとはおれには思えない」
「じゃあどうして協力してるの?」
「友達を助けるため、だよ。だからあんたにも協力してほしいんだ」

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 気付いたら彼はいて。気付いたらおれは彼のモノになってて。それは当たり前の当然の事で、だから疑問に思った事はなかった。
 だけど、一人の人間が使い魔になるまでの過程を見てしまったおれは、気付いてしまった。
 使い魔になる前のおれは、本当はいたんじゃないだろうか?

「あいつが教えてくれないから、シルバーさんに聞いてるんです」
「なら、オレからは何も言えない。些細と言えば些細な事だが、ルビーにとっては重大な事なのだろう」



緑「レッド。お前ならなんとかできるんじゃないか?」
赤「うーん、できない事もないけど……いいのか?」
銀「……仕方がない、か」
藍「こうなると、ルビーは動けんったいもんね」
翠「どういう、こと?」
銀「ラルド。お前は厳密には、生きていない」
翠「……え?」
青「貴方は死んでいるの。ルビーはその死体の時を止め、魂を体に繋ぎ続けている……今も、ね」
翠「……つまり、ルビーが殆ど魔法を使えないのはおれに魔法を使いつづけているからで、その魔法は魂を操作する類……つまり、死神であるレッドさんの本業で、ルビーからおれの制御権を奪ってしまえば、おれに魔法をかけつづける必要の無くなったルビーは自由に魔法が使えて、帰ってこれる、と」
藍「その通りったい」
翠「わかりました。それじゃあ、おれはどうすればいいんですか?」
赤「別に何も。俺は死神だから、血も必要ない――けど、このくらいは必要かな」


「おれにも見えました。魂の色が。本当に、おれは死んでいるんですね」
「――生きていても死んでいても、俺達にはあまり違いはないんだ。だってここに、確かに存在しているからさ」
「でも不自然です」
「それを望む人がいるなら……それでいいんじゃないかな。俺は、そう思うよ」



紅「返してください、ラルドを」
赤「さっすが『女王』……思ってたよりも早いな」
藍「相手はどうしたと?」
紅「面倒だったから亜空間に空間ごと放り込んだよ。全く、ふざけた事をしてくれるよね。……ラルド」
翠「ル、ルビー?」
紅「おいで、消毒するよ」
赤「酷い言い種だなー」

金「なぁなぁ、『女王』って?」
銀「見ていれば分かるだろう。そのまんまだ」
金「女王みたいな性格……」
銀「それとそれに見合った実力、だな」
金「おまえも結構女王っぽいんじゃねーの?」
銀「じゃあお前は従者か?」
金「お、なんかかっけーじゃん」

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「ねえさん……触れても、いい?」
「もちろん」
 おずおずと伸ばされた手がブルーの頬に触れる。それからシルバーはブルーの頬を輪郭を確かめるように、ゆっくりと撫でていった。壊れ物を扱うかのような慎重さに、シルバーがらしくなく緊張しているのがわかる。それにつられて自分も緊張している事にブルーは気付いていた。
「なんだか照れるわね」
 らしくない自分を取り繕うための言葉は、口にすればもっと恥ずかしくなった。ブルーの頬が朱に染まる。少しずつ言葉の意味を理解したのか、少し遅れてじわじわとシルバーの頬も赤くなっていく。お互いに真っ赤になって向き合っている現状がおかしくてブルーが吹き出した。自分の発言一つでここまで反応があるシルバーが可愛くて仕方がない。たまらなくなってブルーがシルバーに抱きついた。
「なっ、ねえさん!?」
 一拍遅れて、シルバーが急接近してきたブルーから身を仰け反らせる。その首筋にブルーは顎を乗せた。
「嫌よ、『ねえさん』なんて」
 意図せずにこぼれた少し拗ねた響きに、シルバーが今度は慌ててブルーの顔を覗きこむ。ブルーはその銀色の瞳を見つめた。
「名前で呼んで、シルバー」
 シルバーの息が止まった。唾をごくりと飲み下し、それからも数瞬の間を置いて、ようやく意を決したシルバーが薄い唇を開く。
「ブルー」
 その響きは、存外に、優しかった。
 ただただ愛おしいのだと、シルバーのその想いが伝わってくる。本当に愛されているのだとようやくブルーは心で理解した。視界が滲む。
「ね、ねえ……ブルー? やっぱり、嫌だった?」
「違う。違うのシルバー」
 声までもが涙で濡れる。シルバーの肩口に顔をうずめてブルーが言う。嬉しいの。
「あなたに名前で呼んでもらえて、すごく嬉しいのよ、シルバー」
 真っ直ぐに銀色の瞳を見つめて告げる。ブルー、と思わず零したシルバーが顔を近づけてくるのに合わせて、ブルーは目を瞑った。

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「グリーングリーングリーン! 誕生日おめでとう!!」
「……レッド。離れてくれないか」
「だから御祝いに、おれの為に死んで? グリーンが死ねば、グリーンはおれのモノにできるからね」
「まだ死ぬ気はない。取り合えず、は、な、れ、ろ、レッド」
「ちぇー」

「グリーンさん……っ!」
「危ないな、イエロー」
「大嫌いです。貴方なんて」
「だったらレッドを何とかしてくれ……」
「それが出来ればボクはっ」
「俺はブルーのモノだから勝手には死ねない。それに俺が死んだら今度はレッドのモノらしいぞ? お前はそれでいいのか」

「おーっす、グリーンさんいたいた」
「ゴールドか」
「シルバーからのお届け物っすよ、ほら」
「造血剤か。毎度毎度、すまないな」
「そんじゃ、お楽しみくださいませ、っと。オレもシルに飲んでもらおうかなー」
「お前はいらないのか?」
「造血剤っすか? あいつはブルーさん程は飲みませんから」

「ブルー」
「グリーン。誕生日おめでと。皆に御祝いしてもらったの?」
「まともに祝われたのはシルバーくらいだな」
「さっすがあの子。分かってるじゃない」

グリーンさんのキャラが迷子過ぎる件について

 *

「ふーん。ねぇ、ゴールド」
「な、んだ……っ!? お前も、吸血鬼かよ……!」
「へぇ。馬鹿だけど抵抗はできるんだ」
「馬鹿は余計だ、っての……!!」
「呼ばないの? 彼」
「誰が呼ぶかよっ!」
「強情なところはそっくりだね。ほら、そんなに体を強張らせないで。吸血は初めてじゃないでしょう?」
「てめえなんざに、吸われて堪るか……!」
「いいねその顔。凄くそそる」
「こんの変態が! っておい? ルビー?」
「なるほどね……そういう手に出るんだ」
「は? あ、消えた。……何だったんだあいつ?」



「しししししし、シルバーさんっ!?」
「何だ、ラルド」
「と、とと突然、どうしたんですかおれの血なんて興味ないんじゃなかったんですか!?」
「気にするな。嫌がらせだ」
「ええっ!? おれ、ななな何かしましたか!?」
「満更でもないんだろう?」
「え、いや、ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」

「……やってくれますねシルバーさん」
「何の事だ?」
「いいです、もう。離れてくれませんか」
「ああ。……すまなかったな、ラルド」
「え、おれ、置いていかれる感じですかこれ」
「嫌なの、ラルド」
「だってお前目茶苦茶怒っt あ、シルバーさん行っちゃった」
「ラルド」
「はい」
「満更でもなかったんだ?」
「え、いや、それ、言ったのしるb」
「あの人の名前は出さないで」
「はいっ」
「で?」
「ううっ……。さっきのは、雰囲気に呑まれただけだって!」
「でも抵抗しなかったよね」
「『でも』じゃなくて『だから』! ……って、あれ? ルビー、魔法使った?」
「さっき転移を」
「いやさ、それ以外。うん、やっぱり……匂いが違う」
「それが何だって言うのさ」
「……ルビー、何か隠してるね。おれに言いたく無いこと……魔法…………ゴールドに何したのあんた」
「……きみの勘の良さには参るね」
「って事は……」
「何にやにやしてるのかな」
「なーんでもなーい」
「話終わってないんだけど」
「ふーん。じゃあおれが分かっちゃった事、洗いざらい話しちゃっていいの? ルビーが『もうイヤ』って言っても喋りつづけちゃうよ?」
「分かったよ。でもじゃあ僕に言うことあるんじゃないの?」
「あんたは何も言ってくれないのに?」
「それは……」



「あ、シルバー」
「体に違和感は?」
「やっぱ気付いてたんだな。何もねぇよ」
「そうか」
「やっぱお前じゃないと駄目なんだなー。あー落ち着く」
「姉さんの時はどうしたんだ?」
「それ直接聞く?」
「姉さんに聞いてほしいのか?」
「それは勘弁……」
「…………」
「で、喋れってことかよこの沈黙は! ブルーさんは体の緊張を解く魔法をかけてもらったんだよ。まぁ途中から効かなくなったけどよ」
「効かなくなった? 姉さんの魔法が?」
「ああ。最初のうちは気分もふわふわしててさ、血ぃ吸われてるときも気持ちいーくらいだったんだけど、キスした時にすげー違和感覚えたんだよな。んで我に返ったらもうダメだった。ブルーさんには悪い事したよなぁ。つーかシルバー、お前何かしてんの?」
「いや、呪いの類はかけていない」
「んじゃ愛の力か」
「体質的なものだと思うぞ」
「即答すんなよ」

 *

「……待てよ。お前、吸血された事ないのか?」
「あ。……うん。ルビーは結構際どい事をやってくるけど、まだ、一度も」
「まー気持ちわかるかもなぁ。お前って見た目は手ぇ出したらまずそうに見えるし」
「あんたよりは確実に年上だよ」
「知ってる。シルバーがオレを拾う前からルビーのモノなんだろ? でも見かけがなぁ」
「ゴールドはいつだったの?」
「初めて吸われた歳か? えーっと……14、だな」
「じゃあおれとそんなに変わらないじゃん」
「いや、まぁ、なぁ? そこは置いといてよ……んじゃ、ルビーに直接理由聞いてみたらどうだ?」

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「おう、シルバー。何してんだ?」
「あんたこそ何しているんだ」
「見りゃわかんだろー? タバコだよた・ば・こ! 生徒の教育上よろしくないってことで、あんまおおっぴらにゃあ吸えないんだよ」
「……おおっぴら以前に校内は禁煙だったはずですが」
「そう言いつつも止めてこないよなお前。……ははーん」
 ゴールドがにやり、と笑う。
「さてはお前、煙草吸った後の俺の匂い結構好きなんじゃねーの? 吸った後は結構寄ってくるもんなァ?」
「そ、んなことはない!」
 シルバーが耳まで赤くなる。ぷい、と背を向けて逃げ出そうとするところをゴールドが後ろから捕まえる。
「ったく、天の邪鬼だなお前は。本当は好きなくせに」
「…………」
 収まりが悪いとばかりにシルバーが体の向きを変えると、ゴールドの胸に顔をうずめた。
「おーい、シルバー?」
「……煙草は、嫌いだ」
 ぽつり、とシルバーが呟く。
「どうしてだよ?」
「…………いつまでたってもあんたに、追いつけないって思い知らされるから」

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 戻ってきたゴールドを見るなり、シルバーは珍しく驚いた顔をした。
「何もしてこなかったのか?」
「……なんで見た瞬間にそれがわかるんだよ」
「身体の接触は魔術的な繋がりを生む。お前の魔力はオレ由来のものだから、どのくらい姉さんの魔力と混ざっているのかは見ればわかる」
「そうかよ。で、なんでそんなに驚いてんだお前は!」
「姉さんは多飲体質だと言っただろう。多飲すなわち多淫。繁殖能力の低いオレ達は総じて性的な行為を楽しむ傾向にある。当然、貞操観念もお前たち人間より弱い。姉さんの事だからとりあえずお前を誘うだろうと思っていたんだが……」
「誘うなんて生易しいもんじゃないぞあれは! 俺は襲われた! めちゃくちゃ怖かったんだからな!」
 必死になって訴えるゴールドにシルバーがくつくつと笑う。ぽんぽん、とゴールドの頭を撫でる。
「それはよくやったな」

 *

 くらくらする。気持ち良い。そして、熱い。体中の熱が解放を求めて暴れ回っている。必要なのは、もっと強い、直接的な快感だ。
 足りない。もっと、もっと。
 体を相手の方に起こす。触れる場所を探して顔を寄せると、相手の笑いが深くなった。唇に噛み付く。舌を差し入れ咥内を蹂躙して、そして、気づいた。相手を突き飛ばす。だらし無く濡れた唇を腕で拭うが、口の中に残った嫌悪感は消えない。
「ちがう」
「あら、何が違うの?」
「あんた、シルバーじゃ、ない」
 ブルーがくすりと笑った。愚かな人間を嘲るように、耳朶を甘噛みしながら言葉を落とす。
「今更それが何だって言うの? あの子だって、あなたをここに送り出した時点で分かってるわ」
 ブルーがゴールドの局部を服越しに撫でる。
「強がらなくていいの。あなた、限界でしょう? 私はあなたよりも絶対的な強者。逆らえないのは当然だわ」
「……違う」
「何が?」
「あいつの事はどうだっていいんだ。俺が、だめなんだ」
 ごめん、ブルーさん。ぽつりと零したゴールドに、ブルーが気配を変える。
「好きな子じゃないと抱けない、と。あんた思ってたよりも真面目ねー、ゴールド」
「失礼な事言ってすみません」
「いつまで畏まってんのよ。あんたすみませんってガラじゃないでしょ。いっつも悪ぃ! くらいのノリなのに」
「だってブルーさんめちゃめちゃ怖かったじゃないっスか!」
「当たり前よ、怖がらせたんだから。ま、それでも我慢した辺り我が弟もいいカモ捕まえたんじゃない? 味は微妙だったけど」
「……あれだけ飲んで微妙っスか」
「うーん、まずくは無かったんだけどねぇ。極上! って感じじゃあ無かったわね。あんた若すぎるわ」
 言いながらブルーがゴールドの服を整えていく。
「よーし終わりっ! どうする? ゴールド。少し休んでから行く?」
「もうおいとまさせてもらっていいっスか……」
「分かったわ」
 ブルーがぱちん、と指を鳴らす。音もなく壁に現れた扉をゴールドはくぐっていった。

 *

「ゴールド。飲んでおけ」
 そう言ってシルバーがゴールドに差し出したのは、
「何だこれ?」
「増血剤だ」
「何で?」
「姉さんは一回の吸血量が多い。貧血になるぞ」

 *

「ゴールド」
 そう俺の名前を呼んで、シルバーは貪るように俺の唇に噛み付く。銀の瞳に透けて見える激情にも、息の仕方を忘れそうな激しいキスの意味にも、俺はちゃんと気付いてるよ。
「シルバー」
 だからキスの合間に一つだけ、俺の意識がはっきりしている間にどうしても伝えたい事があって。無理矢理に音にしたら随分と吐息混じりの、弱々しい声になった。
「俺も、あいしてる」
 今度は俺からキスをして、でもやっぱり咥内にシルバーは侵入してきて、舌を絡め取られてさっきよりももっと深いキスになって。今度は素直にシルバーに身を任せた。
 なぁ、まだまだ全然足りないよ。だからさぁ、シルバー。

 もっともっと、俺を愛して?

 *

「これでお前はオレ無しでは生きられない」
「みたいだな。でも、お前もだろ?」
「ああ」
「んじゃお互い様だなー。とりあえず、飽きるまで一緒にいよう。飽きたらグリーンさんみたいにちょっと出ていって、寂しくなったら帰ってくる」
「姉さん達は昔からああだぞ」
「知ってる」
「離れている間にオレが眷属を増やしていたら?」
「そうなる前には帰ってくるって!」

 *

「サファイア! 大丈夫だった? 何もされてない?」
「ルビーはいちいち大袈裟ったい。あれ、ラルドは?」
「あ。……置いてきちゃった」
「機嫌悪なっとっても知らんよ、あたし」

 *

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2011/8/18


思い出せ。ダイパはダイヤが壊れ気味で、にこにこ笑いながら銃ぶっ放す感じ。そんなダイヤの隣に立ち続けるまだまともなパール。まともでありつづけているパールの方が異端。

最愛のサファイアを殺されて復讐に走るルビー(サファまじごめん)。ラルドはルビーの最後の良心的な? まだ手を汚していない。

金銀はこっちの世界に慣れきってしまって感覚が麻痺している銀(どっちかというと感情が死にかけ)と、壊れたふりをして必死にまともであろうとする金。金が殺しの仕事の後に縋り付くのはいつも銀で、そんな金に感化されて徐々に感情の起伏が出てくる銀。

赤緑はぱっと見まとも。なんだけど、一番壊れちゃってる二人。無邪気に残酷なのが赤、誰よりも容赦が無いのが緑。ただし、身内には甘いけど。

「あれ。パール~、もう終わり?」「終わったよ、ダイヤ」だからもう帰ろう、そう言おうと口を開いた瞬間に響き渡る銃声。「終わってないよ。裏切り者には死んでもらわないと」「……じきに死ぬだろ」自分の罪悪感から逃れる為に作った逃げ道をダイヤが丁寧に壊していく。一方的な銃声は、止まない。

写真立てを見つめる横顔は普段とは違って優しい。あの人との思い出を辿っているルビーはいつもそうで、話しかけるのは躊躇ってしまう。復讐の気持ちがわからないわけではないけど、でも、やっぱり、ルビーには似合わない。「ルビー」「なに、エメラルド」「もう、やめようよ」

「いくら洗ったところで取れないぞ、血の臭いは」「うるせぇ、わかってるっ! でも気持ち悪ぃんだからしゃーねーだろっ!」「だから俺がすると言ったのに」「っ、大体なんでお前はケロっとしてるんだよ!」「姉さん以外の命はどうでもいいからだろうな」「……っ、このシスコンめ! 死ね!」「断る」

シルにはあんまり殺しをしてほしくなくて見栄張ったんだけど殺しは怖くて怖くてしかたがなくてそれを見透かされてるゴー……でいいの? 随分とマフィアっぽくない。赤緑は書けなさそうなので省略。

2011/8/27

「へぇー。やるじゃん、シル公」「……黙れ」「やーなこった。なぁお前、知ってた?」鼻血を手の甲で拭い取ってゴールドがにやり、と笑う。「俺ってやられたらやり返さずにはいられない、って事をよぉ!」

2011/09/05

「くっそ、マジでムカつく! あんな奴こっちから願い下げだっての!」「またシルバーと痴話喧嘩?」「もうあいつなんか恋人じゃねーっての!」「じゃあ何なの?」「へ? えーっと……ダチ公?」「……やっぱり痴話喧嘩よねぇ」

「あれ、ゴールドは?」「別れた」「……また?」「今度こそ、だ。もうあいつには愛想が尽きた」「そう言いつつゴールドと別れるの何回目よシルバー」「……丁度10回目だな」「もう心配なんてしないわよ私。仲裁だってしないんだから。勝手に仲直りしときなさいよ、全く……」

2011/09/15

「お前が俺になれないように」言いながらあいつが俺の頭に手を乗せる。「俺はお前になれない」お互いにどれほど焦がれようとも。でもそれでいいのだとあいつは笑う。「俺がお前になってしまったらきっと今度は俺に俺になりたくなる。そんなの不毛じゃねぇか」だからこのままでいいのだと。

「こーらシルバー、お前ちゃんと髪吹けよ(ごしごし」「む。あぁ、すまん」「お前髪切らねぇの?」「この間お前から髪を切るなと言われたばかりだと思うんだが」「そりゃお前の髪は好きだけどさー、でもお前がめんどくね?」「慣れてるから余りそうは思わないな」「そんなもん?」「そんなものだ」

2011/10/10

「うんだからあのねルビー」「なにラルド」「なんでそんなにオレにへばり付くわけ?」「ラルドって収まりいいんだよね。小s「誰が小さいって!?」「…まだ僕最後まで言ってないよね。人の話を聞かないエメラルド君にはこのまま僕に抱き着かれる刑を執行しまーす」「話聞かないのはアンタだろっ!?」

「痛い痛い痛い! 何すんだよ!」「あれ、マジックハンドはどこまでだっけ」「……何する気?」「うん、サファイアのスカートをめくれないかなと思って」「…………。ルビー、アンタ顔はいいんだからそういう残念な事口に出すのやめた方がいいよ」「じゃあラルドにするよ」「どういう意味だよっ!?」

金「おーシルー」銀「なんだ」金「ぎゅうってしやがれー」銀「はいはい」むぎゅっ 銀「これで満足か?」金「おう。なんか眠くなっ、て…きた……」銀「……そうか。おやすみ、ゴールド」金「ん……おやすみぃ、シル、バー……」

2011/10/13

「膝抱っこしても文句言わなくなったね、ラルド」「騒いだって絶対下ろしてくんないじゃん。もう慣れた」「ふぅん……慣れるんだ」(……あれ、いま凄い失言しちゃった?)「じゃあこれにも慣れてね」「※%*&¥$!? るるるるる、ルビー!?!?」「あはは、真っ赤になっちゃってかーわいい」

2011/10/19

「死ね」「お前がな」「何でお前なんだ」「こっちが聞きたい」「分かんねえんだよ」「俺もわからん」「ああもう死ね! お前なんか死んじまえ!」「ゴールド」「うるせえ馬鹿」「好きだ」「……もう知ってる」「お前は?」「っ、好きに決まってんだろこの馬鹿シルバー!!!」

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「いっそのこと、お前のものにしてくれたっていいんだぜ?」
 吸血の後、気だるげにしたゴールドは言う。
「俺はできる限りずっとあんたといたい。お前だって、俺達の寿命の差を考えると俺の血を吸えるのはほんの僅かな間だろ? ちんたら迷ってるとあっさり俺は逝っちまうからな?」
 腕を伸ばしてじゃれてきたゴールドの背中に腕を回した。生きている体温の温もりを感じる。今は、まだ。ゴールドは生きている。
「わかっている」
 先程牙を突き立てたばかりの噛み痕に舌を這わす。ゴールドが僅かに息を飲んだ。
 ゴールドの言う通りなのだ。確かに俺はゴールドを、オレに比べると遥かに寿命の短い人間を、側に置きたいと思っている。そしてその為の手段もある。
 でも。
 それはオレだけの望みだ。オレはゴールドが寿命を全うするまで側にいるだろう。それはオレにとってはほんの僅かな時間だが、ゴールドにとっては「生きている間ずっと」だ。ゴールドの望みは、何もしなくても達せられる。
 オレの都合でだけで、ゴールドの、人間の寿命を徒に伸ばす事は、本当にこいつにとっての幸せなのだろうか。人間として生きる事を捨てさせる事が、人間であるゴールドの幸せになりうるのだろうか。
「今日はずいぶんと甘えただな、シルバーちゃんよ。もうちょっと吸うか?」
「いや、これ以上もらうとお前の体調に障る」
「別にいいのに」
 気まぐれで助けた幼子は、気付けばもう見た目はオレと同じくらいの歳になった。そしてまた気付いた時には永久に失っているのだろう。それにオレは、耐えられるのだろうか。
「んじゃ代わりにキスしてやるよ」
 オレの眼前で金色の瞳が笑う。
 この時が永久に続けばいいと、そう願った。

 *

 村に来たのはそれなりに久しぶりになるのだろうか。前はゴールドをここに送った。今日はその逆だ。
――最近風邪がはやっててよ、なかなか抜け出せれねぇんだよ。
 この間ゴールドは確かにそう言っていた。そしてグリーンから聞いた流行病の話。おそらく、この村で広まってるのもその流行病だろう。致死率が高く、いくつもの集落を壊滅に追いやったと、聞いている。
 村は静かだった。通りに人の姿がほとんど無い。ゴールドに微かに移った自分の魔力の気配を追うと、ようやく彼の住居にたどり着いた。
 ノックを3回。出てきたのはやつれたゴールドの母親で、オレの顔を見るなり息を飲んだ。10年以上昔に自分の子供を連れて来た男の事を、まだ覚えていたらしい。
「あな、たは……」
「あいつを迎えに来ました。会わせてもらえませんか」
 穏便にすむならそれに越したことはない。そう思っての問い掛けだったが、母親はゆるゆると首を横に振った。強張った体で、絞り出すようにオレに懇願する。
「お願いします、あの子を連れていかないでください……!!」
「あれはもう死にかけている。死神の手に委ねるのも、オレが引き取るのも同じ事でしょう」
「ですが、あの子はまだっ……!!」
 縋り付いてくる手を引き離し、建物に侵入する。ゴールドの気配は、上だ。うなだれ、泣き崩れる母親を振り返る。
「……死んでしまっては、オレには何もできない」
 だからオレは、死なさぬ為に出来る事があるのならば全力でそれを行うだけだ。
 梯子のような階段を昇る。その先にようやく求めていた姿が見えた。荒い息が聞こえる。額に載せられた意味の無くなったタオルを外し、代わりに手を伸ばす。ゆっくりと瞼を上げたゴールドがオレを見た。
「来ると、思ってたぜぇ、シル、バー、ちゃん」
「それはいい勘だな」
「あんま、母さん、いじめんな、よ……。気ぃ、弱いんだ」
「それは無理な相談だな。オレはお前以外の人間なんてどうでもいい事くらい知っているだろう? お前をこの世に生み出してくれた事には、大いに感謝しているが」
 つーっと右手で顔の輪郭を撫でてゴールド顎の先まで指を滑らせる。ゴールドが心地良さそうに目を細めた。
 牙で、自分の唇を噛み切る。それから舌を唇に這わせて血が流れている事を確認した。これを飲めば、ゴールドの命の危機はひとまず去るだろう。しかし、それはゴールドが人間でなくなることとも、同じだ。本当に、それでいいのか。ゴールドに体を寄せたまま、思考の迷路に迷い込んでいたオレを噎せながらゴールドが笑う。
「シルバー、それ、えっろ……」
 けたけたと屈託なく笑うゴールドに感じたのは愛おしさだった。熱に浮かされた金色の瞳が、どんな魔法よりも強烈にオレを狂わせる。幸せかどうかなんてどうでもいい。ただオレは、こいつが欲しい。欲しくて欲しくて堪らない。そして手に入れる為の方法が、ある。何を躊躇う事があるだろうか。だってオレは、こんなにもこいつを、
「ゴールド」
 唇を重ねる。傷口を押し付けて、血混じりの唾液を交換しあって、それをゴールドが飲み下すまで。
 オレたちはずっと、口付けを交わしていた。

 *

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 ああいらいらする。
 この澄ました顔の仕事上のパートナーがムカついて仕方がない。目隠しをしたままベッドに腰掛け、誰もいない方に向かって声を飛ばす。

 誰に向かって喋ってんだ俺はこっちだ!

 苛立ちのままにそいつの目隠しを毟り取る。きーきー五月蝿い監視係が脳裏を掠めたがすぐに黙殺した。色素の薄い灰色の瞳が数瞬して俺にピントを合わせる。

「ホント、石みてぇな色だな」

 嗤ってやるとその瞳が俺を睨みつける。気分が良くなって口角を上げると、ふっつりと瞼を下ろしやがった。
 嗚呼ムカつく!
 肩を突き飛ばしてベッドの上に押し倒す。それでも頑なに閉ざされた瞳にいらついて瞼に噛み付こうとするが、見てもいないのにそれに気付いた奴は目を庇うように腕を伸ばしやがった。
 がり、とその細い腕に噛み付く。ぴくり、と奴の体が跳ねるが呻き声一つ漏らさない。口の中に血の味が広がっていく。ああ不味い。唾を吐き捨てる。

「何か言えよ!」

 さっきから一言も漏らさないこいつがムカついてムカついて仕方がない。衝動的に右手を振り上げると、それを見計らっていたのか奴は体を捻り踵で俺の背を強かに蹴り上げた。痛みに一瞬飛んだ意識が戻ると、俺の拘束を抜けたあいつが片足を振り下ろす! 反射的に取った受け身の体勢で衝撃に備えるが、遂に蹴りが俺に入る事は無かった。
 俺達を軟禁している自動ドアの駆動音。

「あなたたち、何してるの!」

 漸く監視係が部屋に着いたらしかった。

 *

 大抵の雑音は無視していると自然と静かになる。そうして得た静寂の中でないと、目の代わりに敏感になってしまった聴覚は休まらないのだ。目は閉じる事ができる。しかし耳を塞ぐことはできない。だからこそ、自室にいられるときは静かにしていたい。
 そういうわけで、オレは適当にゴールドに生返事をしていた。こいつはクリスと同じで、無視すればするほどうるさくなるタイプなのは既に身に染みている。
 それが、どうにも奴の気に障ったらしい。唐突に手を伸ばしてきたと思ったら、無理矢理オレの目隠しを外しにかかった。わけがわからない。
 久しぶりに外界に触れた瞼が思わず開く。突然の光に目を慣らしていると、目の前のゴールドの眦が僅かに緩んだ。まずい。
 ――他人を『見て』しまった。
 しかしゴールドには何も起こらない。そういう能力だと思い出す間もなく、ゴールドはオレの視界いっぱいに入ってきて嗤った。
「ホント、石みてぇな色だな」
 それがオレの欠陥を指しての言葉だということには嫌でも気付いた。反射的に睨めつけるとニィ、とゴールドが笑う。変態じみたことにこいつはオレに睨まれるのが嬉しいらしい。喜ばせるのも癪でさっさと目を閉じた。本当に、わけがわからない。
 ゴールドは、不安定だ。大人しくしていると思えば突然オレに当たり散らす。暴れだしたと思えば唐突に静かになる。自己顕示欲の強さは無関心への恐怖の裏返しだ。頭では分かっているが、だからと言って安心するまで構ってやるほどオレは物好きではない。不安を解消するために当たり散らされるのも迷惑だ。

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女装シルその2。

ドラッグストアの化粧品売場にて。
あまり迷わずに化粧品を籠に放り込むシルバーをサファイアが目撃。
「シ、シルバーさん!? どげんしてこんなとこに」
「サファイアか。見ての通り、買い物だ」
「……シルバーさんお化粧するん?」
「たまにはな」
「まるでルビーみたいやね。意外ー」
「そういうお前はルビーに何か言われたのか?」
「ち、違うったい。こないだ遊んだ時にお化粧して貰って、そん時にあいつが妙に嬉しそうやったから……お化粧した方がルビー喜ぶんか、なぁ……って」
「ルビーは幸せ者だな」
「うぅ……」
「……だがな、サファイア。お前にその色のリップクリームは合わないと思う」
「そ、そうったい?」
「色が濃すぎる。ルビーと一緒に来て選んで貰えばいいんじゃないか?」
「こげんなことルビーに言ったら笑われそうったい」
「そんなことはないだろう。好きな女が自分の為に着飾ろうとしてくれたら嬉しいもんだぞ」
「じゃあシルバーさんはゴールドさんがお化粧した方が好きなん?」
「……サファイア、あいつは男だ」
「あ、ほんとだ」

 *

女装シルバー。多分潜入捜査か何か。

「あ、シル……って女か。え、ちょ、おま、シルバー!?」
「声が大きい」
「ま、マジでシルバーじゃねーの……。お前、女だったのか?」
「そんなわけないだろう、女装だ女装」
「マジかよ……女にしか見えねーぞ……胸とかどうなってんのこれ?」
「パッドだからむやみに触るな。型が崩れる」
「まぁそうだよな……勿体ねぇ」
「どうせお前のことだから胸はあった方がいいと思って盛っておいたんだがどうだ? 案外貧乳の方が好みだったか?」
「おま、胸を盛るとかそんな夢の無い事言うなって! いやもう大歓迎!」
「それじゃあ、デートしてくれる?」
「あーうん、性別とかそんなのって些細な問題だったんだなーと今実感したわ。んじゃ行くかシル。因みに演技はすんの?」
「人目があるところではな。それ以外では面倒だから残念ながら無しだ」
「いや、ギャップ萌えで逆にいいかも……」
「単純だなお前」

 *

「げっ、見つかる!」
「……場慣れていないな、お前は。何の為の女装だと思ってる」
「!? シル、近い!」
「キスの一つも出来ないのかお前は」

「……シル、お前、エロすぎ…………。なぁマジで勃ってきたんだけど」
「知るか。その辺で抜いてこい」
「それさっきまでキスしてた相手に言う台詞か?」
「手伝ってやってもいいんだぞ? その方が速く済みそうだしな、お前」
「ひっ……怖すぎて萎えましたお姉様……」
「分かればいい。行くぞ、ゴールド」

 *

「てゆーかさ、シルバー。何でオレ指名だったの?」
「不満か?」
「いやいや全っ然! でも気になんじゃん、どう考えたってオレ足手まといだし」
「だからだ。足手まといの自覚があるのはいいが、いつまでもそのままでいられては困る」
「……なぁ、それだけ?」
「さぁな。教えてもらいたければ結果を出す事だ」

 *

 血に塗れた彼を助けてしまった瞬間から、こうなる事は分かっていたのだけれど。
「刺した時の感覚がさぁ……忘れられないんだよ。もう二度とやりたくねぇって思ってたのに、一度刺しちまったら前の時の事も一緒に思い出してきやがんの。別に嫌とも思わなかった、オレ。初めての時はあんなに吐いたのに、もう何とも思わねぇの。気持ち悪ぃ。オレはひとをころしたのに。なのに何とも思っちゃいねぇ」
 俺に背を向けて延々とゴールドは喋り続ける。それが遠回りな俺への非難に聞こえるのは、紛れもなく罪悪感があるからだろう。――俺は、ゴールドに人を殺させた。その結果こうなる事も、予想は付いていた。
「なぁシルバー」
「なん、だ」
 けれども、こちらを振り向いたゴールドの、その暗い瞳に射抜かれるだけで呼吸も止まりそうになるだなんて、思ってもみなかったんだ。絶望に染まったその昏い瞳を、よりにもよって美しいだなんて思ってしまうなんて。そしてゴールドが俺に縋り付くしかないという事実に、俺は悦びさえ感じていている。
「やっぱりオレは人殺しだな」
「ああ。俺もお前も殺人者だ」
「でもお前はオレを救ってくれた」
「矛盾することではないだろう」

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「シルバー、久しぶりじゃん。お前何処行ってたの?」
「こいつらを集めにな」
 そう言ってじゃらり、と音を立てて地面に撒いたのは……
「ジムバッジ?」
「あった方が収入が増えるんだろ?」
 まぁ、間違ってはいない。ジムバッジを集められるほどの強いトレーナーには相応の報酬が与えられるし、いい仕事も回ってくる。というか……
(俺がポケモン協会関係者なら絶対放っておかねえよ)
 シルバーが姿を見せなくなってから数日しかたっていない。それだけの短期間でジョウト・カントーのジムバッジを集めてしまったのだ。今までは公式戦の記録が無かったから見逃されていただけで、非公式戦だろうがワタルに勝つ実力を持つトレーナーだと知られればどうなることやら。
「これからよろしくな、シルバー」
「はぁ?」
「お前にゃあ大量の『仕事』が回ってくるだろうよ。多分俺と組まされるだろ」
「『仕事』って……貴様ら人外と一緒にするな!」
「ワタルに勝っちまう時点で人外認定されるよ、お前は……まぁ諦めろ、こんな短期間でバッジを集めただけでお前絶対に協会の目に止まるから」
「なんとかしろよ」
「俺もワタルも結構悩んでたんだぜ? お前をどうやってこっち側へ引きずりこむか、って。公式戦が一回も無いようなトレーナーじゃあ待遇も上げようがないし。お前から飛び込んでくれて嬉しいよ、俺は」
「オレは全然嬉しくねぇ!!」
「心配すんな、ぜってー逃がさねぇから」


 *


「くそっ! 全力を出してもオレは……お前に勝てないのかよ!!」
 その目の端に光るものが見えたから、俺は黙ってその横を通り過ぎる。泣き顔なんて誰にも見られたくないだろ、なぁシルバー。
 だけどお前は一つ勘違いをしている。俺はいつだって全力だった。強さこそが全てだなんて、そんなふざけた事言うような奴に負けるような真似は絶対にできなかった。
「お前が負けたのは……」
 足を止める。
 この言葉であいつに伝わるわけがないと、分かっているけれど。
「ただ単に、お前よりも俺の方が強かったからだ」
 お前は弱くなんかないよ、シルバー。

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